3行まとめ
- 2018年、日本インターネットガバナンス会議(IGCJ)は東京で4回の会合を開き、3月にはJAIPA主催「IGF-Japan 2018」も開催。GDPR施行と海賊版サイトブロッキング問題という二つの嵐に向き合った年でした。
- 政府の緊急対策に端を発したDNSブロッキング論争では、「通信の秘密」を軸に法・技術両面の問題点が議論され、9月にはIGCJのサイトで賛同者連名の意見書が公開されました。
- 「実効的な対策」と「通信の自由」の緊張関係——今日のプラットフォーム規制論議の原型が、この年の日本で凝縮して現れました。
こんにちは、中澤です。この記事は 日本インターネットガバナンス会議(IGCJ)2018年会合 を、公式発表・議事録・現地報道にあたって整理した詳報です。忙しい方は上の3行まとめと図解だけでも骨子がつかめます。
大会の基本情報(公式発表より)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | 日本インターネットガバナンス会議(IGCJ)2018年会合 |
| 会期 | 2018-02-13 〜 2018-11-29 |
| 会場 | JPNIC会議室(東京・神田)ほか(ヒューリックカンファレンス〔Internet Week 2018〕) |
| テーマ | 地域の共通課題 |
| 主催 | 日本インターネットガバナンス会議(IGCJ、事務局: JPNIC) |
| 成果文書 | 「海賊版サイトに対するDNSブロッキングに関する意見書」(2018年9月、IGCJサイトで賛同者連名版を公開) |
(出典: 文末の出典一覧を参照)
ディスカッション・ダイジェスト(議事録より)
現地の議事録・セッション記録から、議論の核心部分を抜粋・翻訳してお届けします。
1. 海賊版サイトブロッキング — 通信の秘密をめぐる正面衝突
取り上げたセッション: 第25回会合(8月28日)「インターネット上の海賊版対策に関する検討会議の情報共有」ほか、2018年4月〜10月の一連の動き
「宛先も通信の秘密の範囲。ルーティングは通信事業者の正当業務として認められるが、ブロッキングは認められない」
— 森亮二(弁護士。2018年4月18日、JAIPA共催の緊急シンポジウムにて) [3][5][7][8]
- 2018年4月の政府による海賊版サイト緊急対策(ブロッキング要請)を受け、JAIPAが共催した緊急シンポジウムでは弁護士や事業者・消費者団体が法的根拠の不在と副作用を指摘しました [3][5][7][8]
- IGCJ第25回では、JPNICの前村昌紀氏が知財本部「インターネット上の海賊版対策に関する検討会議」の状況をコミュニティに共有しました [3][5][7][8]
- 9月にはIGCJのウェブサイトで「海賊版サイトに対するDNSブロッキングに関する意見書」が賛同者を連ねて公開され、技術コミュニティとしての意思表示が行われました [3][5][7][8]
2. GDPR施行 — 越境データとWHOISの再設計
取り上げたセッション: 第24回会合(5月25日)「GDPR施行に向けた日本の状況」/第25回会合(8月28日)
- EU一般データ保護規則(GDPR)の適用開始と同じ5月25日に開かれた第24回では、個人情報保護委員会事務局の小川久仁子氏が個人データ越境移転の制度を解説しました [2][3]
- ICANN理事でもあるJPNICの前村昌紀氏が、ドメイン名登録者情報(WHOIS)のGDPR対応という世界的難題を報告し、野村総合研究所/京都大学の横澤誠氏やヤフーの望月健太氏がステークホルダーの取り組みを紹介しました [2][3]
- 第25回では立教大学の早川吉尚教授が「The Hague Global Principles」とGDPRを国際私法の視点から論じました [2][3]
3. IGF-Japan 2018 — 「インターネット・ガバナンスの新潮流」
取り上げたセッション: IGF-Japan 2018(3月22日、お茶の水ソラシティカンファレンスセンター。主催: JAIPA)
- IGF 2017(ジュネーブ)で浮上したAI・IoT・ビッグデータ・データ保護・シェアリングエコノミーといった新領域の議論動向を報告しました [6]
- 諸外国のネット中立性政策の動向と日本の展望、そして「日本におけるインターネットガバナンスの今後」を議論しました [6]
- 案内には「マルチステークホルダーによるオープンなインターネット・ガバナンスの取り組みを深化させる」ことが掲げられ、2010年から続くJAIPA系フォーラムの一つの到達点となりました [6]
4. サイバー空間の規範と烏鎮からの視点 — IW2018での総括
取り上げたセッション: 第26回会合(11月29日、Internet Week 2018内)
- 総務省国際経済課の佐々木将宣氏が、国際場裡で進む「サイバー空間の規範」づくりの議論を解説しました [4]
- JPNICの前村昌紀氏が中国・世界インターネット大会(烏鎮サミット)の概要を、JPRSの堀田博文氏がIGF 2018(パリ)の概要を報告し、多極化するガバナンス議論を一望しました [4]
