3行まとめ
- 2021年3月24〜25日、第6回南アフリカIGF(ZAIGF)が初の完全オンラインで開催されました。テーマは「デジタル相互依存」。コロナ禍で露呈した接続格差から偽情報、POPIA(個人情報保護法)まで8セッションを展開し、同年後半には補完のPart B(ハイブリッド)も開かれました。
- SA Connect(国家ブロードバンド計画)第1期の完了報告と第2期の遅れ、地方選挙を前にした偽情報対策、7月1日に迫ったPOPIA全面施行が主要議題に。Part Bでは障害者のアクセシビリティとAIの偏見が正面から扱われました。
- 「つながれない人」を主題に据えた議論の蓄積は、コロナ禍のオンライン授業格差を経験した国々に共通する課題です。会合報告書が2部とも公開されており、アフリカの国内IGFとしては記録の充実度が際立つ大会です。
こんにちは、中澤です。この記事は ZAIGF 2021(南アフリカIGF) を、公式発表・議事録・現地報道にあたって整理した詳報です。忙しい方は上の3行まとめと図解だけでも骨子がつかめます。
📍 第6回は完全オンライン。同年後半に補完会合「Part B」をハイブリッド形式で追加開催(公式報告書の作成日は2022年1月22日、Part B本体の開催日は報告書に明記なし)
大会の基本情報(公式発表より)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | ZAIGF 2021(南アフリカIGF) |
| 会期 | 2021-03-24 〜 2021-03-25(第6回本会合・オンライン)+ 2021年後半(Part B・ハイブリッド、日付非公表) |
| 会場 | オンライン(Zoomを主会場にYouTube・Twitterへ中継) |
| テーマ | デジタル相互依存(Digital Interdependence)/Part B: アクセス・アクセシビリティ・デジタル包摂 |
| セッション数 | 15(本会合8セッション(6aと6bを別立てで数えると9枠)+Part B 7セッション。ZADNA年次報告は本会合を「11セッション」と記載しており枠の数え方に揺れがある) |
| 主催 | ZAIGFマルチステークホルダー委員会、ZADNA、通信・デジタル技術省(DCDT)。ISOCハウテン支部・ELIGが協力 |
| 成果文書 | 公式会合報告書2点(本会合・Part B)と提言。新マルチステークホルダー委員会(8名・任期3年、議長Zanyiwe Nthatisi-Asare弁護士)を選出 |
| 特記 | 第6回年次会合(2011年設立から数えた公式回次) |
(出典: 文末の出典一覧を参照)
ディスカッション・ダイジェスト(議事録より)
現地の議事録・セッション記録から、議論の核心部分を抜粋・翻訳してお届けします。
1. デジタル相互依存 — コロナ禍が可視化した「つながる者・つながれない者」
取り上げたセッション: 開会式・基調講演(3月24日9:00、Pinky Kekana通信・デジタル技術副大臣)
- ZADNAのMolehe Wesi CEOが開会し、Kekana副大臣が基調講演。事前のテーマ公募では10候補のうち「脆弱層の包摂、セキュリティと信頼」が圧倒的多数で最優先課題に選ばれたと報告された [1]
- テーマ「デジタル相互依存」は、コロナ禍で急拡大したデジタル空間の相互接続性を政府・民間・市民社会の協働で統治する必要性を表現。12月の世界IGF(ポーランド・カトヴィツェ)に向けた国内対話と位置づけられた [1]
- ハードロックダウン下で政府がオンライン学習を唯一の代替手段としたことが、農村部の学習者を排除する不平等を露呈したと第1セッションで総括された [1]
2. ユニバーサルアクセス — SA Connect第1期完了、第2期は白紙のまま
取り上げたセッション: セッション2「Universal access and connecting the unconnected」(3月24日11:30)
- 国家ブロードバンド計画SA Connect第1期(8農村districtの学校・保健施設・政府拠点の接続)が2021年1月に完了した一方、第2期は開発銀行DBSAとDCDTの実行可能性調査待ちで未着手と報告された [1]
- コミュニティネットワークの課題として技術人材の不足とスペクトラム費用が挙げられ、テレビ帯域の空きチャンネル(TVWS)を使えば周波数料なしで農村に安価な接続を提供できるとの解決策が示された [1]
- 登壇はICASA(独立通信庁)・DCDT・地域WISP等。州政府が独自にブロードバンドを敷設できる制度と、重複を防ぐ調整フォーラムの存在も確認された [1]
3. 偽情報と2021年地方選挙 — 苦情の41%が偽情報
取り上げたセッション: セッション6a「Disinformation in the lead up to the 2021 local government elections」(3月25日11:30)
- Media Monitoring Africa(MMA)は、受け付けた約900件の苦情のうち41%が偽情報だったと報告。同年の地方選挙に向けて増加が見込まれるとした [1]
- 2019年総選挙では投票所の誤住所拡散など「選挙ロジスティクス」型の偽情報が目立ち、AIによる動画改ざんの脅威も指摘。選管(IEC)と政党へのデジタルリテラシー装備が提言された [1]
