3行まとめ
- 2019年9月10〜11日、ベルリンの連邦経済エネルギー省(BMWi)でユースIGFドイツ(Jugend-IGF Deutschland)2019が開かれました。30歳未満の約30人が集まり、ドイツ情報学会(GI)運営の現行形式ではこれが初回です。
- 専門家との対話とグループ交渉を経て「より良いインターネットのための9つのポジション」(排出中立なネット、データリテラシー、公共部門のフリーソフトウェアなど)を採択し、翌日のIGF-D 2019本会合の壇上で発表しました。
- 2カ月後に国連IGFが初めてドイツ(ベルリン)に来るのを前に、若者の声を国内から国連の議論へつなぐ回路を整えた大会です。若者参画を制度に組み込む設計は日本のユース施策にも示唆があります。
こんにちは、中澤です。この記事は ユースIGFドイツ 2019(Jugend-IGF Deutschland 2019) を、公式発表・議事録・現地報道にあたって整理した詳報です。忙しい方は上の3行まとめと図解だけでも骨子がつかめます。
大会の基本情報(公式発表より)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | ユースIGFドイツ 2019(Jugend-IGF Deutschland 2019) |
| 会期 | 2019-09-10 〜 2019-09-11(10日: ワークショップ本体 9:00〜17:00+夕方はHIIG〔フンボルト・インターネット社会研究所〕のイベント見学 / 11日: IGF-D 2019に参加し成果を発表) |
| 会場 | 連邦経済エネルギー省(BMWi)、ベルリン |
| テーマ | 地域の共通課題 |
| 参加者 | 30(ネット政策に関心を持つ30歳未満の若者約30人(応募資格はドイツ在住の18〜30歳。旅費支給)) |
| 主催 | ドイツ情報学会(GI)が運営するプロジェクト。連邦経済エネルギー省(BMWi)・フォーダフォン財団ドイツ・Google・フラウンホーファーICT連合・IGF-Dが支援 |
| 成果文書 | 「より良いインターネットのための9つのポジション」を採択し、翌日のIGF-D 2019と、11月にベルリンで開かれる国連IGF・グローバルユースIGF(11月24日)へ提出 |
(出典: 文末の出典一覧を参照)
ディスカッション・ダイジェスト(議事録より)
現地の議事録・セッション記録から、議論の核心部分を抜粋・翻訳してお届けします。
1. 9つのポジション — 「インターネットを大企業に委ねるな」
取り上げたセッション: グループ討議と交渉(9月10日終日)。成果はGIのプレスリリース(9月11日)「netzpolitischer Nachwuchsのポジション」として公表
「若者代表たちは重点テーマを共同で交渉してまとめ上げました。教育、持続可能性、基本権、公共財をめぐる9つの具体的なポジションが生まれたのです。(中略)IGFに若者が出席することは最初の一歩にすぎません。ネット政策の交渉への継続的な参画が必要です」
— エリーザベト・シャウアーマン(GI・ユースIGFプロジェクトコーディネーター)※独語原文からの翻訳 [2][1]
- 参加者はまず「デジタル化の生態的・社会的持続可能性」「ネット上の人権と非差別」「デジタル教育とデータリテラシー」「公正な討論文化と情報の完全性」「開かれた行政・オープンソフトウェア・オープンデータ」の5領域を選び、そこから9つの要求を練り上げました [2][1]
- 内容は、気候危機を踏まえた「排出中立なインターネット」、学校でのデジタル教育とデータリテラシー、強制された同意の禁止、偽情報への政府の取り組み強化、非差別の標準化、「公金から生まれたものは公共財に」(公共部門はフリーソフトウェアとオープンデータを使うべき)など具体的です [2][1]
- プラットフォーム上の自由と基本権について「解釈の主導権を大企業に委ねてはならない」と明記し、プレスリリースの表題も「インターネットを大企業に委ねるな」でした [2][1]
2. 専門家との対話 — インターネットガバナンス入門と偽情報
取り上げたセッション: 2つの対話セッション(9月10日午前。ユリア・ポーレ氏〔WZB〕、クリスティアン・シュテッカー氏〔HAWハンブルク〕)
「インターネットは若者が決定的に形づくる領域であり、若者はネット利用者の中で相対的に最大の人口集団です。それにもかかわらず、若者の声は多くのレベルで聞かれていません。だからこそ中澤は、若者の実効的な参加と可視性を目指すユースIGFのようなプロジェクトを支援しています」
— ヨハンナ・ベルシュ=ズーパン(フォーダフォン財団ドイツ 戦略・プログラム部長)※独語原文からの翻訳 [1]
- ベルリン社会科学研究センター(WZB)のユリア・ポーレ氏が、インターネットガバナンスの位置づけを参加者と議論しました。ポーレ氏はデジタル化の政治の研究者で、翌日開催されるIGF-D本体の運営委員でもあります [1]
- ハンブルク応用科学大学(HAW)のクリスティアン・シュテッカー氏(SPIEGEL ONLINEコラムニスト)は、ネット上の意見形成・偽情報・メディアの重要度の見極めを取り上げ、時代に合ったメディア教育の欠如をめぐって活発な討論になりました [1]
