3行まとめ
- 2023年7月7日、第12回韓国インターネットガバナンスフォーラム(KrIGF 2023)がソウルのフランシスコ教育会館でハイブリッド開催され、「Change Up インターネット! 信頼できるAIガバナンス」を掲げてAI・サイバーセキュリティ・ガバナンスの3トラック12セッションが行われました。
- ChatGPT登場後初の開催として、生成AIの学習データと著作権・創作者保護が正面から議論されたほか、.krドメイン政策、国連サイバー犯罪条約、気候危機とインターネットまで議題が広がりました。
- AI学習と著作権の緊張は日本でも著作権法30条の4をめぐり続く論争です。創作者・業界・規制当局を同席させた韓国の議論の組み立ては、日本の関係者に直接参考になります。
こんにちは、中澤です。この記事は 第12回 韓国インターネットガバナンスフォーラム(KrIGF 2023) を、公式発表・議事録・現地報道にあたって整理した詳報です。忙しい方は上の3行まとめと図解だけでも骨子がつかめます。
大会の基本情報(公式発表より)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | 第12回 韓国インターネットガバナンスフォーラム(KrIGF 2023) |
| 回次 | 第12回 |
| 会期 | 2023-07-07 |
| 会場 | フランシスコ教育会館(ソウル・西大門駅付近)、Zoomによるオンライン参加併用(09:40〜18:00) |
| テーマ | Change Up インターネット! 信頼できるAIガバナンス(체인지 업 인터넷! 신뢰할 수 있는 인공지능 거버넌스) |
| セッション数 | 12 |
| 主催 | 韓国インターネット振興院(KISA、イ・ウォンテ院長)、科学技術情報通信部、多者間インターネットガバナンス協議会(KIGA、イ・ドンマン議長)など計14の機関・団体・企業が共同開催 |
(出典: 文末の出典一覧を参照)
ディスカッション・ダイジェスト(議事録より)
現地の議事録・セッション記録から、議論の核心部分を抜粋・翻訳してお届けします。
1. 生成AIと著作権 — 学習データと創作者保護
取り上げたセッション: セッション7「AI学習データの著作権と創作者保護、どうするか」(司会:オ・ビョンイル進歩ネットワークセンター代表)
- ChatGPT登場後初のKrIGFで、生成AIが文化創作に与える影響、学習目的での著作物利用の適法性、「作風」の保護、AI生成物の権利帰属が議論されました [3]
- ウェブトゥーン(韓国発のWeb漫画)作家労組の代表ら創作現場の当事者が、業界・学界・韓国著作権委員会と同じパネルに着いたのが特徴です [3]
2. 国家ドメイン(.kr)政策 — or.krの登録資格からWHOISまで
取り上げたセッション: セッション2「国家ドメイン政策イシューの共有と発展方向の討議」(司会:ユン・ボクナム弁護士、発表:亜洲大学カン・ギョンラン教授、進歩ネットワークセンター オ・ビョンイル代表)
- 非営利ドメインor.krの登録資格制限の緩和、地域ドメインの短縮化(daegu.kr→dg.krなど)、公共2段階ドメインの新設、WHOIS検索の個人情報保護という4つの論点を討議しました [4]
- .aiなど話題性のあるドメインの登録が伸びる一方で.kr登録が停滞していることへの危機感が背景にあり、KISA担当者も討論に参加しました [4]
3. 広がる議題 — 国連サイバー犯罪条約から気候危機まで
取り上げたセッション: セッション11「サイバー犯罪の国際的規制:国連条約交渉を中心に」、セッション12「炭素中立と気候危機対応のためのインターネットガバナンス」
- 交渉が大詰めを迎えていた国連サイバー犯罪条約を主題に、国際的な犯罪規制の方向性を議論するセッションが置かれました [5]
- 炭素中立と気候危機への対応をインターネットガバナンスの課題として扱うセッションも設けられ、議題の幅がデジタル政策の外縁まで広がりました [5]
4. Youthセッション — 若者が議題を作るフォーラムへ
取り上げたセッション: Youthセッション4本(データ主権、サイバー安保ガバナンスモデル、GPAIと韓国の対応、インターネットガバナンスにおける青年の役割)
「多様な利害関係者の積極的な参加が極めて重要だ(韓国語発言の翻訳)」
— パク・ジョンソプ(KISAデジタルインフラ部長) [1][2]
- 12セッションのうち4本を若者提案の「Youthセッション」が占め、望ましいデータ主権モデルやAIガバナンス(GPAI)への韓国の対応などを若手が主導して議論しました [1][2]
- アジア太平洋の若手育成プログラム出身者が提案・運営に関わる仕組みが定着し、次世代の担い手育成がフォーラムの柱になっています [1][2]