- 対策としてMMAの市民参加型通報イニシアチブ「411」と、重要サイトを保護するGoogleのProject Shieldが紹介され、メディア自身のファクトチェック責任も強調された [1]
4. POPIA全面施行前夜 — 「サイバー安全度で世界ワースト31位」の自覚
取り上げたセッション: セッション7「Privacy and protection of personal information」(3月25日13:45)ほかセッション6b
- 個人情報保護法POPIAの官民コンプライアンス期限が2021年7月1日に迫る中、Digitally Legal・情報規制局(Information Regulator)・映画出版委員会(FPB)の論者が施行体制を点検。南アフリカは「サイバーセキュリティで世界ワースト31位」との自己評価から議論が始まった [1]
- 併設のサイバーセキュリティセッション(6b)ではランサムウェアが最多の攻撃類型とされ、報告された2件では身代金を払わずに復旧できたこと、オンライン上の加害が女性に集中する「サイバーミソジニー」の実態も共有された [1]
- 市民が自らのプライバシー権と通報手段を知らないことが最大の弱点とされ、市民・規制当局・業界の連携による啓発が提言された [1]
5. Part B: アクセシビリティとAIの偏見 — 「アクセスできても使えない」
取り上げたセッション: Part B セッション1「障害者の権利とインターネットガバナンス」・セッション2「南アフリカで用いられるAI技術」
「AIとは、人間のように学び、人間のように振る舞う多様な技術の組み合わせである」
— 国家情報技術庁(SITA)代表(Part B公式報告書の記録。英語原文からの翻訳) [2]
- Part B(テーマ「アクセス・アクセシビリティ・デジタル包摂」)では、Blind SAと人権センターが「オンライン資源はアクセスできても使えないことが多い」と指摘。点字支援機器は最大10万ランドに達し、身体障害者の65%超がサイバー空間に十分参加できていないと報告された [2]
- AIセッションでは、南アフリカにはAIを規律する法律がなく、偏見への保護はPOPIA第57条(1)の事前認可規定のみと整理。西側製AIの安易な導入ではなく、自国の社会課題に接続したAI開発と人権デューデリジェンスが提言された [2]
- 基調講演でDCDTのNonkqubela Jordan-Dyani局長代行は、ブロードバンド展開・周波数割当・アナログ停波を格差解消の鍵と位置づけ、若者の政策対話参加の拡大を訴えた [2]
3分ショートトーク — よくある疑問に答えます
Q. この年は何が特別だったの?
A. 初の完全オンライン開催で、しかも年2回(3月の本会合と後半のPart B)開かれました。報告書も2部とも公開されていて、アフリカの国内IGFとしては異例なほど記録が残っている大会です。
Q. 一番切実だった話題は?
A. コロナ禍の接続格差です。オンライン授業が「唯一の選択肢」になった結果、ネットにつなげない農村部の子どもたちが学びから排除された——この現実が全セッションの通奏低音でした。
Q. 日本に関係ある?
A. あります。個人情報保護法POPIAの施行準備、選挙前の偽情報対策、AIの偏見規制——どれも日本が同時期に直面していた課題と同型です。規制が追いつく前のAIをどう扱うかという議論は特に示唆的です。
South Africa IGF ってどんな会議?(はじめての方へ)
South Africa IGFは、地域・国レベルでインターネットガバナンスを議論するIGFイニシアティブのひとつです。
日本の私たちへの影響
この大会の議論は、数年内に日本のデジタル政策・プラットフォームのルール・AI規制に反映 されていきます。2021年大会で確認された方針は、あなたが毎日使うスマホ・SNS・AIサービスの「次のルール」の土台です。
出典・参考資料
- ZAIGF Sixth Annual Meeting Report "Digital Interdependence" (PDF) — ZAIGF委員会・ZADNA・DCDT(参照: 2026-07-11)
- ZAIGF 2021 Part B Meeting Report "Access, Accessibility, and Digital Inclusion" (PDF) — ZAIGF委員会・ZADNA・DCDT(参照: 2026-07-11)
- ZADNA Annual Report 2020/2021 (PDF) — ZA Domain Name Authority (ZADNA)(参照: 2026-07-11)
- South Africa IGF — NRI initiative record — 国連IGF事務局 (intgovforum.org)(参照: 2026-07-11)
- History of ZAIGF — ZAIGF公式サイト (internetgovernance.org.za)(参照: 2026-07-11)
※ 記事中の [数字] は出典番号を示します。
関連リンク
- IGF公式(リージョナル/ナショナル一覧): https://www.intgovforum.org/en/content/national-and-regional-igf-initiatives
- 日本IGF: https://japanigf.jp/
- 参考:中澤祐樹ブログ https://nkzw.jp/category/igf/
更新履歴
第1稿投稿 2026年7月13日 21時12分(記事コンテンツアップ)
— 中澤祐樹

