AprIGF(アジア太平洋地域IGF) 2010 香港大会 詳報 — 議事録ダイジェストと3行まとめ

AprIGF 2010 香港 — サムネイル

3行まとめ

AprIGF 2010 香港 — 3行まとめ

  1. 2010年6月14〜18日、香港のサイバーポートでアジア太平洋初の地域IGF「AprIGF」が開催。ラウンドテーブル・香港IGF会議・ユースキャンプの3部構成に、20以上の国・地域から約400人が参加しました。
  2. サイバーセキュリティ、オープンなインターネット、デジタル格差、重要インターネット資源(IPv6移行)、多言語ドメイン名を議論。成果は同年9月の世界IGFビリニュス会合に提出され、提案した3ワークショップがすべて採択されました。
  3. 日本からはJPRSが協賛し、堀田博文氏や会津泉氏がセッションに登壇。アジアのネットガバナンス対話の出発点となり、以後毎年各都市を巡回する年次会合の枠組みがここで生まれました。

こんにちは、中澤です。この記事は AprIGF(アジア太平洋地域IGF) 2010年 香港大会 を、公式発表・議事録・現地報道にあたって整理した詳報です。忙しい方は上の3行まとめと図解だけでも骨子がつかめます。

大会の基本情報(公式発表より)

AprIGF 2010 香港 — 大会 基本情報

項目 内容
会期 2010-06-14 〜 2010-06-18(AprIGFラウンドテーブル 6/14-16、香港IGF会議 6/17-18。併設のユースIGFキャンプは 6/12-14)
会場 サイバーポート(香港)。ラウンドテーブルはCyberport 3・レベル3ファンクションルーム1〜3、ユースキャンプは西貢(サイクン)
テーマ 地域の共通課題
参加者 400(3イベント合計の推計ユニーク参加者数(主催者自己評価報告書)。内訳はラウンドテーブル約200人、香港IGF会議約250人、ユースIGFキャンプ51人(運営・海外ゲスト含め68人)。20以上の国・経済地域から参加)
意義 アジア太平洋地域で初めて開催された地域IGF(第1回AprIGF)。発足時からユース参加を組み込んだ点でも地域IGFとして初
主催 DotAsia機構が事務局。ホスト団体はAPNIC、APTLD、ISOC香港、香港社会服務聯会、香港青年協会、Freedom House、iProAなど。香港政府OGCIO(政府資訊科技総監弁公室)がアドバイザー・助成元
成果文書 成果と提言は世界IGF 2010ビリニュス会合(9月14〜17日)へ提出。提案した3つのワークショップがすべて世界IGFの議題に採択

(出典: 文末の出典一覧を参照)

ディスカッション・ダイジェスト(議事録より)

AprIGF 2010 香港 — 議論の見取り図

現地の議事録・セッション記録から、議論の核心部分を抜粋・翻訳してお届けします。

1. アジア太平洋初の地域IGF誕生 — 「ソフト・ガバナンス」をアジアへ

取り上げたセッション: 開会・「Introduction: Setting the Scene」セッション(6月15日 9:30–10:45、司会: Ang Peng Hwa 南洋理工大学教授)

「25もの国・経済地域からこれほど多くの皆さんを、この初のアジア太平洋地域IGFにお迎えできて嬉しく思います」
Jeremy Godfrey(香港政府CIO) [1][6]

「(IGFは)世論や意思決定を形づくることのできるソフト・ガバナンスのアプローチに基づいています」
Markus Kummer(IGF事務局長) [1][6]

  • 世界IGF発足5年目にして、アフリカ・欧州・中南米に続きようやくアジアに地域フォーラムが誕生 [1][6]
  • 2009年の世界IGFシャルム・エル・シェイク会合後、シンガポールのAng Peng Hwa氏と香港のEdmon Chung氏が提唱。Chung氏が帰国便の乗り継ぎ中に香港政府CIOを説得したのが開催の契機とされる [1][6]

2. 重要インターネット資源 — IPv4枯渇目前、IPv6移行を呼びかけ

取り上げたセッション: 「Managing Critical Internet Resources」(6月16日 9:30–11:00、司会: Paul Wilson APNIC事務局長)

「私たちアジア太平洋は世界で最もオンライン人口が多い地域であり、いまなお世界で最も速く成長し続けています」
Zhang Jian(APTLD) [4][1][2]

  • Paul Wilson氏が「ネットワークは今すぐIPv6導入の計画を始める必要がある」と訴え。APNIC・APTLD・JPRSなど資源管理団体が第1回から深く関与 [4][1][2]
  • ICANN理事長Peter Dengate Thrush氏やAPTLD議長Keith Davidson氏、auDA CEOのChris Disspain氏らドメイン名コミュニティの重鎮が香港に集結 [4][1][2]

