3行まとめ
- 2024年12月12〜13日、コロンボのホテル・マンダリナで第3回スリランカIGFが開催。テーマは「マルチステークホルダー主義によるインターネットのエンパワーメント」で、178人が参加し52人が登壇しました。
- メイン・女性・若者・デジタル包摂・技術の5トラック10パネルを実施。障害者のデジタル権利について政府の政策枠組みと議会法案づくりを助言するボランティアグループの発足という具体的成果を生みました。
- 2016年初開催・2017年第2回から約7年の休止を経て、LKSIG主催で復活した大会です。小国の国別IGFが途絶から立ち直る道筋を示した事例として注目されます。
こんにちは、中澤です。この記事は Sri Lanka IGF 2024(第3回) を、公式発表・議事録・現地報道にあたって整理した詳報です。忙しい方は上の3行まとめと図解だけでも骨子がつかめます。
大会の基本情報(公式発表より)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | Sri Lanka IGF 2024(第3回) |
| 会期 | 2024-12-12 〜 2024-12-13 |
| 会場 | マンダリナ・コロンボ(ホテル)、コロンボ |
| テーマ | マルチステークホルダー主義によるインターネットのエンパワーメント |
| 参加者 | 178 |
| 登壇者数 | 52 |
| パネル数 | 10 |
| トラック | 5 |
| 主催 | ランカ・スクール・オン・インターネットガバナンス(LKSIG、APSIGのスリランカ代表機関) |
| 成果文書 | 障害者のアクセシビリティとデジタル権利に関する政策枠組み・議会法案づくりを政府に助言するボランティアグループの発足 |
(出典: 文末の出典一覧を参照)
ディスカッション・ダイジェスト(議事録より)
現地の議事録・セッション記録から、議論の核心部分を抜粋・翻訳してお届けします。
1. デジタル経済とインターネットガバナンス — 政府ビジョンとギグエコノミー
取り上げたセッション: メインフォーラム パネル1「Internet Governance and Digital Economy」(12月12日)
- 主賓のエランガ・ウィーラトナ・デジタル経済副大臣が政府のデジタル経済構想を説明し、IGFのような場は政策立案者にとって政策形成のベストプラクティスを知る「目を開かせる場」だと位置づけた [1]
- デジタル経済省のワルナ・スリ・ダナパーラ次官代行、Mastercardのスリランカ・モルディブ担当カントリーマネージャー、ICANNのグローバル・ステークホルダー・エンゲージメント担当らが登壇し、デジタル決済とギグエコノミーの制度設計を議論 [1]
- 提言として、包括的なデジタル経済枠組みの整備、周縁層・農村部への金融包摂の拡大、定期的なマルチステークホルダー対話の3点がまとめられた [1]
2. より安全なインターネット — データ保護法のGDPR整合と執行の穴
取り上げたセッション: メインフォーラム パネル2「Safer Internet, Privacy, and Regulations」(12月12日)
- Sri Lanka CERT、国家開発銀行、法曹、セキュリティ企業の実務家がスリランカのデータ保護規制を点検し、規制の執行メカニズムに残る穴と規制当局の能力構築の必要を指摘した [1]
- GDPRなど国際標準に整合した包括的データ保護法制の実装加速、子どものオンライン安全のための specific な規制と技術的セーフガードの整備が勧告された [1]
- 暗号化は利用者データ保護の重要ツールと確認され、官民連携による子ども安全プログラムとデジタルリテラシー教育の展開が求められた [1]
3. Women IGF — 「壁を破り、橋を架ける」
取り上げたセッション: セッション2「Women Internet Governance Forum」(12月12日、テーマ: Breaking Barriers, Building Bridges: Women in Internet Governance)
- ISOC理事会メンバーのサガリカ・ウィクラマセケラ氏が開会し、ISOCのサリー・ウェントワースCEOがビデオメッセージで女性のデジタルガバナンス参画の意義を強調した [1]
- 参加者が政府・市民社会・民間・学界・技術コミュニティに分かれてガバナンス交渉を体験するシミュレーション「Voice of Influence」や、2030年に向けたビジョンマッピングなど参加型設計が特徴 [1]
- 提言として、女性のオンライン安全政策の強化、女性・周縁コミュニティ向けデジタルリテラシー、ガバナンス機関への女性登用、メンターシップ制度の4点が採択された [1]
