3行まとめ
- 2024年11月7〜8日、第17回LACIGF(中南米・カリブ地域IGF)がチリ・サンティアゴのテレフォニカビルで開催。現地260人超・Zoom350人超が参加し、22セッションで議論しました。
- 新定款下で初めてテーマとセッションを公募し、ワークショップ選定委員会を設置。AI・人権・ジェンダー・環境と持続可能性などを議論し、成果メッセージは翌12月の国連IGFリヤド会合へ届けられました。
- 監視なき移住、ジェンダー暴力としての偽情報、パンアマゾニアの持続可能な接続——「地域の現実」から議題を立ち上げるボトムアップ型の運営は、地域IGFのモデルケースとして日本の読者にも参考になります。
こんにちは、中澤です。この記事は LACIGF(中南米・カリブ地域IGF) 2024年 サンティアゴ大会 を、公式発表・議事録・現地報道にあたって整理した詳報です。忙しい方は上の3行まとめと図解だけでも骨子がつかめます。
📍 カタログは「2024年・ドミニカ共和国・サントドミンゴ」とするが、公式記録では2024年の第17回LACIGFはチリ・サンティアゴで開催。2024年にサントドミンゴでのLACIGF開催は確認できない(ドミニカ共和国からはISOCドミニカ支部などがサンティアゴ大会に参加)。
大会の基本情報(公式発表より)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 回次 | 第17回(LACIGF 17) |
| 会期 | 2024-11-07 〜 2024-11-08 |
| 会場 | テレフォニカビル(チリ・サンティアゴ、プロビデンシア地区) |
| テーマ | 地域の共通課題 |
| 現地参加 | 260人超 |
| セッション数 | 22 |
| 主催 | 事務局コルノド(Colnodo)。現地はFundación Datos Protegidosを中心に、NIC Chile・チリ大学コンピュータ科学科・ISOCチリ支部・ACTI・Fundación Kamanau・Derechos Digitales・チリ外務省が協力 |
| 成果文書 | 主要メッセージと提案を2024年12月の国連IGFリヤド会合(サウジアラビア)へ提出 |
| 特記 | 新定款下で初めてテーマ公募・セッション公募・ワークショップ選定委員会(CST)を導入した大会 |
(出典: 文末の出典一覧を参照)
ディスカッション・ダイジェスト(議事録より)
現地の議事録・セッション記録から、議論の核心部分を抜粋・翻訳してお届けします。
1. ガバナンスの進化 — NetMundial+10後の地域対話とリヤドへの接続
取り上げたセッション: プレナリー「ガバナンスの進化(NRIs/NetMundial)」(11月7日 9:15–10:45)
「デジタル化は生活のあらゆる領域に組み込まれ、人権・安全・持続可能性にとって機会と課題の両方を生み出しています(スペイン語からの翻訳)」
— チェンゲタイ・マサンゴ(国連IGF事務局長) [1][2][3]
- 新定款に基づき、討議テーマの公募、ワークショップ選定委員会、セッション公募を初めて実施。コミュニティ主導の議題設定へと運営が転換した [1][2][3]
- フォーラムの主要メッセージと提案は2024年12月の国連IGFリヤド会合に持ち込まれ、中南米・カリブの声を世界の議論へ接続する経路が明示された [1][2][3]
2. 人権とジェンダー — 監視なき移住とデジタル暴力
取り上げたセッション: 並行セッション「監視なきデジタル移住」「女性とLGBTQIA+の安全なデジタル包摂」「ジェンダー暴力としての偽情報」(11月7日)
「今日、中澤は共通の目的のために集まりました。包摂的で、安全で、人権に資するインターネットを、ともに考え、議論し、築くためです(スペイン語からの翻訳)」
— ジェシカ・マトゥス(Fundación Datos Protegidos代表・現地主催者) [2][3][4]
- 移住プロセスにおけるデジタル監視と人権保護、女性・LGBTQIA+の人々の安全なデジタル包摂など、脆弱な立場に置かれた人々を主語にしたセッションが並んだ [2][3][4]
- 偽情報をジェンダーに基づく暴力の一形態として捉える視点や、セクスティング実践における保護戦略など、ジェンダーとテクノロジーの交差点が主要議題となった [2][3][4]
3. ユニバーサルアクセス — 提供モデルの「共存」という発想
取り上げたセッション: アクセス・接続関連セッションおよびネットワーク使用料(フェアシェア)円卓会議(11月7日)
「多様な接続提供モデルの共存を考え、提案しなければなりません。コミュニティ自身の運営力・創造力・提案力から生まれるモデルも含めてです(スペイン語からの翻訳)」
— オルガ・パス・マルティネス(Colnodo) [3][2]
「質の高い接続へのアクセスを普遍化し、持続可能なデジタルエコシステムに貢献するには、地域協力が鍵です(スペイン語からの翻訳)」
— パブロ・ガルシア・デ・カストロ(ASIET=米州通信事業者協会) [3][2]
- 大手事業者だけでなく、コミュニティネットワークなど住民自身が担う接続モデルも組み合わせる「共存」アプローチが市民社会側から提唱された [3][2]
