セッション名は、直訳とかみ砕きを混ぜると、「海底ケーブルやネット強靭化」でしょうか。
海底なんて単語ありませんが、セッションの趣旨を日本語タイトルにするとこんな感じです。
402AB室で、9:30~10:50の時間に開催されました。
スピーカー3名
以下の3名で進行されました。
- Charles Mok
- Kenny Huang
- National Information Infrastructure Promotion Association(NII)代表:Kuo-Wei Wu
「Charles Mok」のスライドとセッションの中身
台湾の致命的な通信ライフラインと強化、及び海底ケーブルの強靭化
Charles MokとKenny Huangの説明スライドです。
台湾と世界をつなぐ大事な海底ケーブルについて
要点は、下記の通りです。
- 台湾は海底ケーブルで、99%以上のトラフィックがある
- 15本以上の海底ケーブルで結ばれている。
- 半導体でアジアで重要なポジションにある
- それゆえ、特に半導体の中核のため、台湾のネットワークは維持しなければならない
スライドとスピーカー「Charles Mok」
海底ケーブルは簡単に損傷する
地政学と海底ケーブル
要点は、下記の通りです。
- 中国が何かすると、香港経由のハブが使えなくなる
- 台湾は、日本、香港、アメリカに主に繋がっている。
- 南中国海(南シナ海、南沙諸島[Spratly Islands])で、トラブルが起きる
- 前項は、中国政府が全てを握っている
- 南シナ海で、何かあると、台湾の通信、トラフィックが大幅に遅延する
との事です。
台湾有事の際に、台湾の通信が厳しくなるのは想定出来ますが、南シナ海で紛争が起こっても、大幅な遅延が起きてしまうそうです。
フィリピンと中国は、常時揉めているので、台湾に対してのプレゼンスではなくとも、紛争が起きないとしても、海底ケーブルを切断して、妨害工作と言うのは、あり得そうですね。
その対策として、
- 台湾、日本間は新しいケーブルを結ぶ
- 日本経由で、アメリカに繋ぐ
との事です。
リスク対策として、スターリンクが正解か?
イーロンマスクが提供しているスターリンクが正解なのか?
結論:台湾にとって正解ではない
要点は、下記の通りです。
- スターリンクは、台湾には提供しない
- イーロン・マスクは、中国政府に頓着している
- イーロン・マスクは、Twitter、Xの時の様に、何考えているか分からない
- そんな訳の分からない人のシステムは、危なすぎて使えない
実際に、ロイター通信による記事にも同種の内容が、日本語記事で公開されています。
引用:ロイター通信コラム:米スターリンクに台湾が「慎重」、アジア展開に足かせも
台湾は、政府が支援する形で人工衛星を利用した通信網整備に向けて準備を進めており、投資家を募っている。中国による侵攻を念頭に、ウクライナがロシアとの戦争でイーロン・マスク氏率いる米スペースXの衛星通信サービス「スターリンク」を有効に活用した事例に倣おうという考えだ。
通常なら防衛問題で米国の技術を頼りにしている台湾だが、スターリンクはうかつに使えないと慎重に構えている。マスク氏が最高経営責任者(CEO)を務める米電気自動車(EV)大手テスラにとって中国本土は大事な市場である点を踏まえれば、そうした懸念にも十分な理がある。何しろ中国市場は、テスラの売上高のおよそ25%を稼ぎ出しているのだから。
こうした衛星通信網構築は、戦車などの高額な正面装備ばかり重点的に振り向けてきた台湾の防衛予算をより効果的に運用しようとしている蔡英文総統の取り組みの一環だ。その目的はウクライナがロシアに対して示したような、インターネット環境の維持による「抗堪力」の確保を進めるほかに、商業利用も含まれており、有力な事業となる可能性を秘めている。
日本、韓国、ベトナムもマスク氏と中国について同じような懸念を抱いており、より幅広いアジアの通信システムに発展する余地があるかもしれない。そうなるとスターリンクは東アジアでほとんど地歩を得られなくなってもおかしくない。中国が決してスターリンクの国内利用を認めないとみられるためだ。
より強固なネットワーク通信のために、台湾はどうするべきか?
台湾の上空と衛星通信
要点は、下記の通りです。
- 台湾地震の経験則から、宇宙衛星ネットワークが欲しい
- アメリカ、日本の提供の通信衛星が良い(サテライトオプション)
- ただし、高額の費用と時間がかかるだろう
何かできる手段は?