3分ショートトーク — よくある疑問に答えます
Q. ブロッキング問題って結局どうなったの?
A. 政府の検討会議は意見の対立が解けず取りまとめに至らず、法制化はいったん見送られました。この年の議論で「通信の秘密」の重みが広く共有され、以後の海賊版対策は正規版の充実や広告抑制などブロッキング以外の手段が中心になっていきます。
Q. GDPRの話は日本の会合で何を議論したの?
A. 施行当日に、日本企業がEUの個人データをどう扱えばよいか、そして誰でも見られたドメイン登録者情報(WHOIS)をどう作り直すかという実務直結の課題を、規制当局の担当者と同じ部屋で議論しました。
Q. 自分に関係ある?
A. 大いにあります。ブロッキング論争は「見られるサイトを誰が決めるのか」という通信の自由の問題そのものですし、GDPRはあなたの個人データが国境を越えるときの守られ方を決めたルールです。
Japan IGF ってどんな会議?(はじめての方へ)
Japan IGFは、地域・国レベルでインターネットガバナンスを議論するIGFイニシアティブのひとつです。
日本の私たちへの影響
この大会の議論は、数年内に日本のデジタル政策・プラットフォームのルール・AI規制に反映 されていきます。2018年大会で確認された方針は、あなたが毎日使うスマホ・SNS・AIサービスの「次のルール」の土台です。
出典・参考資料
- 日本インターネットガバナンス会議(IGCJ)ミーティング一覧 — 日本インターネットガバナンス会議(IGCJ)(参照: 2026-07-11)
- 第24回日本インターネットガバナンス会議(2018年5月25日)プログラム・資料 — 日本インターネットガバナンス会議(IGCJ)(参照: 2026-07-11)
- 第25回日本インターネットガバナンス会議(2018年8月28日)プログラム・資料 — 日本インターネットガバナンス会議(IGCJ)(参照: 2026-07-11)
- 第26回日本インターネットガバナンス会議(2018年11月29日、Internet Week 2018内)プログラム・資料 — 日本インターネットガバナンス会議(IGCJ)(参照: 2026-07-11)
- 海賊版サイトに対するDNSブロッキングに関する意見書(PDF、賛同者連名版) — 日本インターネットガバナンス会議(IGCJ)(参照: 2026-07-11)
- IGF-Japan 2018 開催のご案内 — 一般社団法人日本インターネットプロバイダー協会(JAIPA)(参照: 2026-07-11)
- 海賊版サイトのブロッキングはなぜ無理筋なのか? 反対派の市民団体やISP業界団体が緊急シンポジウム開催 — INTERNET Watch(インプレス)(参照: 2026-07-11)
- IGCJ お知らせ一覧(2018年9月12日 意見書公開の告知を含む) — 日本インターネットガバナンス会議(IGCJ)(参照: 2026-07-11)
※ 記事中の [数字] は出典番号を示します。
関連リンク
- IGF公式(リージョナル/ナショナル一覧): https://www.intgovforum.org/en/content/national-and-regional-igf-initiatives
- 日本IGF: https://japanigf.jp/
- 参考:中澤祐樹ブログ https://nkzw.jp/category/igf/
更新履歴
第1稿投稿 2018年10月31日 14:00(記事コンテンツアップ)
第2稿更新 2026年7月16日 20:09(詳報版へ全面改稿:3行まとめ・議事録ダイジェスト・3分ショートトーク・出典一覧・図解を追加(引用は出典実在のもののみ収録))
— 中澤祐樹

