第13回ウガンダ・インターネットガバナンスフォーラム(UIGF 2023) 詳報 — 議事録ダイジェストと3行まとめ

Uganda IGF 2023 カンパラ — サムネイル

3行まとめ

Uganda IGF 2023 カンパラ — 3行まとめ

  1. 2023年8月24日、カンパラのシェラトン・ホテルで第13回ウガンダIGFが開かれ、123名が「中澤の望むインターネット——ウガンダ人に力を」を議論しました。前日には若者123名とは別枠のユースIGFも開催されています。
  2. カビャンガ国家指導担当閣外大臣が「アクセスできて、包摂的で、安全なインターネット」を訴え、ICT省はICTがGDPの9%超・雇用230万人を支えると報告。AIと創造経済のセッションでは映画監督や音楽家が「アフリカの物語をAIで世界に売る」可能性と著作権の穴を論じました。
  3. 生成AI元年の国内対話として、規制・教育・雇用への影響からChatGPTを使う音楽家の実体験まで、AIを「創る側」の視点で扱ったのが特徴です。女性のデジタル権利プロジェクトの発足も、この回の具体的成果です。

こんにちは、中澤です。この記事は 第13回ウガンダ・インターネットガバナンスフォーラム(UIGF 2023) を、公式発表・議事録・現地報道にあたって整理した詳報です。忙しい方は上の3行まとめと図解だけでも骨子がつかめます。

大会の基本情報(公式発表より)

Uganda IGF 2023 カンパラ — 大会 基本情報

項目 内容
正式名称 第13回ウガンダ・インターネットガバナンスフォーラム(UIGF 2023)
回次 第13回
会期 2023-08-24
会場 シェラトン・ホテル(カンパラ)
テーマ The Internet We Want — Empowering Ugandans(中澤の望むインターネット — ウガンダ人に力を)
参加者 123名(女性44名・男性79名)
主催 UIGF(コンビーナー: リリアン・ナルウォガ)。ISOC財団・IGFSA・Enabelウガンダ・Pollicy・ICT国家指導省が協賛
成果文書 「女性と少女のデジタル権利」プロジェクト(Enabel)とPollicyのカードゲーム「Where is my Data」を会場でローンチ。前日にユースIGF 2023(8/23、国立ICTセンター〈ナカワ〉)

(出典: 文末の出典一覧を参照)

ディスカッション・ダイジェスト(議事録より)

Uganda IGF 2023 カンパラ — 議論の見取り図

現地の議事録・セッション記録から、議論の核心部分を抜粋・翻訳してお届けします。

1. 「アクセスは礎石」 — 大臣が語る、力を与えるインターネット

取り上げたセッション: 基調講演(カビャンガ・ゴッドフリー・バルク国家指導担当閣外大臣)とICT省挨拶

「ウガンダ人に真に力を与えるインターネットとは、アクセスできて、包摂的で、安全なインターネットだ。場所や境遇にかかわらず誰もがデジタル時代の恩恵を享受できるよう、デジタル格差の橋渡しをするインターネットである。アクセスこそがインターネットの礎石だ。手頃で信頼できるインターネットアクセスの提供に、中澤はたゆまず取り組まねばならない」
カビャンガ・ゴッドフリー・バルク(ICT国家指導省・国家指導担当閣外大臣) [1]

  • ICT省のナキェジェ上級ICT官(次官代理)は、ICTのGDP寄与が9%超・雇用230万人・情報通信サービスの平均成長率14.8%と報告し、5本柱(インフラ・デジタルサービス・サイバーセキュリティとデータ保護・デジタルスキル・イノベーション)の「デジタル変革ロードマップ」を説明した [1]
  • 「技術は目的ではなく手段。成功の真の尺度はウガンダ人の生活にもたらす前向きな変化だ」という省側の言葉が記録され、国家光ファイバー網は1,466拠点・4,296kmに達し主要都市に公衆Wi-Fiが設置されていることも示された [1]

2. AIと創造経済 — 「アフリカには語られていない物語がある」

取り上げたセッション: セッション「Artificial Intelligence and the Creative Economy: Policy, Safety and Intellectual Property」(国会議員・弁護士・作家・音楽家・映画監督・Pollicy研究者。司会はNBSテレビのカナリー・ムグメ記者)

「世界は自分たちの物語で飽和している。だがアフリカ人の私たちには新しく差し出せるものがある。AIで生み出せるコンテンツがそこにつながる。可能性は無限で、まだ誰も手をつけていない物語が私たちにはある。AIでそれらの物語をすくい上げ、作品にできれば、知的財産を世界に売り、ライセンスすることで世界に追いつける」
ロークマン・アリ(映画監督・撮影監督) [1]

「創作におけるAIとの関係は共生だ。AIは単独では何も生み出せず、クリエイターが既に作ったものを材料に、想像力を刺激する選択肢を返してくる。私はChatGPTをMidjourneyやVideoLeapと組み合わせて創造性を高め、資金をどこで見つけるかというデータドリブンな判断にも使っている」
GNLザンバ(ミュージシャン、Baboon Forest Entertainment CEO) [1]