4. 障害者のデジタル包摂 — 「Nothing Without Us」から法案助言グループへ
取り上げたセッション: セッション4「Digital Inclusion and Accessibility in Internet Governance」(12月13日)
- 視覚・聴覚・身体・心理社会・知的障害の当事者が登壇・参加し、「私たち抜きに決めるな(Nothing Without Us)」を実践する場として設計。会場のホテル自体も点字・音声案内付きエレベーターなどアクセシビリティで選定された [1][4]
- LIRNEasiaの調査データ(2019年)では携帯電話保有率が全国民78%に対し障害者32%と大きな格差があり、スマホ比率は障害者の方が高い(63%対50%)という「使える機能への渇望」も示された [1][4]
- 成果として、障害者のアクセシビリティとデジタル権利に関する政策枠組み・議会法案づくりを政府に助言する官民学のボランティアグループが発足。UNCRPDとWCAGへの国内政策の整合も提言された [1][4]
5. Tech IGF — シンハラ語・タミル語のインターネットとAIガバナンス
取り上げたセッション: セッション5「Technical IGF」(12月13日): 多言語インターネット/ユニバーサル・アクセプタンス、AI・ML・データガバナンス
- シンハラ語・タミル語コンテンツの育成、国際化ドメイン名(IDN)とローカライズccTLDの普及、ユニバーサル・アクセプタンス(UA)対応が「言語で取り残さない」ための課題として整理された [1][2]
- AIパネルでは「ブラックボックス」問題、注釈付きデータの不足、敵対的攻撃への耐性、生成AIの業務実装とリスクが議論され、技術権限を持つ国家AI委員会の設置が提言された [1][2]
- シンハラ語・タミル語の自然言語処理・音声認識・機械翻訳への研究投資と、GDPR水準のデータ保護整合が技術コミュニティからの勧告として報告書に記録された [1][2]
3分ショートトーク — よくある疑問に答えます
Q. そもそも何が決まった会議なの?
A. 拘束力ある決定はしませんが、今回は珍しく形が残りました。障害者のアクセシビリティとデジタル権利の政策枠組み・議会法案づくりを政府に助言するボランティアグループが、この場で発足したのです。
Q. 一番モメたテーマは?
A. データ保護の「法律はあるのに執行が追いつかない」問題です。GDPR級の法制を急ぐべきという意見と、規制当局の人材・体制がまだ足りないという現実論がぶつかりました。
Q. 自分に関係ある?
A. あります。7年止まっていた国のIGFが、学校型コミュニティ(LKSIG)を核に復活できた事例です。自国語のネット環境づくりや障害者包摂の進め方は、どの国にも応用できます。
Sri Lanka IGF ってどんな会議?(はじめての方へ)
Sri Lanka IGFは、地域・国レベルでインターネットガバナンスを議論するIGFイニシアティブのひとつです。
日本の私たちへの影響
この大会の議論は、数年内に日本のデジタル政策・プラットフォームのルール・AI規制に反映 されていきます。2024年大会で確認された方針は、あなたが毎日使うスマホ・SNS・AIサービスの「次のルール」の土台です。
出典・参考資料
- Report on IGF Sri Lanka 2024(公式報告書PDF) — Lanka School on Internet Governance (LKSIG) / 国連IGF事務局filedepot(参照: 2026-07-11)
- IGF Sri Lanka(公式サイト) — IGF Sri Lanka / LKSIG(参照: 2026-07-11)
- Sri Lanka IGF(NRI公式記録ページ・2024年次報告リンク) — 国連IGF事務局 (UN IGF Secretariat)(参照: 2026-07-11)
- LIRNEasia at IGF Sri Lanka 2024: Bridging the digital divide — LIRNEasia(参照: 2026-07-11)
※ 記事中の [数字] は出典番号を示します。
関連リンク
- IGF公式(リージョナル/ナショナル一覧): https://www.intgovforum.org/en/content/national-and-regional-igf-initiatives
- 日本IGF: https://japanigf.jp/
- 参考:中澤祐樹ブログ https://nkzw.jp/category/igf/
更新履歴
第1稿投稿 2026年7月20日 13時58分(記事コンテンツアップ)
— 中澤祐樹

