GoogleのAI(Gemini)が「横浜から硫黄島まで電車36分、車で4時間半」と言い出した件

GoogleのAI(Gemini)が横浜から硫黄島まで電車36分と回答した件のアイキャッチ。現実の約48時間以上と比較した図。

先日、Googleで「硫黄島」と検索したら、右側のGeminiのAI回答欄にこんな情報が表示されていました。

横浜市から 電車で36分、車で4時間30分

……待って、なに?

思わずスクリーンショットを撮ってしまいました。記録として残しておきます。

GoogleのAI(Gemini)が「横浜から硫黄島まで電車36分、車で4時間半」と言い出した件 アイキャッチ

硫黄島ってどこにある島?

念のため確認しておくと、硫黄島(いおうとう)は東京都小笠原村に属する火山島です。東京から南へ約1,250km、ちょうどグアムよりも少し近いくらいの、太平洋のど真ん中に浮かぶ絶海の孤島です。

小笠原諸島の中心である父島からさらに南へ約240kmのところに位置します。

ちなみに「横浜から電車で36分」の距離感というのは、だいたい横浜〜東神奈川くらいです。神奈川県内から出てすらいません。

そもそも民間人は上陸できない

仮にどうにかして近くまで行けたとしても、硫黄島は現在航空自衛隊の基地がある島であり、一般民間人の上陸は原則として禁止されています。

観光地でも、一般公開されている場所でもない。定期フェリーも観光便もない。つまり、普通の人が「ちょっと硫黄島まで」と気軽に行ける場所では、まったくないのです。

例外:遺骨収集で行く場合

実は唯一、民間人が硫黄島に上陸できる機会があります。

硫黄島の戦い(1945年)では、日本軍約2万1,000人が命を落としました。現在も多くの遺骨が島内に残っており、厚生労働省が主導する遺骨収集団が定期的に上陸活動をしています。戦没者の遺族が参加できる「慰霊巡拝」も定期的に実施されており、遺族はこのルートで硫黄島に立つことができます。

この場合の移動手段は、厚生労働省が手配したチャーター機(ANAなど)による羽田空港→硫黄島への直行便。所要時間は約3時間

これでやっと「電車36分」より少し現実味を帯びてきます(それでも全然違いますが)。

実際に硫黄島「付近」まで行くとしたら?

民間人が一般的な手段で硫黄島に近づこうとすると、以下のような経路が考えられます。

横浜から硫黄島へのルートと所要時間

ルートA:飛行機+漁船ルート(最短・理論上)

  • 横浜 → 羽田空港(電車で約40分)
  • 羽田 → 父島(チャーター機のみ、定期便なし、約3時間)
  • 父島 → 硫黄島付近(漁船・チャーター船、約240km、約20〜24時間)
  • 合計:約28時間以上

ルートB:船オンリールート(現実的)

  • 横浜 → 東京・竹芝桟橋(電車で約1時間)
  • 竹芝桟橋 → 父島(小笠原丸、週1〜2便、約24時間)
  • 父島 → 硫黄島付近(漁船・チャーター船、約24時間)
  • 合計:約49時間以上

下の図で比較するとわかりやすいです。

横浜から硫黄島 移動時間リアル比較

「電車36分」と「船49時間以上」の差、伝わりますでしょうか。

なぜGeminiは間違えたのか?

Geminiが「電車36分・車4時間半」と答えた理由として、最も可能性が高いのは同名地名の混同だと思っています。

「硫黄島」という地名は日本に複数存在します。有名なのは鹿児島県三島村にある薩摩硫黄島(さつまいおうじま)です。こちらは鹿児島市から高速船で約3時間の離島で、温泉があることでも知られています。

もしかすると、鹿児島の「硫黄島」の交通情報と、東京都の「硫黄島」(太平洋の孤島)を混同した可能性があります。あるいは、AIが住所データの「東京都・小笠原村・硫黄島」を正しく距離計算に反映できなかった可能性もあります。

AIの回答は便利ですが、地名には同音異義語が多い。場所に関する情報は地図アプリで必ずダブルチェックするのが安全ですね。

まとめ

Geminiが「電車36分」と出した硫黄島は、横浜から直線距離で約1,250km離れた太平洋の絶海の孤島です。民間人の上陸は原則禁止で、遺骨収集の参加者でも羽田からチャーター機で3時間かかります。一般ルートで付近まで行こうとすれば、船の乗り継ぎで2日近くかかります。

個人的には、いつか遺骨収集のボランティアとして関わりたいと思っている場所のひとつです。2万人超の遺骨が今も眠っている島のことを、今回のAI回答一つでも知るきっかけになるといいなと思います。

更新履歴

第1稿投稿 2025年4月29日 10時30分(記事コンテンツアップ)