TTIGF 2025(第9回トリニダード・トバゴ・インターネットガバナンスフォーラム) 詳報 — 議事録ダイジェストと3行まとめ

Trinidad IGF 2025 ポートオブスペイン — サムネイル

3行まとめ

Trinidad IGF 2025 ポートオブスペイン — 3行まとめ

  1. 2025年1月30〜31日、第9回TTIGFが「中澤のマルチステークホルダーなデジタルの未来を築く」をテーマにハイブリッド開催されました。ISOCのサリー・ウェントワース新CEOが基調に立っています。
  2. 教育AI、サイバーセキュリティ、金融包摂、防災AI、若者フォーラム(サイバーいじめ)に加え、カリブ電気通信連合(CTU)主催のカリブccTLD強化セッションを併設。地域のドメイン管理者が一堂に会しました。
  3. 国連のグローバル・デジタル・コンパクトとWSIS+20を、ISOCトップが小国の国内IGFで直接論じた回です。国内フォーラムが世界のガバナンス改革論とつながる実例として、日本の読者にも示唆があります。

こんにちは、中澤です。この記事は TTIGF 2025(第9回トリニダード・トバゴ・インターネットガバナンスフォーラム) を、公式発表・議事録・現地報道にあたって整理した詳報です。忙しい方は上の3行まとめと図解だけでも骨子がつかめます。

大会の基本情報(公式発表より)

Trinidad IGF 2025 ポートオブスペイン — 大会 基本情報

項目 内容
正式名称 TTIGF 2025(第9回トリニダード・トバゴ・インターネットガバナンスフォーラム)
会期 2025-01-30 〜 2025-01-31
会場 ハイブリッド開催(ポートオブスペイン拠点)(公式報告書は「2日間のハイブリッド開催」とのみ記載し物理会場名の記載なし。カタログの「Port of Spain」は主催地・GRULAC記録に基づく表記)
テーマ 地域の共通課題
主催 トリニダード・トバゴ多部門諮問グループ(TTMAG、議長: ジャクリーン・モリス)
成果文書 テーマ「Building Our Multistakeholder Digital Future」(IGF 2024リヤド大会テーマに着想)。第9回年次大会。公式会合報告書(30ページ)を2026年2月に公開

(出典: 文末の出典一覧を参照)

ディスカッション・ダイジェスト(議事録より)

Trinidad IGF 2025 ポートオブスペイン — 議論の見取り図

現地の議事録・セッション記録から、議論の核心部分を抜粋・翻訳してお届けします。

1. GDCとWSIS+20への直言 — ウェントワースISOC新CEOの基調

取り上げたセッション: 基調講演(1月30日、サリー・ウェントワース/ISOC・ISOC財団CEO。コリー・ベルフォン デジタル変革省次官らと共に)

  • ウェントワースは、国連グローバル・デジタル・コンパクト(GDC)がIGFを「主要なマルチステークホルダー・プラットフォーム」と認めた一方、「GDC自体は真にマルチステークホルダーな方法で作られなかったため、ISOCは全面的には支持できない」と率直に述べ、それでも目標実現には協力すると表明しました [3][1]
  • 2025年がWSIS+20見直しの年であることを踏まえ、「未来を形づくるにはローカルな行動が不可欠」として国別・地域IGF支援の意義を強調しました [3][1]
  • LACNICのAI法務政策コンサルタント、ジャベド・サジャドは「世界にはなお26億人のオフライン人口がおり、その大多数は途上国にいる」と指摘し、カリブ向けのAIサンドボックス(規制の実験場)を提案しました [3][1]

2. 教育AI — アリゾナ州立大学CIOと問う「教室の外に出る学び」

取り上げたセッション: パネル「AI in Education: Navigating the Future」(1月30日 9:30〜11:00、モデレーター: ジャクリーン・モリス)

  • 米アリゾナ州立大学のレブ・ゴニックCIOは、講義の録画・文字起こし・AI要約で学習が教室外へ拡張する実例や、個人AIチューター付き没入型教材「Dreamscape Learn」を紹介しました [3][2]
  • 高等教育研究機構NIHERSTのアンドリュー・ハンテ議長は、西インド諸島大学(UWI)のAI利用方針(education向けAIの学生向け・教員向け・制度向けの3類型、剽窃を防ぐAI引用ルール)を説明しました [3][2]
  • 質疑ではデータのプライバシー確保と、消費者にとどまらず「イノベーターになる」necessityが論点になりました [3][2]