3. IGF-D 2019への合流 — 大臣挨拶の直後にメインステージへ
取り上げたセッション: IGF-D 2019(9月11日・BMWi)での発表・ポスター展示
- 参加者は2日目、9つのポジションを携えてIGF-D 2019の全セッション・ワークショップで発言し、ポスター展示でも来場者と対話しました [1][2]
- アルトマイヤー連邦経済エネルギー大臣の登壇直後には、プロジェクトを統括するGIのエリーザベト・シャウアーマン氏がメインステージに招かれ、若者の要求と目標を紹介しました [1][2]
- 成果は2カ月後の国連IGFベルリン大会に先立つグローバルユースIGF(11月24日)へ直接引き継がれました。国連IGFがドイツで開かれるのは2019年が初めてで、ユース参画強化はその準備の柱でした [1][2]
4. 系列の歴史 — 「初開催」ではなく現行形式の初回
取り上げたセッション: (背景情報)
- ユースIGFドイツ自体は2019年が初開催ではありません。国連IGFのユースイニシアティブ登録簿は「2013年設立」と記録し、GIのプレスリリースは「2012年から30歳未満の若者にネット政策の要求を交渉する場を提供してきた」と述べています。2013年6月1日にはベルリンのテレフォニカで「第2回ユースIGF」が開かれた記録が残っています [4][5][3]
- 2019年の新しさは形式です。GIがプロジェクト運営を担い、BMWiを会場に、経済省・財団・企業の支援を受けるワークショップ形式はこの年に始まり、専用サイトyigf.deも2019年に開設されました [4][5][3]
3分ショートトーク — よくある疑問に答えます
Q. 普通のIGF-Dと何が違うの?
A. 参加者と役割です。本会合(9月11日)は各界の実務者の議論の場ですが、その前日に30歳未満の約30人だけで集まり、専門家と対話しながら自分たちの要求を「9つのポジション」にまとめ、翌日それを本会合の壇上で発表しました。独立の大会ではなく、IGF-Dに組み込まれた若者参画の仕組みです。
Q. 「初開催」と聞いたけど?
A. 正確には現行形式の初回です。系列自体は国連登録上2013年(GIの発表では2012年から)始まっており、2019年はドイツ情報学会(GI)運営・経済省会場という今の形が始まった年です。
Q. 日本に関係ある?
A. あります。前日に若者だけで要求をまとめ、翌日の本会合で大臣級の直後に発表するという設計は、若者の声を「聞きっぱなし」にしない制度の作り方として、日本のユースIGFや審議会の若者参画にそのまま応用できます。
Youth IGF Germany ってどんな会議?(はじめての方へ)
Youth IGF Germanyは、地域・国レベルでインターネットガバナンスを議論するIGFイニシアティブのひとつです。
日本の私たちへの影響
この大会の議論は、数年内に日本のデジタル政策・プラットフォームのルール・AI規制に反映 されていきます。2019年大会で確認された方針は、あなたが毎日使うスマホ・SNS・AIサービスの「次のルール」の土台です。
出典・参考資料
- Das war das Jugend IGF Deutschland 2019 — Gesellschaft für Informatik e.V.(ドイツ情報学会・公式開催報告)(参照: 2026-07-22)
- Positionen des netzpolitischen Nachwuchses: „Internet nicht den Konzernen überlassen“(9つのポジション全文+プレスリリース) — Gesellschaft für Informatik e.V.(参照: 2026-07-22)
- Jugend Internet Governance Forum Deutschland(2019年大会の公式案内・プログラム) — yigf.de(GI)※Waybackアーカイブ(参照: 2026-07-22)
- Youth Initiatives(German Youth IGF: established in 2013) — 国連IGF事務局 (UN IGF Secretariat)(参照: 2026-07-22)
- Jugend IGF(第2回ユースIGF: 2013年6月1日・ベルリン、テレフォニカ) — IGF-Deutschland(旧公式サイト)※Waybackアーカイブ(参照: 2026-07-22)
※ 記事中の [数字] は出典番号を示します。
関連リンク
- IGF公式(リージョナル/ナショナル一覧): https://www.intgovforum.org/en/content/national-and-regional-igf-initiatives
- 日本IGF: https://japanigf.jp/
- 参考:中澤祐樹ブログ https://nkzw.jp/category/igf/
更新履歴
第1稿投稿 2026年7月20日 17時58分(記事コンテンツアップ)
— 中澤祐樹

