3行まとめ
- 2023年8月28日、豪州の国内IGF「NetThing 2023」がブリスベンで開催されました。同会場で翌日から開かれたアジア太平洋地域IGF(APrIGF 2023)の「Day 0」と位置づけられたハイブリッド開催です。
- Rowland通信相の演説、Dowlingサイバー大使の基調に加え、先住民リーダーのインターネットガバナンス・フェローシップ発足、AIガバナンス、「意味ある接続性」、マルチステークホルダーの将来を議論しました。
- 国内フォーラムを地域会合に直結させた構成は、2023年に京都でIGFを主催した日本にとっても、国内と国際の議論をつなぐ設計例として示唆的です。
こんにちは、中澤です。この記事は NetThing 2023 を、公式発表・議事録・現地報道にあたって整理した詳報です。忙しい方は上の3行まとめと図解だけでも骨子がつかめます。
📍 APrIGF 2023(8月29〜31日・同会場)の「Day 0」として併催。太平洋IGF・ユースIGF・議会トラックも同時開催
大会の基本情報(公式発表より)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | NetThing 2023 |
| 会期 | 2023-08-28(1日開催) |
| 会場 | ブリスベン・コンベンション&エキシビション・センター(ブリスベン) |
| テーマ | Cooperation and collaboration: Australia's commitment to supporting the future of Internet governance(協力と協働 — インターネットガバナンスの未来を支える豪州のコミットメント) |
| セッション数 | 11(Welcome to Countryから閉会まで全11プログラム) |
| 開催形態 | ハイブリッド(現地+オンライン) |
| 主催 | NetThing運営委員会(議長 Annaliese Williams)。auDA・Internet Australia・APNIC・ICANNなどが後援 |
(出典: 文末の出典一覧を参照)
ディスカッション・ダイジェスト(議事録より)
現地の議事録・セッション記録から、議論の核心部分を抜粋・翻訳してお届けします。
1. APrIGFの「Day 0」 — 国内議論をアジア太平洋へ直結
取り上げたセッション: 開会(Welcome to Country、Rowland通信相の演説、Brendon Dowlingサイバー・重要技術担当大使の基調)
- auDAがホストしたAPrIGF 2023(テーマ「新興技術 — アジア太平洋は次の段階に備えられているか」)の前日に同会場で開催し、国内IGF・太平洋IGF・ユースIGF・議会トラックが一体運営されました [2][3][4][5]
- Rowland通信相が演説し、Dowlingサイバー大使が基調講演。国内フォーラムとしては異例の政府ハイレベル登壇となりました [2][3][4][5]
- APNICがZoom運用とライブ配信を支え、全セッションの録画がISOC Liveにより公開アーカイブ化されました [2][3][4][5]
2. 先住民リーダー・フェローシップ発足 — ガバナンスの席を増やす
取り上げたセッション: NetThing×Identity Digital「Indigenous Leaders Internet Governance Fellowship」発足セッション(Jana Stewart上院議員)
- 先住民リーダーをインターネットガバナンスの議論と国際会議に送り出すフェローシップが、Jana Stewart上院議員の登壇とともに発足しました [4][5]
- 2019年の初回からWelcome to Countryを続けてきたNetThingが、先住民参加を「儀礼」から「制度」へ一歩進めた取り組みです [4][5]
3. AIガバナンス — 「未来を鍛える」パネル
取り上げたセッション: パネル「Forging our Future」(Aurelie Jacquet、David Masters、Brendon Dowling、Johanna Weaver。司会 Alexandra Caples)
- 生成AIの急拡大を受け、AI標準の専門家・企業・政府・研究者がAIガバナンスの豪州としての進め方を議論しました [4][5]
- 豪州政府の「安全で責任あるAI」協議(2023年)と歩調を合わせ、国内規制と国際規範づくりの両にらみが語られました [4][5]
4. 意味ある接続性 — つながっているだけでは足りない
取り上げたセッション: パネル「Meaningful Connectivity」(Daniel Featherstone、Andrew Williams、Paul Brooks。司会 Holly Raiche)/「Social and Economic Value of the Internet」(Julian Thomas、Greg Adamson、Ken Walliss、Chandni Gupta。司会 Keith Besgrove)
