AprIGF(アジア太平洋地域IGF) 2015 マカオ大会 詳報 — 議事録ダイジェストと3行まとめ

AprIGF 2015 マカオ — サムネイル

3行まとめ

AprIGF 2015 マカオ — 3行まとめ

  1. 2015年6月29日〜7月3日、マカオ科技大学で第6回APrIGFが開催されました(本会議は7月1〜3日)。23の国・地域から143人の海外参加者と約100人の地元参加者が集まり、34セッションが行われました。
  2. テーマは「インターネットガバナンスの進化 — 持続可能な開発を支える」。IGF設立10年・WSIS+10見直しの年にあたり、IGF存続問題、IANA移管、IoT・スマートシティのセキュリティ、ブロックチェーンを議論しました。
  3. 地域の意見を一つの文書にまとめる「統合文書」を初めて試行した大会で、この仕組みは翌年から正式プロセスになりました。地域IGFの成果を文書として残す手法の原点です。

こんにちは、中澤です。この記事は AprIGF(アジア太平洋地域IGF) 2015年 マカオ大会 を、公式発表・議事録・現地報道にあたって整理した詳報です。忙しい方は上の3行まとめと図解だけでも骨子がつかめます。

大会の基本情報(公式発表より)

AprIGF 2015 マカオ — 大会 基本情報

項目 内容
回次 第6回APrIGF。マカオ初開催
会期 2015-06-29 〜 2015-07-03(6月29〜30日はプレイベント、本会議は7月1〜3日)
会場 マカオ科技大学(マカオ)
テーマ Evolution of Internet Governance: Empowering Sustainable Development(インターネットガバナンスの進化 — 持続可能な開発を支える)
セッション数 34
参加内訳 海外参加143人(23の国・地域)、マカオ現地参加約100人。政府代表は10ヵ国から24人
主催 主催: HNET Asia(.moレジストリMONICの運営会社)、共催: マカオ電子商取引協会。APrIGF事務局: DotAsia。マカオ電気通信規制局(DSRT)・政府観光局・貿易投資促進局(IPIM)が後援
成果文書 初の「統合文書(Synthesis Document)」を試行。会期中の意見と2度のパブリックコメントを経て2015年8月18日に最終版を公開。2016年以降は正式プロセスに

(出典: 文末の出典一覧を参照)

ディスカッション・ダイジェスト(議事録より)

AprIGF 2015 マカオ — 議論の見取り図

現地の議事録・セッション記録から、議論の核心部分を抜粋・翻訳してお届けします。

1. 初の統合文書 — 地域の声をひとつのテキストに

取り上げたセッション: 大会全体の実験的取り組み(会場・遠隔からの意見と2度のパブリックコメント)

  • アジア太平洋に共通する関心事項を文書化する「統合文書」を初めて試行。会場と遠隔からのコメント、2度の意見募集を経て、2015年8月18日に最終版が公開されました [1][3][4]
  • この実験は翌2016年からAPrIGFの正式なプログラムとなり、地域の意見を世界のIGFやWSISレビューなどの場へ届ける文書チャネルになりました [1][3][4]

2. IGF設立10年 — 存続をかけたWSIS+10の年

取り上げたセッション: MSG議長メッセージ、ワークショップ「From Periphery to Core: Towards an Asia-Pacific Agenda for the WSIS+10 Review」ほか

「この10年でインターネットの利用者は10億人から30億人超に増えた。2005年には『生活の一部』だったものが、2015年には世界人口の半分近くにとって『生活必需品』になった」
ポール・ウィルソン(APNIC事務局長・MSG議長、大会報告書の歓迎メッセージ) [1]

「マルチステークホルダー・プロセスとしてのインターネットガバナンスが認められてから10年。閉ざされたプロセスがその運命を決めたり、形を作り変えたりするようなことがあれば、大きな恥となるだろう」
ポール・ウィルソン(同上) [1]

  • 2015年末の国連総会でIGFのマンデート更新(WSIS+10見直し)が判断される年にあたり、IGF継続の重要性を地域から発信することが大会の明確な目的とされました [1]
  • 「周縁から中核へ」と題したワークショップでは、WSIS+10見直しに向けたアジア太平洋独自の課題設定が議論されました [1]

3. IoT・スマートシティ — つながるほど広がる攻撃面

取り上げたセッション: サイバーセキュリティ&トラスト・トラック(「Information Security and Privacy in the IoT Era」「Smart Cities in Asia and the Deployment of Big Data」ほか)

