3行まとめ
- 2018年10月23日、カラカスのForo XXIで「IGF Venezuela 2018(IGFve)」が開かれました。ISOCベネズエラ支部の主催で、前日にはワークショップのプレデーも行われた、同国NRIとして確認できる唯一の開催です。
- 通信インフラの現状、オンラインの人権、ネット遮断、偽情報、決済と暗号資産、.veドメインの未来まで15のテーマを掲げ、規制当局CONATELから市民社会・技術界まで40人超が登壇しました。
- 深刻な危機のさなかに政府側と市民社会が同じ会場で接続やネット遮断を語った、きわめて珍しい対話の記録です。この後、ベネズエラの国内IGFは開催が確認されていません。
こんにちは、中澤です。この記事は IGF Venezuela 2018 を、公式発表・議事録・現地報道にあたって整理した詳報です。忙しい方は上の3行まとめと図解だけでも骨子がつかめます。
大会の基本情報(公式発表より)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | IGF Venezuela 2018 |
| 回次 | 第1回(NRI「Venezuela IGF」として一次資料で確認できる唯一の実開催。同時代報道は「ISOCベネズエラが調整するこの種のイベントとしては2回目、国内の同種会合としては4回目」とも紹介。国連NRI記録はイニシアチブ設立を2018年、コーディネーターをアンドレス・アスプルア氏とする) |
| 会期 | 2018-10-23(07:00登録開始〜17:00。前日10-22に自己組織化セッションと無料ワークショップのプレデー) |
| 会場 | Foro XXI(カラカス、ラ・カステリャーナ地区 Centro Letonia 5階、Av. Eugenio Mendoza。メトロAltamira駅近く) |
| テーマ | 地域の共通課題 |
| 主催 | ISOCベネズエラ支部(Internet Society Venezuela) |
(出典: 文末の出典一覧を参照)
ディスカッション・ダイジェスト(議事録より)
現地の議事録・セッション記録から、議論の核心部分を抜粋・翻訳してお届けします。
1. ネット遮断と情報統制 — 危機下ベネズエラの最重要議題
取り上げたセッション: アジェンダ「インターネット遮断の詳細分析」「情報と偽情報」ほか(登壇: アンドレス・アスプルア〔VE sin Filtro/ISOC〕、マリエングラシア・チリノス〔IPYS〕、カルロス・コレア〔Espacio Público〕、マリアンネ・ディアス〔Derechos Digitales〕、イリア・プヨサ〔研究者〕ら)
- ネット遮断(ブロッキング)の詳細分析が独立したアジェンダ項目として掲げられ、遮断監視プロジェクトVE sin Filtroを率いるアスプルア氏や表現の自由団体が登壇する、当時のベネズエラでは踏み込んだ構成だった [2][1]
- プヨサ氏は研究発表「ベネズエラのTwitterにおける公共アジェンダの汚染」を予定し、偽情報とプロパガンダによる言論空間の歪みをデータで示す試みが目玉となった [2][1]
- オンラインの人権・プライバシー・表現の自由が15テーマの中核を占め、IPYSやEspacio Públicoなど報道・人権団体が議論を支えた [2][1]
2. インフラとアクセス — 崩れゆく接続と政府の役割
取り上げたセッション: アジェンダ「通信インフラの現状」「ユニバーサルアクセス」ほか(登壇: CONATELのアレクシス・アンテリス氏とアビリオ・ラバルカ氏、業界団体Casetel、Telefónica Movistarら)
「インターネットを発展させるためには、政府がこうしたイベントに積極的に参加することが不可欠です」
— アンドレス・アスプルア(ISOCベネズエラ会長) [2][1]
- 通信インフラの現状とユニバーサルアクセスの課題が主要議題に据えられ、規制当局CONATELの担当官2人が民間・市民社会と同じ壇上に立った [2][1]
- アクセシビリティ、サイバーセキュリティ、公共政策の欠落など、接続をめぐる論点が体系的に並べられ、業界(Casetel・Movistar)も参加した [2][1]
3. 決済・電子商取引・暗号資産 — デジタル経済の生存戦略
取り上げたセッション: アジェンダ「決済・電子商取引・暗号資産」(登壇: アーロン・オルモス〔DASH〕、リチャード・ウフエタ〔Cavecom-e〕ら)
- 決済・電子商取引・暗号資産が独立したテーマとして立てられ、暗号通貨DASH陣営や電子商取引業界団体Cavecom-eの論者が登壇した [2][1]
