こんにちは、中澤です。
突然ですが、あなたがこの記事を読めているのは 海の底 のおかげ、って知ってましたか? 日本からYouTubeやInstagramを使うとき、そのデータは衛星ではなく、海底に敷かれた何千kmものケーブル を通って世界を行き来しています。IGF 2025では、この「見えないインフラ」をどう守るかが真剣に議論されました。
会場の雰囲気(公式写真より)
海底ケーブルって何? 衛星じゃダメなの?
世界のインターネット通信のうち、なんと約99%が海底ケーブルを通っています。衛星は全体のわずか1%程度。衛星は遅くて細い "抜け道" にすぎず、普段使うZoomやNetflixはほぼ海底ケーブル頼りです。
海底ケーブルは、髪の毛より細い光ファイバーを束ねて、太さ数cmほどのケーブルに加工したもの。これを特殊な船で 海底にそっと敷設 します。一本あたり1万kmを超えるものも珍しくありません。
どうしてIGFの話題になったの?
2024年から2025年にかけて、海底ケーブルの切断事件が世界各地で相次ぎました。
- バルト海で複数回の切断(船の錨が原因とも、意図的な妨害とも)
- 紅海でのケーブル損傷(中東情勢の影響)
- 台湾近海での切断(漁船の偶発事故と発表)
それぞれ "事故か妨害か" の判断が難しく、1本切れても復旧に数週間かかる。国によってはインターネットが実質停止してしまう事態も起きました。だから「世界で協力して守る仕組み」が緊急課題になったのです。
IGF 2025 で話し合われた3つの対策
セッションでは、大きく 「技術」「ルール」「国際協力」 の3軸で対策が議論されました。
- 技術対策 — ケーブルを複数ルート化し、1本切れても迂回できるようにする/センサーで異常検知する
- ルール整備 — 切断事故の報告義務、敷設海域での航行制限、復旧作業の優先権の確保
- 国際協力 — 事故発生時に修理船を国境を越えて派遣できる枠組みづくり
とくに 「民間事業者と政府の連携」 が大きなテーマに。ケーブルの多くはGAFAなど民間企業が所有しており、政府だけでは守れない構造になっています。
民間 vs 公共 — PPPへの懸念
海底ケーブルは最近、Google・Meta・Amazonなどの大手IT企業が次々と自前で敷設しています。これは PPP(公共と民間のパートナーシップ) を促進するとされ便利な面もありますが、IGF 2025では懸念の声も目立ちました。
- 「重要インフラを民間に任せすぎると、公共の利益より企業の戦略が優先されるのでは?」
- 「途上国が大手IT企業に依存する構図が固定化しないか?」
- 「修理や使用のルールが企業ごとにバラバラで、国が口を出しにくい」
この "公共性 vs 民間効率" の綱引きは、今後のインターネットガバナンスの大きな軸になりそうです。
日本で私たちにできること
「海底ケーブルなんて遠い世界の話」と思いがちですが、日本は 島国で海底ケーブル依存度が特に高い国。災害時や国際緊張時には、ネットがつながりにくくなるリスクが他国より大きいのです。
個人としてできるのは、①通信障害時に備えて複数の連絡手段を持つ、②議論を知って「国内の海底ケーブル保護法制」の動きに関心を持つ、③日本IGFなどで自分の懸念を発信する、の3つです。
まとめ
海底ケーブルは、普段はまったく意識しないけれど、切れた瞬間に生活が止まる 重要インフラ。IGF 2025は、ここに世界の目を集めた大事な場でした。次の記事では、同じくIGF 2025で議論された「ユース(若者)の参加」について紹介します。
関連リンク
- IGF 2025 Submarine Cable Session: https://www.intgovforum.org/en/content/igf-2025-sessions
- ICPC (International Cable Protection Committee): https://www.iscpc.org/
- 日本IGF: https://japanigf.jp/
- 参考:中澤祐樹ブログ https://nkzw.jp/category/igf/
更新履歴
第1稿投稿 2026年4月28日 14時33分(記事コンテンツアップ)
— 中澤祐樹