  • 機能優先で安全性が後回しのIoT機器が大量にネット接続され、心臓モニターから都市の電力系統まで攻撃対象になり得ること、機器がボットネットに動員されるリスクが警告されました [1]
  • スマートシティのセンサーが集める膨大なデータについて、何が収集され、匿名化や保管はどうなっているのか、都市による追跡から「オプトアウト」できるのかが問われました [1]
  • パキスタンにおける大量監視の「立法の漸進的拡大」や、商用監視ツールの地域への販売など、能動的監視の実態も報告されました [1]

4. ブロックチェーンとマニラ原則 — 新しい信頼のかたち

取り上げたセッション: インターネット経済トラック(「Building An Internet for Trust on a Trustless Internet」「The Manila Principles on Intermediary Liability」)

  • ブロックチェーンを「会計の革命」、その上のスマートコントラクトを「信頼の革命」と位置づけ、国家に裏打ちされた中央集権型の信頼から分散型の信頼への移行や、アジア25市場の相互運用への活用が議論されました [1]
  • 公表されたばかりの「マニラ原則」(仲介者責任に関する国際指針)が紹介され、韓国・インド・香港・中国の事例をもとに、これは仲介者ではなくインターネット利用者の表現の自由を守るための原則だと確認されました [1]

5. マカオ初開催 — .moレジストリが動かした大会

取り上げたセッション: 開会式(7月1日11:00、マカオ科技大学Nホール)・閉会

  • .moレジストリMONICを運営するHNET Asiaが主催し、マカオの電気通信規制局・政府観光局・貿易投資促進局が後援。開会式にはバングラデシュのハサヌル・ハク・イヌ情報大臣や、タイのICANN政府諮問委員会(GAC)副議長ワナウィット・アクプトラ氏も登壇しました [1][5]
  • マカオ日報など地元メディアが大会を報道し、CommuniMacao展と連続開催されるなど、小さな特別行政区での「地域まるごと」開催となりました [1][5]

3分ショートトーク — よくある疑問に答えます

Q. この大会で何が新しかったの?

A. 議論を「統合文書(Synthesis Document)」という一つの文書にまとめる試みが初めて行われたことです。パブリックコメントを経て8月に最終版が公開され、翌年からAPrIGFの正式な成果物になりました。

Q. 一番の危機感は何だった?

A. IGFそのものの存続です。2015年末の国連でIGFの継続(WSIS+10見直し)が決まる年で、「閉ざされたプロセスに運命を決めさせてはならない」という声が上がりました。結果的にIGFのマンデートは10年延長されています。

Q. 自分に関係ある?

A. あります。ここで警告されたIoT機器やスマートシティのセキュリティ問題は、いまのスマート家電・監視カメラ・データ保護の規制論議の先取りでした。プラットフォームの削除責任を扱う「マニラ原則」も、SNS時代の表現の自由の土台になっています。

AprIGF(アジア太平洋地域IGF) ってどんな会議?(はじめての方へ)

AprIGF 2015 マカオ — AprIGF(アジア太平洋地域IGF)の位置づけ

AprIGF(アジア太平洋地域IGF)は、地域・国レベルでインターネットガバナンスを議論するIGFイニシアティブのひとつです。

日本の私たちへの影響

この大会の議論は、数年内に日本のデジタル政策・プラットフォームのルール・AI規制に反映 されていきます。2015年大会で確認された方針は、あなたが毎日使うスマホ・SNS・AIサービスの「次のルール」の土台です。

出典・参考資料

  1. Conference Report — APrIGF Macao 2015(大会報告書) — APrIGF事務局(DotAsia)・HNET Asia(参照: 2026-07-10)
  2. APrIGF 公式サイト(過去大会アーカイブ) — APrIGF(参照: 2026-07-10)
  3. Final Synthesis Document is Out!(最終統合文書の公開告知、2015年8月18日) — APrIGF(参照: 2026-07-10)
  4. 2019 APrIGF Synthesis Document Process Announcement(統合文書が2015年に始まった経緯に言及) — APrIGF(参照: 2026-07-10)
  5. Call for Workshop Proposals — APrIGF 2015 Macau(開催決定告知) — APrIGF(参照: 2026-07-10)

※ 記事中の [数字] は出典番号を示します。


関連リンク

更新履歴

第1稿投稿 2015年6月30日 09:00(記事コンテンツアップ)

第2稿更新 2026年7月10日 23:16(詳報版へ全面改稿:3行まとめ・議事録ダイジェスト・3分ショートトーク・出典一覧・図解を追加(引用は出典実在のもののみ収録))

— 中澤祐樹