3行まとめ
- 2024年12月15〜19日、サウジアラビア・リヤドのキング・アブドルアジーズ国際会議センターで第19回IGFが開催。300超のセッションに1万1,000人以上が参加する過去最大規模となり、「マルチステークホルダーによるデジタルの未来をともに築く」をテーマに議論しました。
- 同年9月に国連で採択されたグローバル・デジタル・コンパクト(GDC)後初のIGFとして、GDCの実施、AIガバナンス、デジタル格差が主要議題に。成果は「リヤドIGFメッセージ」にまとめられ、翌2025年のWSIS+20見直しへの布石となりました。
- 一方、オンライン上の発言を理由に市民を長期投獄してきた開催国サウジアラビアに対し40の人権団体が抗議し、会議後には人権セッションの記録が編集される問題も発覚。国連の対話の場の理想と現実を突きつけた大会で、AI格差や接続コストの論点は日本の政策議論にも直結します。
こんにちは、中澤です。この記事は グローバルIGF 2024年 リヤド大会 を、公式発表・議事録・現地報道にあたって整理した詳報です。忙しい方は上の3行まとめと図解だけでも骨子がつかめます。
大会の基本情報(公式発表より)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 回次 | 第19回IGF |
| 会期 | 2024-12-15 〜 2024-12-19 |
| 会場 | キング・アブドルアジーズ国際会議センター(リヤド) |
| テーマ | Building our Multistakeholder Digital Future(マルチステークホルダーによるデジタル未来の構築) |
| 参加者 | 11,000人以上(対面・オンライン合計、過去最大) |
| セッション数 | 300以上 |
| 主催 | サウジアラビア王国政府と国連 |
| 成果文書 | リヤドIGFメッセージ(Riyadh IGF Messages) |
| 開催の文脈 | グローバル・デジタル・コンパクト(2024年9月採択)後初のIGF。翌2025年にWSIS+20見直しを控える |
(出典: 文末の出典一覧を参照)
ディスカッション・ダイジェスト(議事録より)
現地の議事録・セッション記録から、議論の核心部分を抜粋・翻訳してお届けします。
1. グローバル・デジタル・コンパクト採択後初のIGF — 「青写真」を実行へ
取り上げたセッション: 開会式(グテーレス国連事務総長はビデオメッセージで登壇)
「デジタル技術は人類に仕えるべきであり、その逆であってはならない」
— アントニオ・グテーレス(国連事務総長) [1][2][4]
- グテーレス事務総長はGDCを「人類のデジタルの未来の青写真」と呼び、その実施に向けたガードレールと協調的なガバナンスを呼びかけた [1][2][4]
- GDCがIGFを「インターネットガバナンス問題を議論する主要なマルチステークホルダー・プラットフォーム」と明記した直後の大会として、GDCの約束を各国の政策にどう落とし込むかが繰り返し議論された [1][2][4]
- GDCとWSIS(世界情報社会サミット)の既存枠組みをどう整合させるか——重複を避け相互補完させる道筋が主要論点になった [1][2][4]
2. AIガバナンス — 「あれば良いもの」ではない
取り上げたセッション: AI関連セッション(30超)とハイレベルセッション
- 「AIのガバナンスは『あれば良いもの』ではない」——リヤドIGFメッセージは規制の断片化に警鐘を鳴らし、リスク適応型の枠組みとグローバルサウスの包摂を求めた [4][8][2]
- サウジのアブドラ・アルスワハ通信・IT相は「デジタル格差・ジェンダー格差・AI格差」の解消を訴え、計算資源・データ・アルゴリズムの格差に対応するAIガバナンスモデルの必要性を強調した [4][8][2]
- IGFとして初めて自律型兵器システム(AWS)が本格的に取り上げられ、AI議論が経済・倫理から安全保障へ広がった [4][8][2]
3. 開催国の人権 — 40団体の抗議と国連による記録の「編集」
取り上げたセッション: ワークショップ「国連サイバー犯罪条約と国境を越える弾圧」(ヒューマン・ライツ・ウォッチ、ALQST共催)ほか会場内外
「これらの法律は、平和的な活動と言論の自由を狙い撃ちするために日常的に使われています」
— リナ・アル=ハズルール(ALQST) [6][7]
- 開催前の2024年9月、アムネスティなど40の人権団体が共同声明を発表。ツイートを理由に禁錮27年を科されたサルマ・アル=シェハブさん、女性の権利をSNSで発信し禁錮11年のマナヘル・アル=オタイビさんらの釈放を求め、「オンラインの批判者を投獄しながらインターネットの未来を語る会議を主催するのは深い偽善」と批判した [6][7]
- 会議後、IGF事務局が人権ワークショップの動画と書き起こしを削除し、サウジの人権擁護者への言及を除いた編集版を再公開していたことが2025年2月にHRWの調べで発覚。HRWのデボラ・ブラウン副局長は国連に「威圧と検閲の空気に終止符を打つ」よう求めた [6][7]
- 会期中もHRW研究員が入場証剥奪を警告され、アムネスティのブースから資料が没収されるなど、市民社会の萎縮が現実になった [6][7]
4. デジタル格差 — 「人類の3分の1はオフライン」
取り上げたセッション: 開会式および接続性関連セッション
「今日、人類の3分の1はオフラインのままです」
— ドリーン・ボグダン=マーティン(ITU事務総局長) [4][8]
「モバイルインターネットの料金は、アフリカでは欧州の14倍です」
— ドリーン・ボグダン=マーティン(ITU事務総局長) [4][8]
- リヤドIGFメッセージは「インターネット接続のコストが依然として最大の障壁の一つ」と指摘し、手頃な料金の接続・端末とデジタルリテラシーの普及を勧告した [4][8]
