カリブ地域IGF 2023 ポートオブスペイン大会 詳報 — 議事録ダイジェストと3行まとめ

Caribbean IGF 2023 ポートオブスペイン — サムネイル

3行まとめ

Caribbean IGF 2023 ポートオブスペイン — 3行まとめ

  1. 2023年8月22〜24日、第19回カリブ地域IGF(CIGF)と第2回カリブ・ユースIGFがトリニダード・トバゴのポートオブスペインを拠点にハイブリッド開催。両フォーラムで291人が登録し、「持続可能な開発に向けて進化するカリブのインターネットガバナンス優先課題」を議論しました。
  2. AIガバナンスが議題を席巻し、UNESCOはカリブ向けAI政策ロードマップを提示。地域共通の政策文書「カリブIG政策フレームワーク」の2016年版を更新する改訂(Issue 4.0)が承認されました。
  3. 国連事務総長テクノロジー特使が「小島嶼国にとってネットは文字どおり生死に関わる」と訴えた大会の成果は、2023年10月の国連IGF京都大会に直接持ち込まれ、CTUは京都でオープンフォーラムを開催しました。

こんにちは、中澤です。この記事は カリブ地域IGF 2023年 ポートオブスペイン大会 を、公式発表・議事録・現地報道にあたって整理した詳報です。忙しい方は上の3行まとめと図解だけでも骨子がつかめます。

📍 カタログでは「キングストン(ジャマイカ)」開催とされているが、CTU公式発表・ARIN記録とも第19回CIGF(2023年8月22〜24日)はトリニダード・トバゴのポートオブスペインを拠点に対面+オンラインのハイブリッドで開催。ジャマイカ開催を裏付ける記録は確認できなかった

大会の基本情報(公式発表より)

Caribbean IGF 2023 ポートオブスペイン — 大会 基本情報

項目 内容
回次 第19回カリブ地域IGF(CIGF)・第2回カリブ・ユースIGF(CYIGF)併催
会期 2023-08-22 〜 2023-08-24
会場 ポートオブスペイン(トリニダード・トバゴ)を拠点にハイブリッド開催
テーマ 持続可能な開発に向けて進化するカリブのインターネットガバナンス優先課題
開催形態 対面参加+Zoom(YouTube・Facebookにも配信)のハイブリッド形式
主催 カリブ電気通信連合(CTU)
成果文書 カリブ・インターネットガバナンス政策フレームワーク(CIGPF)2016年版の更新(Issue 4.0)を承認。CTUは2023年10月12日、国連IGF京都大会でのオープンフォーラム開催を発表

(出典: 文末の出典一覧を参照)

ディスカッション・ダイジェスト(議事録より)

Caribbean IGF 2023 ポートオブスペイン — 議論の見取り図

現地の議事録・セッション記録から、議論の核心部分を抜粋・翻訳してお届けします。

1. AIガバナンス — 議題を席巻した生成AI元年のカリブ

取り上げたセッション: 3日目(8月24日)ホットトピックス「Artificial Intelligence」、UNESCO「AI in the Caribbean – Policy Roadmap」ほか

  • UNESCOのポール・ヘクター氏がカリブ向けAI政策ロードマップを提示し、AI標準・能力構築・小島嶼開発途上国(SIDS)向けオープンデータの取り組みを説明した [1][2]
  • 閉会挨拶でテイラーCTU事務局長はAIが議題を支配した大会だったと総括。オープンマイクでも美容業界でのAI活用から本人の肖像に基づくAI画像の適法性まで、参加者の質問がAIに集中した [1][2]

2. 「小島嶼国には死活問題」 — 開かれたインターネットとグローバル・デジタル・コンパクト

取り上げたセッション: 開会式(8月23日)国連事務総長テクノロジー特使メッセージ

「インターネットを開かれ、自由で、安全で、包摂的なものに保つことは、世界の最重要課題です」
アマンディープ・シン・ギル(国連事務総長テクノロジー特使) [1][2]

「小島嶼開発途上国にとって、それは文字どおり生死に関わる問題です」
アマンディープ・シン・ギル(国連事務総長テクノロジー特使) [1][2]

  • 国連のグローバル・デジタル・コンパクト交渉には、IGFを通じてカリブのコミュニティからも実質的なインプットが行われていると特使が言及 [1][2]
  • IGFの活動を高めるリーダーシップ・パネルの発足に触れ、確立されたマルチステークホルダー機関への支援をこれまで以上に強めるよう要請した [1][2]

3. サイバーセキュリティと能力構築 — 国連プロセスと小国の現場

取り上げたセッション: 1日目(8月22日)能力構築セッション「Cybersecurity and Cybercrime – International Cooperative Frameworks and National Imperatives」