3分ショートトーク — よくある疑問に答えます
Q. 2023年の目玉は?
A. 生成AIです。ChatGPT登場後初の開催で、テーマ自体が「信頼できるAIガバナンス」。AIに作品を学習される側のウェブトゥーン作家組合が、業界や著作権委員会と同じテーブルで議論したのが象徴的でした。
Q. 一番モメた点は?
A. AI学習と著作権の線引きです。学習目的なら著作物を自由に使ってよいのか、「作風」は保護されるのか、AI生成物の権利は誰のものか——結論の出ない緊張がそのまま議題になりました。
Q. 日本に関係ある?
A. 大いにあります。日本でも著作権法30条の4をめぐって同じ論争が続いています。創作者・AI事業者・規制当局を同席させる韓国の議論設計は、日本のAIと著作権の議論にも応用できます。
Korea IGF ってどんな会議?(はじめての方へ)
Korea IGFは、地域・国レベルでインターネットガバナンスを議論するIGFイニシアティブのひとつです。
日本の私たちへの影響
この大会の議論は、数年内に日本のデジタル政策・プラットフォームのルール・AI規制に反映 されていきます。2023年大会で確認された方針は、あなたが毎日使うスマホ・SNS・AIサービスの「次のルール」の土台です。
出典・参考資料
- 2023년 제12회 한국인터넷거버넌스포럼(KrIGF) 개최(KISAプレスリリース) — 韓国インターネット振興院(KISA)(参照: 2026-07-11)
- 2023년 제12회 한국인터넷거버넌스포럼(KrIGF) 개최(第12回KrIGF開催) — 데일리시큐(Daily Secu)(参照: 2026-07-11)
- [세션7] 인공지능 학습 데이터의 저작권과 창작자 보호, 어떻게 할 것인가?(AI学習データの著作権と創作者保護) — KrIGF事務局(韓国インターネットガバナンスフォーラム公式サイト)(参照: 2026-07-11)
- [세션2] 국가도메인 정책이슈 공유 및 발전방향 토의(国家ドメイン政策イシューの共有と発展方向討議) — KrIGF事務局(韓国インターネットガバナンスフォーラム公式サイト)(参照: 2026-07-11)
- 2023 한국인터넷거버넌스포럼(KrIGF) 국문보고서/영문보고서(公式報告書・韓国語/英語) — KrIGF事務局(韓国インターネットガバナンスフォーラム公式サイト)(参照: 2026-07-11)
※ 記事中の [数字] は出典番号を示します。
関連リンク
- IGF公式(リージョナル/ナショナル一覧): https://www.intgovforum.org/en/content/national-and-regional-igf-initiatives
- 日本IGF: https://japanigf.jp/
- 参考:中澤祐樹ブログ https://nkzw.jp/category/igf/
更新履歴
第1稿投稿 2023年7月7日 16:00(記事コンテンツアップ)
第2稿更新 2026年7月16日 20:09(詳報版へ全面改稿:3行まとめ・議事録ダイジェスト・3分ショートトーク・出典一覧・図解を追加(引用は出典実在のもののみ収録))
— 中澤祐樹
