「先に作ったのは自分だ」と言える準備を、無料で残す方法

「先に作ったのは自分だ」と言える準備を、無料で残す方法

写真でも、文章でも、企画書でも、作った人なら一度は考えたことがあるはずです。「これを誰かに真似されたとき、先に作ったのは自分だと言えるだろうか」。

即答できる人は、多くないと思います。この記事は、その準備を無料で、作品を誰にも見せないまま済ませる方法の説明です。

「先に作ったのはこちら」を示すのは難しい

私が DateSealed を作ったきっかけは、経営している不動産会社の物件写真でした。写真を改ざんされたり、他のサイトに盗用されたりしたときに、先に存在していたのは自分の写真だと示せるようにしておきたかったのです。

ところが、いざ示そうとすると、意外に手段がありません。相手も同じ画像を持っていて、同じ日付を主張できるからです。先に存在していたことを示すには、自分以外の誰かが、後から書き換えられない形で日付を書き留めている必要があります。

著作権侵害への対応は、公的にも課題として扱われています。文化庁は 2022 年 8 月に海賊版の相談窓口を開設しました。2025 年 1 月からは、権利者団体の SARTRAS と JNCA が、個人のクリエイターが削除請求などを弁護士に依頼する費用を支援する事業を始めています。1 どの場面でも、まず「どちらが先か」を示す材料が要ります。

手元の日付は、ぜんぶ自分で書き換えられる

「自分で書き換えられるものは、相手も書き換えられると疑われる」。これが、日付の証拠の難しさです。

  • ブログや CMS の公開日は、管理画面で過去の日付に変えられます。WordPress の公式文書にも、公開日を過去にして記事の日付を遡らせる方法が載っています。2
  • 写真の Exif(撮影日時)は、無料のツールで書き換えられます。たとえば ExifTool は、メタ情報の読み書きと編集のためのソフトウェアで、日時をまとめてずらす機能もあります。3
  • ファイルの日時は、コピーするだけで変わります。Windows では、コピーすると作成日時はコピーした時刻になります(更新日時は残ります)。4
  • スクリーンショットは、画像編集で日付の部分を直せます。

どれも「ないよりはあった方がよい」ものです。ただ、どれも自分の手の中にあるので、「後から用意したのではないか」という疑いを、それ自体では消せません。

ファイルを渡さずに「存在した日付」だけを記録する

そこで私が作ったのが DateSealed(デートシールド)です。運営はライトセンド株式会社で、無料・登録不要です。

仕組みは単純です。ファイルや文章そのものは送らず、そのハッシュ値(SHA-256 の 64 文字の指紋)だけをブラウザの中で計算して送ります。DateSealed はそのハッシュに、2 種類の日付を付けます。

  1. すぐに返る時刻署名。 DateSealed 自身の時刻署名局が署名した、RFC 3161 という標準形式の時刻署名です。5
  2. 数時間以内に刻まれるビットコインの記録。 ハッシュは OpenTimestamps の公開カレンダーに送られ、ビットコインのブロックに書き込まれます。ここに刻まれた後は、DateSealed が無くなっても、ビットコインの台帳だけで日付を確かめられます。

1 つ目は「DateSealed を信用できる範囲」でしか信用できません。2 つ目は、私にも書き換えられません。だから両方を付けています。送るのはハッシュだけなので、未発表の原稿や、まだ誰にも見せていない写真でも記録を取れます。

手順

  1. datesealed.com/ja/ を開きます。
  2. 文章を貼るか、ファイルを選びます(URL や、計算済みの SHA-256 を直接入れることもできます)。
  3. 画面に表示された SHA-256 を確認し、「この内容の記録を発行する」を押します。
  4. 記録ページが開きます。.tsr(時刻署名)と .ots(ビットコインの証明)をダウンロードして、元のファイルと一緒に保管します。

記録ページには、自分のパソコンで検証するためのコマンドも表示されます。「DateSealed に聞かなくても確かめられる」ことが大事なので、証明ファイルは手元に置いてください。制限は、1 つの IP アドレスあたり 1 時間に 10 件、1 日に 50 件です。

写真なら「写真にスタンプ」

写真を公開する人のために、写真にスタンプという画面があります。写真を選ぶと、元の写真のハッシュを記録したうえで、ブラウザの中で小さな DateSealed のバッジ(記録日と記録ページのアドレス)を焼き込んだ複製を作ります。位置は四隅から、大きさは 3 段階から選べます。写真そのものは送られません。