  • ジャマイカのサイバー犯罪・デジタルフォレンジック部門を率いるアンドレア・マーティン=スウェイビー上級検察副部長が、国連OEWG報告を踏まえ、小さな途上国の実情に合わせた実需主導の能力構築(ランサムウェア捜査の知見強化など)を提唱 [2]
  • ドミニカ共和国のクラウディオ・ペゲーロ大使は、GFCE(グローバル・サイバー専門知フォーラム)の創設や、ドミニカ共和国に置かれたラテンアメリカ・カリブ・サイバー能力センターの設置など、多国間の能力構築の歩みと重複回避の重要性を紹介した [2]

4. カリブIG政策フレームワーク第4.0版 — データ保護は人権か、産業振興か

取り上げたセッション: 2〜3日目ワークショップ「Caribbean Internet Governance Policy Framework Issue 4.0」

  • データ保護を人権と捉えるか、自由な企業活動を支える基盤と捉えるかという立場の違いを整理し、サイバー文化・セキュリティ・犯罪に関する各節を改訂。サイバー空間の人権保護に向けた法改正の重要性も強調された [1][2]
  • 2016年版フレームワークの更新が承認され、最終案の回覧と、SNS・ブログを使った普及戦略の実施が決まった [1][2]

5. ユースから京都へ — 次世代の育成と国連IGF京都大会への接続

取り上げたセッション: 1日目(8月22日)第2回カリブ・ユースIGF、開会式ほか

「カリブ・ユースIGFは、次世代の専門家とリーダーがインターネットガバナンスの遺産を巧みに前進させることを保証する、皆さんの先見的なアプローチの体現です」
チェンゲタイ・マサンゴ(国連IGF事務局) [1][2]

「CTUは、2023年10月8日から12日に日本の京都で開催される第18回国連IGFにおいて、10月12日にオープンフォーラムを主催します」
ロドニー・テイラー(CTU事務局長) [1][2]

  • 国連IGF事務局のアーニャ・ゲンゴ氏は、京都IGFでは800超のセッション応募が審査され300超のセッションが組まれたこと、カリブ地域の存在感も大きいことを報告。フォーラムの成果は京都への直接のインプットとされた [1][2]

3分ショートトーク — よくある疑問に答えます

Q. 何が決まった会議なの?

A. 地域共通の政策文書「カリブ・インターネットガバナンス政策フレームワーク」の2016年版を更新する改訂(第4.0版)が承認されました。AI時代に合わせた本格改訂で、データ保護を人権と捉えるかどうかまで踏み込んで議論されました。

Q. 一番の話題は?

A. AIのガバナンスです。UNESCOがカリブ向けのAI政策ロードマップを提示し、閉会挨拶でCTU事務局長が「議題はAIが席巻した」と振り返るほど、能力構築からユース討議、一般参加者の質問までAI一色でした。

Q. 日本に関係ある?

A. 大いにあります。この大会の成果は2カ月後の国連IGF京都大会(2023年10月)に直接持ち込まれ、CTUは京都でオープンフォーラムを開催しました。カリブの地域議論が日本開催の世界会合に接続した年です。

カリブ地域IGF ってどんな会議?(はじめての方へ)

Caribbean IGF 2023 ポートオブスペイン — カリブ地域IGFの位置づけ

カリブ地域IGFは、地域・国レベルでインターネットガバナンスを議論するIGFイニシアティブのひとつです。

日本の私たちへの影響

この大会の議論は、数年内に日本のデジタル政策・プラットフォームのルール・AI規制に反映 されていきます。2023年大会で確認された方針は、あなたが毎日使うスマホ・SNS・AIサービスの「次のルール」の土台です。

出典・参考資料

  1. Caribbean Internet Governance Forum Examines Governance of Artificial Intelligence — カリブ電気通信連合 (CTU)(参照: 2026-07-11)
  2. Report on the 19th Caribbean Internet Governance Forum (PDF) — カリブ電気通信連合 (CTU)(参照: 2026-07-11)
  3. 19th Caribbean Internet Governance Forum and 2nd Caribbean Youth Internet Governance Forum(公式イベントページ) — カリブ電気通信連合 (CTU)(参照: 2026-07-11)
  4. 19th Caribbean Internet Governance Forum — ARIN(米国・カリブ地域インターネットレジストリ)(参照: 2026-07-11)

※ 記事中の [数字] は出典番号を示します。


関連リンク

更新履歴

第1稿投稿 2023年8月26日 12:00(記事コンテンツアップ)

第2稿更新 2026年7月11日 02:14(詳報版へ全面改稿:3行まとめ・議事録ダイジェスト・3分ショートトーク・出典一覧・図解を追加(引用は出典実在のもののみ収録))

— 中澤祐樹