3行まとめ
- 2024年10月16日、アルマトイのSmArt.Pointで第2回Qazaqstan IGFが開かれ、会場250人超・オンライン300人が参加、10のパネルに44人が登壇しました。
- 審議中のデジタル法典を下院議員と国際専門家が公開討論したほか、女性のためのサイバー安全、ブロガーとジャーナリストの境界、そして「カザフスタンのインターネット遮断はどう機能しているか」まで踏み込みました。
- エストニア大使が電子政府の経験を語り、ICANNは「ガバナンスとは規則づくり」と多国間主義を牽制。市民社会主導IGFが議会立法に直接接続した点で、中央アジアでは異例の回でした。
こんにちは、中澤です。この記事は Qazaqstan IGF 2024(第2回国家インターネットガバナンスフォーラム) を、公式発表・議事録・現地報道にあたって整理した詳報です。忙しい方は上の3行まとめと図解だけでも骨子がつかめます。
大会の基本情報(公式発表より)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | Qazaqstan IGF 2024(第2回国家インターネットガバナンスフォーラム) |
| 回次 | 第2回 |
| 会期 | 2024-10-16 |
| 会場 | SmArt.Point(アルマトイ) |
| テーマ | 地域の共通課題 |
| 参加者 | 会場参加250人超+オンライン聴講300人。10パネルに44人が登壇 |
| セッション数 | パネルセッション10 |
| 主催 | Eurasian Digital Foundation / Digital Rights Center Qazaqstan(DRCQ)主催。国連カザフスタン事務所、在アスタナ・エストニア大使館、下院(マジリス)、デジタル発展省情報セキュリティ委員会、ICANN、RIPE NCC、USAID等が参加 |
| 成果文書 | デジタル法典(Digital Code)を議員・国際専門家が公開討論(グローバルIGF事務局の支援による議会イニシアチブ)、デジタル権利遵守レーティング2024発表(Freedom Bank/Yandex GO Delivery/Kcell・Activ)、10月末までに国内メディアで31回言及 |
(出典: 文末の出典一覧を参照)
ディスカッション・ダイジェスト(議事録より)
現地の議事録・セッション記録から、議論の核心部分を抜粋・翻訳してお届けします。
1. デジタル法典 — 議会立法にIGFが接続した日
取り上げたセッション: セッション7「Initiative of the Parliament: Codification of Digital Legislation」
- 下院(マジリス)議員のエカテリーナ・スミシリャエワ氏とパベル・カザンツェフ氏、国際専門家ニコライ・ドミトリク氏が、審議中のデジタル法典の設計と中長期の展望を公開の場で討論。グローバルIGF事務局の支援による「議会イニシアチブ」セッションと明記された [1][2]
- 当初350の定義を持つ複雑な草案から、民法典型の一般原則中心の構成へ改訂されたこと、アルゴリズムに対する人間の決定の優先、スマートコントラクト、サイバーセキュリティを扱うことが説明された(zakon.kz報道) [1][2]
2. 「ガバナンス」という言葉への異議 — マルチステークホルダーの再定義
取り上げたセッション: フォーラム開幕/セッション1「Multistakeholder Internet Governance as a Way to Achieve SDGs」
「私は『ガバナンス(統治)』という言葉があまり好きではありません。ボタンを押すことではなく、規則を発展させることだからです。誰もが予測可能性と共通の規則を求めています。インターネットガバナンスフォーラムとは、人々が時計を合わせ、どの規則が必要で、どれを調整すべきかを理解しようとする場なのです」
— ミハイル・アニシモフ(ICANN東欧・中央アジア担当グローバルステークホルダーエンゲージメントマネージャー) [1]
「中澤の使命は、すべての人にデジタルの未来を保証することです。信頼と技術の進歩、そしてインターネットガバナンスフォーラムに基づいて、カザフスタンに安全なデジタル環境をつくることを目指しています」
— ルスラン・ダイルベコフ(Eurasian Digital Foundation創設者、DRCQマネージングパートナー) [1]
- 国家単独の統治はインターネットの技術的分断(一国内の過剰な主権化)リスクを招くとして、非国家アクター排除への警告が成果勧告に明記された [1]