- 「ベネズエラの発展のためのインターネット」というテーマも並び、経済の困難のなかでデジタル経済に活路を探る当時の空気を映した [2][1]
4. マルチステークホルダーの一日 — 政府・市民社会・技術界が同じ会場に
取り上げたセッション: フォーラム全体・プレデー(10月22日: ラテンアメリカのデジタル進化、ブロックチェーン、デジタル環境の著作権、IoT教育の無料ワークショップ)
「(インターネットガバナンスとは)社会におけるインターネット利用の一般的なルールを定めるものです」
— ロビンソン・リバス(ベネズエラ中央大学) [2][3][4][5]
- 国内外の登壇者40人超・モデレーター8人(ジャーナリスト・研究者・技術者)という布陣で、Nic.ve、LACNOG、ISOC地域事務所(ラケル・ガット氏)など技術コミュニティも厚く参加した [2][3][4][5]
- ISOCベネズエラは地方の学生10人に奨学金を出して参加を支え、女性と技術、.veドメインの未来、SNSの安全な使い方など裾野の広いテーマ構成で「開かれた対話」を演出した [2][3][4][5]
- この開催を最後に後続の年次会合は確認されておらず、国連NRI記録も年次会合「未定」のまま。危機下の一回性の対話として記録的価値が高い [2][3][4][5]
3分ショートトーク — よくある疑問に答えます
Q. どんな会議だったの?
A. ISOCベネズエラ支部が開いた、同国初で唯一確認されている国内IGFです。カラカスの会議場に規制当局から人権団体、暗号通貨業界まで40人超の登壇者が集まり、インフラからネット遮断まで15テーマを一日で議論しました。
Q. 何がすごいの?
A. 政治・経済危機の渦中で、ネット遮断を監視する市民団体と、遮断する側と目される規制当局CONATELが同じイベントに登壇したことです。マルチステークホルダー対話の実験として非常に貴重な記録です。
Q. その後どうなった?
A. 後続の開催は確認されていません。公式サイトのドメインは失効して無関係のサイトになり、国連の記録でも年次会合は「未定」のままです。危機下の国で国内IGFを続ける難しさを物語っています。
Venezuela IGF ってどんな会議?(はじめての方へ)
Venezuela IGFは、地域・国レベルでインターネットガバナンスを議論するIGFイニシアティブのひとつです。
日本の私たちへの影響
この大会の議論は、数年内に日本のデジタル政策・プラットフォームのルール・AI規制に反映 されていきます。2018年大会で確認された方針は、あなたが毎日使うスマホ・SNS・AIサービスの「次のルール」の土台です。
出典・参考資料
- Foro de Gobernanza de Internet de Venezuela #IGFve(開催告知: 日時・会場・プレデー・奨学金・登壇者) — ITC Andino(参照: 2026-07-11)
- Arranca el Foro de Gobernanza de Internet de Venezuela #IGFve(詳細報道: 15テーマ・登壇者40人超・主催者発言) — Estamos en Línea(参照: 2026-07-11)
- IGFve: Foro de Gobernanza de Internet de Venezuela(開催告知報道) — Opinión y Noticias(参照: 2026-07-11)
- Foro de Gobernanza de Internet de Venezuela(大学広報による開催案内) — ベネズエラ・アンデス大学(ULA)(参照: 2026-07-11)
- Venezuela IGF(NRIページ: "National IGF of Venezuela was established in 2018"・コーディネーター: Andres Azpurua・年次会合To be confirmed) — 国連IGF事務局(参照: 2026-07-11)
※ 記事中の [数字] は出典番号を示します。
関連リンク
- IGF公式(リージョナル/ナショナル一覧): https://www.intgovforum.org/en/content/national-and-regional-igf-initiatives
- 日本IGF: https://japanigf.jp/
- 参考:中澤祐樹ブログ https://nkzw.jp/category/igf/
更新履歴
第1稿投稿 2026年7月20日 10時28分(記事コンテンツアップ)
— 中澤祐樹