- ネットワーク使用料(フェアシェア)をめぐる円卓会議も開かれ、通信網投資の費用負担のあり方が事業者・市民社会の間で争点となった [3][2]
4. AIの規制と倫理 — 地域からのイノベーションと権利保障
取り上げたセッション: プレナリー「人工知能」(11月8日 9:00–10:30)、並行セッション「ラテンアメリカにおけるAI」「AI倫理」ほか
- AI・新興技術と「倫理的・法的課題」がコミュニティ投票による選定テーマの上位に入り、プレナリーと複数の並行セッションで議論された [1][2]
- 米州機構の表現の自由特別報告者の視点によるコンテンツガバナンス、デジタル市場の規制、ユネスコのインターネット・ユニバーサリティ指標の評価など、AI時代のルール形成が幅広く扱われた [1][2]
5. 環境と持続可能性 — パンアマゾニアを接続する
取り上げたセッション: 並行セッション「持続可能な接続と社会環境正義:パンアマゾニアで持続可能な接続をどう進めるか」ほか(11月8日)
「ガバナンスがあるからこそ、中澤はこの集合的な夢を信じられます。生命を支える技術を築くという夢です(スペイン語からの翻訳)」
— リリアン・チャモロ(LACIGF事務局コーディネーター、Colnodo) [1][3]
- 「環境と持続可能性」がコミュニティ選定テーマの一角を占め、アマゾン流域の接続と社会環境正義を結びつけるセッションが行われた [1][3]
- 接続インフラの拡大と生態系・地域社会の保護をどう両立させるかという、豊かな自然資源を抱える地域ならではの問いが提起された [1][3]
3分ショートトーク — よくある疑問に答えます
Q. この会議で何が決まったの?
A. 決定機関ではありませんが、22セッションの議論が主要メッセージにまとめられ、翌月の国連IGFリヤド会合に「中南米・カリブの声」として提出されました。地域の議論が世界に届く経路がはっきり見えた大会です。
Q. 今回ならではの特徴は?
A. 議題を「上」が決めるのをやめたことです。討議テーマもセッションも公募し、新設のワークショップ選定委員会が選ぶ方式を初めて導入しました。ジェンダーと環境が主要議題に上がったのも、この公募の成果です。
Q. 日本に関係ある?
A. あります。偽情報対策、AI規制、そして通信網の費用を誰が負担するかという「フェアシェア」論争は日本でも進行中の議題そのものです。なお、カタログ上は「サントドミンゴ開催」とされますが、実際の開催地はチリ・サンティアゴでした。
LACIGF(中南米・カリブ地域IGF) ってどんな会議?(はじめての方へ)
LACIGF(中南米・カリブ地域IGF)は、地域・国レベルでインターネットガバナンスを議論するIGFイニシアティブのひとつです。
日本の私たちへの影響
この大会の議論は、数年内に日本のデジタル政策・プラットフォームのルール・AI規制に反映 されていきます。2024年大会で確認された方針は、あなたが毎日使うスマホ・SNS・AIサービスの「次のルール」の土台です。
出典・参考資料
- Balance y resultados del Foro de Gobernanza de Internet de América Latina y el Caribe 2024 — LACIGF(公式)(参照: 2026-07-10)
- LACIGF 17 — event page & agenda — LACIGF(公式イベントサイト)(参照: 2026-07-10)
- 17° Foro de Gobernanza de Internet de América Latina y el Caribe: Un espacio clave para el diálogo regional — Colnodo(LACIGF事務局・APC加盟)(参照: 2026-07-10)
- Foro de Gobernanza de Internet de América Latina y el Caribe (LACIGF) en Santiago, Chile — Fundación Datos Protegidos(現地主催・チリ市民社会)(参照: 2026-07-10)
- 17th Latin American and Caribbean Internet Governance Forum – LacIGF 2024(助成事業ページ) — Internet Society Foundation(参照: 2026-07-10)
- Foros anteriores(過去大会一覧) — LACIGF(公式)(参照: 2026-07-10)
※ 記事中の [数字] は出典番号を示します。
関連リンク
- IGF公式(リージョナル/ナショナル一覧): https://www.intgovforum.org/en/content/national-and-regional-igf-initiatives
- 日本IGF: https://japanigf.jp/
- 参考:中澤祐樹ブログ https://nkzw.jp/category/igf/
更新履歴
第1稿投稿 2024年8月8日 01:00(記事コンテンツアップ)
第2稿更新 2026年7月10日 14:28(詳報版へ全面改稿:3行まとめ・議事録ダイジェスト・3分ショートトーク・出典一覧・図解を追加(引用は出典実在のもののみ収録))
— 中澤祐樹