- 回線があるかではなく、速度・端末・スキル・料金まで含めて「意味のある接続」かを問う国際的な指標論を、遠隔地・先住民コミュニティの実態に引きつけて議論しました [4][5]
- インターネットの社会的・経済的価値を測るパネルでは、研究者と消費者団体がデジタル包摂の測定手法を検討しました [4][5]
5. マルチステークホルダーガバナンスの次 — 世界の実務家がブリスベンに
取り上げたセッション: パネル「Multistakeholder governance for the future – where next and how to get there」(Anriette Esterhuysen、Chris Buckridge、Jordan Carter、Lise Fuhr。司会 Pablo Hinojosa)/「Co-operation and Collaboration」(Sandra Davey、Ian Sheldon、Cheryl Langdon-Orr、Paul Wilson。司会 Annaliese Williams)
- 元IGF・MAG議長のAnriette Esterhuysen氏ら国際的な実務家が、WSIS+20見直しやグローバル・デジタル・コンパクト交渉を控えたマルチステークホルダーモデルの立て直しを議論しました [3][4][5]
- 締めのパネルには初代NetThing議長Sandra Davey氏、APNIC事務局長Paul Wilson氏、政府のIan Sheldon氏らが登壇し、豪州コミュニティの国際貢献の道筋を確認。Annaliese Williams議長が閉会しました [3][4][5]
3分ショートトーク — よくある疑問に答えます
Q. なぜブリスベンで、しかも地域IGFと一緒に?
A. 翌日から同じ会場でアジア太平洋地域IGF(APrIGF 2023)が開かれたためです。国内IGFをその「Day 0」に置くことで、国内の議論をそのまま地域・世界の議論につなげる設計にしました。
Q. この年ならではの成果は?
A. 先住民リーダーをインターネットガバナンスに送り出すフェローシップの発足です。上院議員が登壇して発表され、参加の「儀礼」を「制度」に変える一歩となりました。
Q. 日本に関係ある?
A. あります。この2カ月後に日本は京都でグローバルIGFを主催しました。国内フォーラムと国際会合をどう接続するかという同じ課題に、豪州は「併催」という答えを出した例です。
Australia IGF ってどんな会議?(はじめての方へ)
Australia IGFは、地域・国レベルでインターネットガバナンスを議論するIGFイニシアティブのひとつです。
日本の私たちへの影響
この大会の議論は、数年内に日本のデジタル政策・プラットフォームのルール・AI規制に反映 されていきます。2023年大会で確認された方針は、あなたが毎日使うスマホ・SNS・AIサービスの「次のルール」の土台です。
出典・参考資料
- NetThing 2023 — auIGF(旧NetThing)公式サイト(参照: 2026-07-11)
- NetThing 2023(イベント案内) — auDA(豪州ドメイン管理機構)(参照: 2026-07-11)
- Event Wrap: APrIGF 2023, Net Thing 2023, and PacIGF 2023 — APNIC Blog(参照: 2026-07-11)
- WEBCAST AUG 28 – Australian Internet Governance Forum (NetThing) — ISOC Live(インターネットソサエティ配信ノート)(参照: 2026-07-11)
- Australian Internet Governance Forum (NetThing) 2023(全11セッション録画) — Internet Archive(ISOC Live提供)(参照: 2026-07-11)
※ 記事中の [数字] は出典番号を示します。
関連リンク
- IGF公式(リージョナル/ナショナル一覧): https://www.intgovforum.org/en/content/national-and-regional-igf-initiatives
- 日本IGF: https://japanigf.jp/
- 参考:中澤祐樹ブログ https://nkzw.jp/category/igf/
更新履歴
第1稿投稿 2023年6月17日 10:00(記事コンテンツアップ)
第2稿更新 2026年7月16日 20:09(詳報版へ全面改稿:3行まとめ・議事録ダイジェスト・3分ショートトーク・出典一覧・図解を追加(引用は出典実在のもののみ収録))
— 中澤祐樹