3. オープンネスと市民社会 — 検閲と表現の自由をアジアの文脈で

取り上げたセッション: 「Openness: Challenges and Criticalness of an Open Internet Culture」(6月15日 14:00–15:30、司会: Robert Guerra/Freedom House)ほか「市民社会の役割」セッション(6月16日)

  • 国際人権NGOのFreedom Houseがホスト団体に名を連ね、タイの独立系ニュースサイト編集者Chiranuch Premchaiporn氏やフィリピン・中国のブロガーが登壇 [2]
  • 市民社会セッションでは中国のブロガーIsaac Mao氏、インドのParminder Jeet Singh氏、香港の立法会議員経験者Christine Loh氏らがアジアでの市民参加の道筋を議論 [2]

4. ユースIGFキャンプ — 発足時から若者が参加した世界初の地域IGF

取り上げたセッション: ユースIGFキャンプ(6月12〜14日、西貢)

  • 香港の中高生・大学生51人が2泊3日の合宿で政府・企業・NGO・保護者などの役を演じ、ネットの社会課題を交渉するロールプレイを実施 [3][5]
  • 成果は香港IGF会議で若者自身が報告。キャンプ出身の学生約8〜10人が9月の世界IGFビリニュス会合へ派遣された [3][5]
  • この形式は国際専門家から高く評価され、以後のAprIGF・世界IGFのユース参画モデルの原型になった [3][5]

5. これからの地域IGF — 参加者の99%が「また開くべき」

取り上げたセッション: 「The Way Forward: The Next Model of the IGF」(6月16日 16:00–17:30、司会: Cheryl Langdon-Orr ICANN ALAC議長)

  • 会期中のアンケート(約100人回答)で99%がAprIGFの再開催に賛成、90%が「AprIGFは重要」と回答。57%が開催都市の持ち回りに賛成し(42%は香港継続を希望)、翌年以降の巡回開催が方向づけられた [3][2]
  • Wolfgang Kleinwächter氏やPeter Dengate Thrush氏らが、初期5年のマンデートを終える世界IGFの次のモデルを議論 [3][2]

3分ショートトーク — よくある疑問に答えます

Q. そもそもAprIGFって何の集まり?

A. 国連の世界IGF(インターネット・ガバナンス・フォーラム)の地域版で、アジア太平洋の政府・企業・市民社会が対等に話し合う場です。2010年の香港がその記念すべき第1回で、ここでの議論が「アジアからの声」として世界IGFに届けられます。

Q. 第1回の一番の成果は?

A. 「アジアにも地域IGFを」という枠組みそのものを立ち上げたことです。参加者アンケートでは99%が継続開催に賛成し、翌2011年シンガポール、2012年東京へと毎年巡回する年次会合に育ちました。

Q. 日本に関係ある?

A. あります。日本からはJPRS(日本レジストリサービス)が協賛し、堀田博文氏や会津泉氏がドメイン名・多言語化のセッションに登壇。2012年には第3回AprIGFが東京で開催されることになります。

AprIGF(アジア太平洋地域IGF) ってどんな会議?(はじめての方へ)

AprIGF 2010 香港 — AprIGF(アジア太平洋地域IGF)の位置づけ

AprIGF(アジア太平洋地域IGF)は、地域・国レベルでインターネットガバナンスを議論するIGFイニシアティブのひとつです。

日本の私たちへの影響

この大会の議論は、数年内に日本のデジタル政策・プラットフォームのルール・AI規制に反映 されていきます。2010年大会で確認された方針は、あなたが毎日使うスマホ・SNS・AIサービスの「次のルール」の土台です。

出典・参考資料

  1. APrIGF Roundtable Transcript — 15 June 2010, Session 1 (Opening / Setting the Scene) — AprIGF事務局 (rigf.asia)(参照: 2026-07-10)
  2. Agenda & Transcripts — APrIGF Roundtable 2010 — AprIGF事務局 (rigf.asia)(参照: 2026-07-10)
  3. RIGF Project Self-Evaluation Report (Conference Report APrIGF 2010 Hong Kong) — DotAsia Organisation(AprIGF事務局)(参照: 2026-07-10)
  4. APNIC at inaugural Asia Pacific regional Internet Governance Forum — APNIC(参照: 2026-07-10)
  5. About APrIGF — 2010 APrIGF.Asia — AprIGF事務局 (rigf.asia)(参照: 2026-07-10)
  6. Asia Pacific Regional Internet Governance Forum (APrIGF) — Global Information Society Watch (APC)(参照: 2026-07-10)
  7. Events — APrIGF.Asia(歴代開催一覧) — AprIGF事務局(参照: 2026-07-10)

※ 記事中の [数字] は出典番号を示します。


関連リンク

更新履歴

第1稿投稿 2010年6月15日 09:00(記事コンテンツアップ)

第2稿更新 2026年7月10日 23:16(詳報版へ全面改稿:3行まとめ・議事録ダイジェスト・3分ショートトーク・出典一覧・図解を追加(引用は出典実在のもののみ収録))

— 中澤祐樹