注意点が 1 つあります。記録の対象は元の写真で、スタンプ入りの複製は別のファイルです。バッジは切り取れますし、バッジだけで証明になるものでもありません。公開用にスタンプ入りを使い、元の写真は必ず手元に残してください。

記録が示すこと、示さないこと

ここは正確に書きます。期待を間違えると、困るのは使う人だからです。

記録が示すのは、「このハッシュに対応するデータが、記録の時刻には存在していた」ことだけです。

示さないことは、次のとおりです。

  • 内容が正しいこと、独創的であること。
  • あなたが作ったこと、あなたが権利を持っていること。記録を取ったのが誰かは、記録に含まれません。
  • 法的な効力。DateSealed の記録は、法的効力を保証するものではありません。日本で制度上の位置づけがあるのは、総務大臣が認定した時刻認証業務のタイムスタンプで、認定を受けた業務は 2026 年 3 月時点で 6 件です。6 税務書類のスキャナ保存の要件でも、この認定タイムスタンプが示されています。7 それが必要な場面では、認定事業者をご利用ください。

DateSealed の記録は、手早く無料で作れる「証拠の一つ」です。それ以上でも、それ以下でもありません。

本気で争うなら、ほかの手段と組み合わせる

「先に存在した」を争う場面で使える手段は、ほかにもあります。DateSealed を作る前に調べたものを挙げておきます。

  • 公証人の確定日付(1 件 700 円)。紙の文書が対象で、電子版はテキスト・PDF・XML の 10MB 以下です。
  • 文化庁の第一発行年月日等の登録(登録免許税 3,000 円/件)。登録した日に公表されたと推定される効果があり、1 作品ごとに書面で申請します。
  • 総務大臣認定のタイムスタンプ。法人向けの料金が中心ですが、月数件なら無料の再販サービスもあります。

手続きや費用の面で「次々に増える写真や記事」には向きませんが、1 点を本気で守る場面では強い手段です。DateSealed はその前段の、「とりあえず全部に日付を付けておく」役割です。

元のファイルを捨てないこと

最後に、いちばん大事なことを書きます。

DateSealed が持っているのはハッシュだけです。元のファイルがないと、「このハッシュがこの写真のものだ」と示せません。記録を取ったら、元のファイルと、ダウンロードした .tsr と .ots を、同じ場所に保管してください。記録ページの ID を控えておけば、後から記録ページを開き直すこともできます。

また、記事を書き直すとハッシュが変わります。更新のたびに新しい記録を取ってください。WordPress をお使いなら、公開・更新のたびに自動で記録する DateSealed のプラグインがあります。記事のハッシュはあなたのサーバーの中で計算し、送るのはハッシュだけです。datesealed.com/api からダウンロードして、WordPress の管理画面の「プラグイン → 新規追加 → プラグインのアップロード」で入れられます。wordpress.org への掲載は審査中です。

試してみてください

datesealed.com/ja/ を開いて、手元の文章を 1 つ貼ってみてください。ブラウザの中で計算するだけなので、すぐに終わり、何もアップロードされません。

仕組みの詳しい説明は、公開時の記事「「いつ公開したか」を第三者の台帳に残す無料ツール DateSealed を公開しました」に書きました。英語を既定として 20 言語で使えます。

筆者について

中澤祐樹(nkzw.jp)


2026.11.03 / written by 中澤祐樹

更新履歴

  • 第1稿投稿 2026年11月3日 9時23分(記事コンテンツアップ)

  1. 文化庁「海賊版対策に関する相談窓口の開設」(2022 年 8 月 30 日報道発表)、SARTRAS「権利行使支援事業」(2025 年 1 月 14 日)。 ↩

  2. WordPress.org 公式文書「Write Posts (Classic Editor)」。公開日を過去に変えて記事の日付を遡らせる方法が説明されています。 ↩

  3. ExifTool 公式サイト(exiftool.org)。 ↩

  4. Microsoft サポート技術情報 KB299648(ファイルをコピーしたときの日時の扱い)。 ↩

  5. IETF RFC 3161「Time-Stamp Protocol (TSP)」(2001 年)。時刻署名局は、受け取ったハッシュに時刻を付けて署名します。 ↩

  6. 総務省「タイムスタンプ(時刻認証業務)の認定制度」。認定は令和 3 年総務省告示第 146 号に基づき、2023 年 2 月に初の認定が行われました。件数は 2026 年 3 月現在。 ↩

  7. 国税庁「電子帳簿保存法一問一答【スキャナ保存関係】」(令和 4 年 6 月)。 ↩