-
海底ケーブルは、ニッチな工業である。
そのため、海底ケーブルを敷設出来る企業は、アメリカの会社、日本の会社、フランスの会社、中国の会社が主要なプレーヤー。 -
国内、ドメスティックで海底ケーブルの会社が必要。
理由は、損傷されたら、海底ケーブルを自分で直して使うため。
リペアセンターは、フィリピンあたりが候補。 -
近隣諸国で、戦略的パートナーを結ぶ。
-
台湾国内基準で、政府がポリシーレベルを設定し、強靭化する。
打破されると、AWS、マイクロソフト、メタ等にアクセス出来なくなる。
そして、何も出来なくなる。 -
通信強化のための専門家、コンサルタントに相談する。
-
サイバーセキュリティのために、台湾の国内企業でケーブル敷設会社を設立する。
香港、シンガポール、日本を拠点に接続する。 -
サイバーセキュリティについて、より深く分析する
-
グレーゾーンへの攻撃について、戦略を立てて、定式化する
質問などがあれば、TWNICまで
質問などがあれば、TWNIC(Taiwan Network Infomation Center)まで
「Kenny Huang」のスライドとセッションの中身
スピーカーが、Charles Mokから、Kenny Huangに交代
セキュリティと強靭化「Dr.Kenny Huang、黄勝雄博士」
地球温暖化とネット通信の地政学
要点は、下記の通りです。
- 100年前に、ロシアに海底ケーブルをやられた事がある
- 地球温暖化により、北極の氷が溶けたため、海底ケーブルを敷設出来るようになった
- アジア、及び台湾から、欧州まで直接海底ケーブルで繋げられる
- 欧州との通信で、アメリカ大陸を横断する必要がない
海底ケーブルと地上ケーブルの図解
リスク分散
セキュリティが担保できる。
3つの解決策(ポリシートリレンマ)
強靭化、信頼性、管理コントロールの関係図。
アジア太平洋地域のサイバートラブルのシナリオ
海底ケーブル、DNS(ICANN)、データセンター、BGPルーターがある。
BPPルーターは、NICで管理されているIPアドレスの組織番号的なAS番号に沿って、経路を制御するもので、そのためのルーターです。
サプライチェーンの強靭化の図
BGPルーターは、一番重要で、手元に置きたいが、すごく高い。
光ケーブルの強靭化
海底ケーブル、地上ケーブルである光ケーブル接続は、台湾は少ない。
ウクライナの戦争の様に、台湾のインターネットは壊れやすい
中国が台湾に侵攻する時、海底ケーブルを切断して、世界から孤立化させる。
この攻撃は、とても費用対効果が高く、確実に実行されるだろう。
台湾の海底ケーブルのチェックポイント
台湾の海底ケーブルのチェックポイント、基地局の拠点は、3エリア、4か所のみしかない。
北部に2エリア、3か所、南部の1か所のみ。
これらは、全て、簡単に破壊可能で、国際ネットワークから意図も容易に切り離す事が出来る。
中国が、馬祖島への接続切断を試みる
中華人民共和国が、台湾、中華民国の領土である馬祖島(Matsu Islands)への攻撃を試みています。
台湾より、遥かに中国大陸に近く、実験としては非常に地の利が良い様です。
海底ケーブルの主要なプレーヤー
先ほどの主要なプレーヤーに日本が入っていましたが、このスライドには入っていません。
DNS解決率と光ケーブルの関係図
台湾で、海底ケーブルを失うと、全体のトラフィックの69%が通信出来なくなる。
海底ケーブル切断すると、簡単にシステムを落とす事が出来る。
.twは、台湾国内でレジストリの最上位ネームサーバーがあるので、DNS解決が出来る。
.comや台湾の中華電信のプロバイダーで有名な「hinet.net」は、汎用ドメインである(gTLD:ジェネリックトップレベルドメイン)であるため、キャッシュが切れると、経路選択出来なくなる。
.twドメインで、DNSが向いているサーバーは、台湾国内が31%、台湾国外が69%になっている。
ネームサーバー、DNS解決も重要でありはするものの、台湾国外に通信先のデータがあるため、69%と言う大きな通信が全てダウンしてしまう。
TLD毎のNSレコードのシェア一覧。
- .tw:31%
- .hinet.net:10%
- .com:40%
- .net:12%
- .org:3%
- その他TLD:4%
ccTLDのセキュリティと強化~ウクライナ侵略戦争の場合~
要点は、下記の通りです。
- ロシアがウクライナに侵攻した
- ウクライナのccTLD(国別コードドメイン:ua)のネームサーバーやレジストリシステムを移転した
- 移転先は、オーストリアのウィーンや欧州の他2拠点、米国西海岸
潜在的脅威を減らすための戦略
台湾において、脅威を減らすための戦略です。
- バイパスで上空を経由させる
- 3次元のインフラの構築
- 修復までの時間を短縮するための準備
LEOインターネット
LEOインターネットの図解です。
IANAルートサーバーから、DNS正引きしたり、データセンターへのアクセスが書かれています。
NTTのAS番号の記載があり、台湾はNTTのデータセンターを使っている様ですね。
LEO制約への挑戦
要点は、下記の通りです。
- 国内企業による対応
- 通信キャリアは、割り当てられた州者数を使う
- 通信ネットワークとして、通信衛星を確立する
海底ケーブルの申請手順
図解の通りです。
海底ケーブル申請のタイムライン
各種申請、稟議、工事、陸揚げ後の動作試験などに、多くの歳月が必要との事です。
スピーカー3名の対談1
スピーカー3名の対談2
スピーカー3名の対談3
おまけ、カメラのカード書き込み失敗写真
広報用に用いたCanon R6は、SDカードがデュアルスロットだが、2枚のSDカード共に、本スライドの写真の様にデータが欠損していました。
本記事とは、関係ありませんが、おまけ情報です。
更新履歴
第1稿投稿 2024年8月29日 21時00分(部分的草稿記事コンテンツアップ)
第2稿更新 2024年9月5日 20時00分(写真26枚とその部分の記事コンテンツアップ)
第3稿更新 2024年9月8日 15時20分(写真10枚とその部分の記事コンテンツアップ、記事完成)