- 駐カザフスタン・エストニア大使ヤープ・オラ氏は、電子政府世界2位のエストニアの経験を紹介し「カザフスタンをトップ3で待っている」と激励した(公式報告書) [1]
3. 遮断・メディア法・女性の安全 — 権利側の議題が並んだ10パネル
取り上げたセッション: セッション2「CyberSafe for Women」/セッション4「Blogger vs. Journalist」/セッション5「Restricting Access to the Internet in Kazakhstan」
- 「カザフスタンにおけるインターネットアクセス制限——どう機能し、どう対処するか」と題する遮断問題の独立セッションを国内で公然と開催した点が、この回の最大の特徴 [1]
- 新マスメディア法がもたらした変化を「ブロガー対ジャーナリスト」の枠組みで検証し、女性のためのサイバー安全(CyberSafe for Women)も独立パネル化 [1]
- このほか責任あるAI規制の可能性、デジタル資産(暗号資産)規制、デジタル職業人材の育成、重要インフラの耐障害性を扱い、全10パネルに市民社会・政府・民間・学界から44人が登壇 [1]
4. デジタル権利レーティング2024 — 金融・EC・通信の3業種を採点
取り上げたセッション: セッション10「Digital Rights Rating」
- 2年目のデジタル権利遵守レーティングは対象をフィンテック・Eコマース・通信の3業種に拡大し、Freedom Bank(フィンテック・プライバシー遵守)、Yandex GO Delivery(Eコマース)、Kcell/Activ(通信)が最優秀に選ばれた [1][3]
- コーポレートガバナンス・表現の自由・プライバシーの指標で企業方針と実践を採点する方式で、市民社会による監視の定例化が進んだ [1][3]
3分ショートトーク — よくある疑問に答えます
Q. 2回目で何が変わった?
A. 議会との接続です。審議中のデジタル法典を下院議員が市民の前で説明・討論する「議会イニシアチブ」セッションが立ち、IGFの議論が立法過程に直結しました。参加も250人超に拡大しています。
Q. 一番驚きのテーマは?
A. 「カザフスタンのインターネット遮断はどう機能しているか」を国内の公開フォーラムで真正面から扱ったことです。遮断が現実にある国で、その仕組みと対処を議論すること自体が挑戦でした。
Q. 日本に関係ある?
A. あります。デジタル関連法を一つの法典に束ねる「デジタルコーデックス」の試みは、縦割り立法に悩む日本にも示唆的です。エストニア大使が説いた電子政府の教訓も共通の教材です。
Kazakhstan IGF ってどんな会議?(はじめての方へ)
Kazakhstan IGFは、地域・国レベルでインターネットガバナンスを議論するIGFイニシアティブのひとつです。
日本の私たちへの影響
この大会の議論は、数年内に日本のデジタル政策・プラットフォームのルール・AI規制に反映 されていきます。2024年大会で確認された方針は、あなたが毎日使うスマホ・SNS・AIサービスの「次のルール」の土台です。
出典・参考資料
- Overview and Recommendations — Qazaqstan IGF 2024: The Second National Internet Governance Forum(公式報告書PDF) — Qazaqstan IGF(参照: 2026-07-23)
- В рамках Qazaqstan IGF 2024 прошло обсуждение Цифрового кодекса(ロシア語・デジタル法典セッションの詳報。引用は翻訳) — Zakon.kz(参照: 2026-07-23)
- Kazakhstan IGF(UN公式NRI登録ページ: 年次報告2023/2024/2025掲載) — 国連IGF事務局 (UN IGF Secretariat)(参照: 2026-07-23)
※ 記事中の [数字] は出典番号を示します。
関連リンク
- IGF公式(リージョナル/ナショナル一覧): https://www.intgovforum.org/en/content/national-and-regional-igf-initiatives
- 日本IGF: https://japanigf.jp/
- 参考:中澤祐樹ブログ https://nkzw.jp/category/igf/
更新履歴
第1稿投稿 2026年8月3日 9時28分(記事コンテンツアップ)
— 中澤祐樹