3. 金融包摂の数字 — 「接続80%、使いこなし40%」のギャップ

取り上げたセッション: パネル「Digital Transformation and Financial Inclusion」(1月31日 13:10〜14:40、モデレーター: アジマル・ナジル/TTMAG理事)

  • T&T国際金融センター(TTIFC)のジョン・アウトリッジCEOは「国民の約80%がインターネットにアクセスできるが、2023年の調査では約60%がデジタル金融アプリの使い方を知らない」「金融取引の60%はなお現金」と数字で格差を示しました [3]
  • 決済企業Paywise創業者やPinaka Consultingのシバ・ビセサルが、インドのUPI(統一決済インターフェース)調査団の来訪(2024年12月)や銀行口座を持たない層向けデジタルウォレットの簡易本人確認を紹介しました [3]
  • デジタル変革省のベルフォン次官は、政府の292の電子サービス(うち145が取引型)を挙げ、国家DX戦略2024-2027への対話成果の反映を約束しました [3]

4. カリブccTLDの結集 — CTUセッションと防災AI・若者フォーラム

取り上げたセッション: CTUセッション「カリブccTLDのグローバルコミュニティへの参画加速」(1月31日 15:30〜16:45)ほか

  • カリブ電気通信連合(CTU)のロドニー・テイラー事務総長の下、ccNSO議長アレハンドラ・レイノソ、アンギラ・キュラソー・ハイチ・カナダ(CIRA)のドメイン管理者が3連続パネルで登壇。カリブには33のccTLDがあり、小規模ゆえの人材・収益の制約が共有されました [3][2]
  • UWIのレテティア・アディソンは、AIによる災害シミュレーション(デジタルツイン)や緊急対応の調整改善など「防災AI」の適用可能性をハリケーン常襲地域の文脈で提示しました [3][2]
  • 2日目午前の若者フォーラム「サイバー時代のいじめ」は、AIアバター「Diana」を使った進行で、いじめが「廊下だけでなく24時間365日、家までついてくる」時代の対処を議論しました [3][2]

3分ショートトーク — よくある疑問に答えます

Q. 第9回まで続いたのはすごいこと?

A. はい。2017年の初回から毎年1月に一度も欠かさず開催しており、カリブの国別IGFとしては最も安定した系列です。第9回はISOCの新CEOが基調に立つまでになりました。

Q. 一番率直な発言は?

A. ISOCのウェントワースCEOが国連のグローバル・デジタル・コンパクトについて「作られ方が真にマルチステークホルダーではなかったので全面支持はできない」と明言したことです。国内IGFの場で国際文書への異議が率直に語られました。

Q. 日本に関係ある?

A. 「接続率8割・使いこなし4割」という金融包摂のギャップは、日本のデジタル活用格差と同型です。防災AIやWSIS+20の議論も、災害大国でIGF活動を行う日本と直結する論点です。

Trinidad IGF ってどんな会議?(はじめての方へ)

Trinidad IGF 2025 ポートオブスペイン — Trinidad IGFの位置づけ

Trinidad IGFは、地域・国レベルでインターネットガバナンスを議論するIGFイニシアティブのひとつです。

日本の私たちへの影響

この大会の議論は、数年内に日本のデジタル政策・プラットフォームのルール・AI規制に反映 されていきます。2025年大会で確認された方針は、あなたが毎日使うスマホ・SNS・AIサービスの「次のルール」の土台です。

出典・参考資料

  1. TTIGF 2025(公式カテゴリページ: アジェンダ・登壇者・報告書等の記事一覧) — TTIGF (igf.tt)(参照: 2026-07-23)
  2. TTIGF 2025 Agenda(公式アジェンダ: 2日間の全セッション・登壇者) — TTIGF (igf.tt)(参照: 2026-07-23)
  3. TTIGF 25 Report Final(公式会合報告書PDF: 第9回・ハイブリッド・テーマ・全セッション詳報) — TTMAG / TTIGF (igf.tt)(参照: 2026-07-23)
  4. TTGIF 2025 Report (Final)(報告書公開告知、2026年2月12日付) — TTIGF (igf.tt)(参照: 2026-07-23)

※ 記事中の [数字] は出典番号を示します。


関連リンク

更新履歴

第1稿投稿 2026年8月3日 15時20分(記事コンテンツアップ)

— 中澤祐樹