  • AIは創造性と効率を高める一方で雇用の安定と作品の真正性への懸念があるとされ、現地語・現地文脈に合わせたAIモデルの開発、AIの違法利用・バイアス・データ調達への対策、創造産業の完全性を守る政策枠組みの採択が政府への要請として記録された [1]
  • 議会創造芸術フォーラム議長のマゴーラ議員(自身も著名歌手)は「中澤の作品はあまりに容易にアクセスされるのに、放送局の適切な監視制度がなく、得られるはずの収入を得られていない」と著作権執行の穴を証言した [1]

3. ハイレベルパネル — AI規制・雇用・デジタル格差

取り上げたセッション: ハイレベルパネル「The Internet We Want — Empowering Ugandans」(Enabel・ウガンダクリスチャン大・NITA-U・ICT省・ISOCアフリカ。司会はISOCウガンダ支部ムパイルウェ会長)

  • AIには正負両面があり個人と国家の安全のための規制が必要だとの認識で一致。政府は「AIを研究中で、ウガンダが取り残されないための施策を既に講じている」と説明し、学界は政策のたたき台づくりに関与する姿勢を示した [1]
  • 雇用の自動化が進むなかで人間の雇用とAIの調和が課題とされ、スマホを買えない層の存在を踏まえ「技術を脅威ではなく機会と見てもらう啓発」が格差解消の前提として強調された [1]
  • Enabelのファンネステ代表は「AIは人生のあらゆる場面で必要なときに併走してくれるコパイロットだ。学校に『コンピュータ博物館』を作ってしまっていることがウガンダのICTの質を損ねている」と、教育現場の機材の陳腐化を批判した [1]

4. 女性と少女のデジタル権利 — プロジェクト発足とイノベーションハブ

取り上げたセッション: プロジェクト・ローンチおよびセッション「Innovation Hubs as Centers of Excellence」(WOUGNET・Hive Colab・Enabel・警察CCTV運用担当。司会はEnabelのモーゼス・オウィニ氏)

  • Enabelウガンダ代表とICT省次官代理が「女性と少女のデジタル権利」プロジェクトを会場で正式発足させ、ICTの開発と利用への女性・少女の包摂を目標に掲げた。Pollicyはデータリスクを学ぶカードゲーム「Where is my Data」を披露した [1]
  • セッションでは、包摂を阻む構造的・社会的障壁(政策や規範)への対処、女性と少女に安全なデジタル空間の設計、オンライン犯罪の多くが「使える法的手段を知らない」ことに起因するとして法制度リテラシーの強化が提言された。「デジタル権利とはデジタル領域における人権であり、表現の自由は堅持されるべきだ」と総括された [1]

3分ショートトーク — よくある疑問に答えます

Q. 何が決まった会議なの?

A. 決定機関ではありませんが、2つの具体的なローンチがありました。女性と少女のデジタル権利プロジェクト(Enabel・ICT省)と、データリスク教育カードゲームです。加えて「現地語対応のAIモデル開発」「創造産業を守る政策枠組み」という政府への要請が記録されました。

Q. 一番面白いセッションは?

A. AIと創造経済です。映画監督が「アフリカの未開拓の物語をAIで作品化し世界にライセンスする」構想を語る一方、国会議員兼歌手が「放送局の監視制度がなく印税を取りはぐれている」と著作権の穴を証言する、夢と実務が同居する議論でした。

Q. 日本に関係ある?

A. 生成AI元年に「使う側・作る側」の目線でAIを論じた早い国内対話です。ChatGPTとMidjourneyを併用する音楽家の実践や、ローカル言語AIの要求は、日本のクリエイター経済とAI著作権論議の鏡像として読めます。

Uganda IGF ってどんな会議?(はじめての方へ)

Uganda IGF 2023 カンパラ — Uganda IGFの位置づけ

Uganda IGFは、地域・国レベルでインターネットガバナンスを議論するIGFイニシアティブのひとつです。

日本の私たちへの影響

この大会の議論は、数年内に日本のデジタル政策・プラットフォームのルール・AI規制に反映 されていきます。2023年大会で確認された方針は、あなたが毎日使うスマホ・SNS・AIサービスの「次のルール」の土台です。

出典・参考資料

  1. UGANDA INTERNET GOVERNANCE 2023 REPORT(公式報告書: 2023-08-24・Sheraton Hotel Kampala・123名〈44F/79M〉・基調講演/ハイレベルパネル/2セッション・ローンチ2件・実名引用) — UIGF / Internet Society Uganda Chapter(参照: 2026-07-23)
  2. Uganda Internet Governance Forum(ISOC財団助成記録: 2023-08-24・ISOC Uganda Chapter・助成 US$3,500) — Internet Society Foundation(参照: 2026-07-23)
  3. Past UIGF Events(公式一覧: 2023 UIGF〈13th Edition〉— 24 August 2023・テーマ) — Uganda Internet Governance Forum(uigf.ug)(参照: 2026-07-23)
  4. Uganda Internet Governance Forums(系列公式ページ: 「since 2006」) — Internet Society Uganda Chapter(参照: 2026-07-23)

※ 記事中の [数字] は出典番号を示します。


関連リンク

更新履歴

第1稿投稿 2026年8月12日 21時13分(記事コンテンツアップ)

— 中澤祐樹