- 接続そのものだけでなく「意味のあるアクセス」——使える言語・スキル・地域コンテンツまで含めた包摂が繰り返し論点になった [4][8]
5. IGFの将来とWSIS+20 — マンデート更新前夜の攻防
取り上げたセッション: 閉会式およびWSIS+20関連セッション
「IGFは、目に見える成果を出せるよう進化しなければならない」
— ヴィント・サーフ(IGFリーダーシップパネル議長) [5][8][2]
- IGFのマンデート(当時2025年まで)の更新を翌年のWSIS+20見直しで決めることを前に、恒久化・安定財源・成果の可視化が閉会式の中心論点になった [5][8][2]
- 300超のセッションの議論は「リヤドIGFメッセージ」として集約され、デジタルガバナンス・オンラインの人権・イノベーションに関する行動志向の政策提言がWSIS+20プロセスへ引き継がれた [5][8][2]
- 次期開催国ノルウェーが発表され、20周年のオスロ大会(2025年6月)へバトンが渡された [5][8][2]
3分ショートトーク — よくある疑問に答えます
Q. そもそも何が決まった会議なの?
A. IGFは何かを「決める」場ではなく、政府・企業・市民社会が対等に話す国連の対話フォーラムです。ただ今回は、9月に採択されたばかりのグローバル・デジタル・コンパクトを「どう実行するか」を世界で初めて大規模に話し合い、議論の要点は「リヤドIGFメッセージ」として翌年のWSIS+20見直しに引き継がれました。
Q. 一番モメた点は?
A. 開催地そのものです。サウジアラビアはツイートを理由に禁錮27年といった判決を出してきた国で、40の人権団体が「深い偽善だ」と抗議しました。さらに会議後、人権セッションの動画や記録が国連側で編集されていたことが発覚し、批判が再燃しました。
Q. 自分に関係ある?
A. あります。ここで確認された「AI格差を放置しない」「接続コストを下げる」という方針は、日本のAI政策や通信料金の議論にもつながる国際的な共通言語になっていきます。また、IGF存続の是非がこの直後のWSIS+20で決まるという意味でも、分岐点となった大会です。
グローバルIGF ってどんな会議?(はじめての方へ)
グローバルIGFは、国連の下で2006年から毎年開かれている、インターネットに関わる世界中の人が立場を超えて話し合う国際会議です(マルチステークホルダー方式)。
日本の私たちへの影響
この大会の議論は、数年内に日本のデジタル政策・プラットフォームのルール・AI規制に反映 されていきます。2024年大会で確認された方針は、あなたが毎日使うスマホ・SNS・AIサービスの「次のルール」の土台です。
出典・参考資料
- IGF 2024 Outputs — 国連IGF事務局 (UN IGF Secretariat)(参照: 2026-07-10)
- Era of AI: Internet Governance Forum closes with call for stronger multistakeholder action to harness digital promise and tackle threats — 国連 (United Nations, press release)(参照: 2026-07-10)
- Internet Governance Forum 2024 — session reports — Digital Watch Observatory (DiploFoundation)(参照: 2026-07-10)
- IGF 2024 Opening Ceremony — Digital Watch Observatory (DiploFoundation)(参照: 2026-07-10)
- IGF 2024 closing ceremony: Shaping the future of internet governance — Digital Watch Observatory (DiploFoundation)(参照: 2026-07-10)
- Saudi Arabia: Authorities hosting Internet Governance Forum while imprisoning online critics exposes deep hypocrisy — アムネスティ・インターナショナル (Amnesty International)(参照: 2026-07-10)
- UN Censors Criticism of Saudi Arabia at Internet Conference — ヒューマン・ライツ・ウォッチ (Human Rights Watch)(参照: 2026-07-10)
- IGF 2024 in Riyadh: AI, WSIS+20 and the Global South(Wolfgang Kleinwächter) — CircleID(参照: 2026-07-10)
※ 記事中の [数字] は出典番号を示します。
関連リンク
- IGF公式(リージョナル/ナショナル一覧): https://www.intgovforum.org/en/content/national-and-regional-igf-initiatives
- 日本IGF: https://japanigf.jp/
- 参考:中澤祐樹ブログ https://nkzw.jp/category/igf/
更新履歴
第1稿投稿 2024年12月15日 15:00(記事コンテンツアップ)
第2稿更新 2026年7月10日 14:28(詳報版へ全面改稿:3行まとめ・議事録ダイジェスト・3分ショートトーク・出典一覧・図解を追加(引用は出典実在のもののみ収録))
— 中澤祐樹

