3行まとめ
- 2022年11月24〜25日、ロシア全面侵攻から9か月、第13回ウクライナIGF(IGF-UA 2022)が全編ビデオ会議で開催された。テーマ設定はまさに「武力侵略下のインターネットガバナンス」。前日にはユース版も開かれた。
- 筆頭セクションは「戦時下のサイバーセキュリティ」。ウクライナを「デジタルハブ」とする国家構想、インターネットの分断への対抗、I*組織との対話、EU統合義務、分散型インターネットまで8セクションを2日間で走らせた。
- ミサイル攻撃と停電が続く中でも国別IGFを中断しなかったことそのものが、この年の最大のメッセージである。2010年から続く連続開催記録は戦時下でも途切れなかった。
こんにちは、中澤です。この記事は IGF-UA 2022(ウクライナIGF・第13回) を、公式発表・議事録・現地報道にあたって整理した詳報です。忙しい方は上の3行まとめと図解だけでも骨子がつかめます。
大会の基本情報(公式発表より)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | IGF-UA 2022(ウクライナIGF・第13回) |
| 回次 | 第13回(ロシア全面侵攻の年) |
| 会期 | 2022-11-24 〜 2022-11-25 |
| 会場 | オンライン(ビデオ会議)。主催地はキーウ |
| テーマ | 地域の共通課題 |
| 主催 | インターネット協会(InAU)、USPP科学IT委員会、RIPE NCC、Internews-Ukraine、Hostmaster社(後援: 最高会議デジタル変革委員会) |
(出典: 文末の出典一覧を参照)
ディスカッション・ダイジェスト(議事録より)
現地の議事録・セッション記録から、議論の核心部分を抜粋・翻訳してお届けします。
1. 戦時下のサイバーセキュリティ — 筆頭議題になった防衛
取り上げたセッション: セクション1「Кібербезпека в умовах війни(戦時下のサイバーセキュリティ)」(11月24日10:00、モデレーター: I. Pietukhov、USPP)
- 全面侵攻後初のIGF-UAは、戦時下のサイバーセキュリティを筆頭セクションに置いた。国会デジタル変革委員会も後援し、フォーラム全体の焦点を「武力侵略下のインターネットガバナンス」に定めた [2][3][5]
- 開催告知の段階から「オンライン形式・晩秋開催」と明示され、戒厳令・空襲警報下でも参加可能な形式が選ばれた [2][3][5]
2. 「デジタルハブ」としてのウクライナ — 戦時下の国家デジタル戦略
取り上げたセッション: セクション2「Україна – цифровий хаб(ウクライナ=デジタルハブ)」(11月24日12:00、モデレーター: Yu. Matsyk、デジタル変革省)
- インフラが攻撃を受ける最中に、ウクライナを地域の「デジタルハブ」として位置づける将来構想をデジタル変革省の司会で討議した [2][1]
- 戦時の破壊と並行してデジタル発展の議題を維持したことは、復興を見据えた政策対話が侵攻初年から始まっていたことを示す [2][1]
3. インターネットの分断への対抗 — 「デフラグメンテーション」という主題
取り上げたセッション: セクション4「Дефрагментація Інтернету(インターネットのデフラグメンテーション)」(11月24日16:00、モデレーター: S. Tkachenko、Hostmaster)/セクション3「グローバルプロセスの中のウクライナ・ネットコミュニティ形成」(14:00、モデレーター: O. Semenyaka、RIPE NCC)
- 侵攻を機に世界で懸念が強まったインターネットの分断(フラグメンテーション)を、あえて「デフラグメンテーション=分断の解消」と題して.uaレジストリ管理者の司会で討議した [2]
- 併走するセクションでは、グローバルなインターネットガバナンス・プロセスの中でウクライナのネットコミュニティをどう形成・接続するかをRIPE NCCの司会で扱った [2]
4. I*組織との対話・EU統合・デジタル権 — 2日目の国際戦線
取り上げたセッション: セクション5〜8(11月25日、モデレーター: O. Prykhodko/Yu. Kargapolov/V. Moroz)
- 2日目はI*組織(ICANN・RIPE NCC・ISOC等の技術系国際組織)とウクライナの対話、EU単一デジタル市場統合へ向けたウクライナの義務、ISOC行動計画2022-2023への参加を連続で討議した [2][4]
- 締めくくりのセクションは「利用者のデジタル権と分散型インターネットの展望」。テックジャイアント支配下での分散型サービスの可能性という、戦争と直結しない普遍テーマも維持された [2][4]
3分ショートトーク — よくある疑問に答えます
Q. 戦争中なのに、どうやって開催したの?
A. 全編ビデオ会議です。空襲警報や停電のリスクがある中、物理会場を置かずオンラインに徹しました。11月23日にユース版、24〜25日に本会合という3日構成です。
Q. 何が一番のトピックだった?
A. 筆頭セクションの「戦時下のサイバーセキュリティ」です。同時に「ウクライナをデジタルハブに」という将来構想も議論され、防衛と復興構想が同居する異例のプログラムでした。
Q. 日本に関係ある?
A. あります。武力侵攻を受けた国でもインターネットガバナンスの対話を止めない、という前例です。通信インフラの有事継続性は、災害大国の日本にとっても他人事ではありません。
Ukraine IGF ってどんな会議?(はじめての方へ)
Ukraine IGFは、地域・国レベルでインターネットガバナンスを議論するIGFイニシアティブのひとつです。
日本の私たちへの影響
この大会の議論は、数年内に日本のデジタル政策・プラットフォームのルール・AI規制に反映 されていきます。2022年大会で確認された方針は、あなたが毎日使うスマホ・SNS・AIサービスの「次のルール」の土台です。
出典・参考資料
- IGF-UA 2022 公式アーカイブサイト(13-й Український форум з управління Інтернетом IGF-UA 2022、ヘッダ表記「Жовтень-листопад 2022」) — IGF-UA組織委員会(参照: 2026-07-17)
- IGF-UA 2022 プログラム(8セクションの時間割・モデレーター) — IGF-UA組織委員会(参照: 2026-07-17)
- Комітет з питань цифрової трансформації інформує, що 24-25 листопада проходитиме Український форум з управління Інтернетом(デジタル変革委員会告知: 11/24-25・ビデオ会議形式) — ウクライナ最高会議(Verkhovna Rada)(参照: 2026-07-17)
- 13-й Український форум з управління Інтернетом(11/23 Youth・11/24-25本会合の放送記録、「Всі заходи IGF-UA відбудуться онлайн」) — I-UA.tv(メディアパートナー)(参照: 2026-07-17)
- 13-й Український форум з управління Інтернетом IGF-UA планується на кінець осені в онлайн-форматі(開催予告: 晩秋・オンライン形式) — インターネット協会(InAU)(参照: 2026-07-17)
※ 記事中の [数字] は出典番号を示します。
関連リンク
- IGF公式(リージョナル/ナショナル一覧): https://www.intgovforum.org/en/content/national-and-regional-igf-initiatives
- 日本IGF: https://japanigf.jp/
- 参考:中澤祐樹ブログ https://nkzw.jp/category/igf/
更新履歴
第1稿投稿 2026年7月15日 9時11分(記事コンテンツアップ)
— 中澤祐樹

