3行まとめ
- 2017年11月28日、スコピエの外務省を会場に、北マケドニア(当時マケドニア)初の国内IGF「IGF MKD 2017」が開催されました。政府・技術・学術・市民社会の代表が3セッションで議論しました。
- キリル文字ドメイン「.мкд」の普及、国家CSIRT「MKD-CIRT」の始動、フェイクニュースとメディアリテラシーが主要議題となり、成果文書「IGF MKD 2017 Messages」がまとめられました。
- 国連IGF事務局やEuroDIG・SEEDIGが祝辞を寄せた、バルカン小国の多者間対話の船出です。外務省が会場を提供して立ち上げる国内IGFの好例として、日本の読者にも示唆があります。
こんにちは、中澤です。この記事は IGF MKD 2017(北マケドニアIGF) を、公式発表・議事録・現地報道にあたって整理した詳報です。忙しい方は上の3行まとめと図解だけでも骨子がつかめます。
大会の基本情報(公式発表より)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | IGF MKD 2017(北マケドニアIGF) |
| 回次 | 第1回(初開催) |
| 会期 | 2017-11-28(公式ページに日付の明記はないが、通信事業者系チャンネルが全編収録映像(約6時間)を2017年11月28日当日に公開しており、成果文書掲載の会場写真のバナーにも「First Annual」と開催日の表記がある。初代コーディネーターのIGFSA提出声明は「2017年11月に第1回IGF MKDを外務省で開催」と記載) |
| 会場 | 外務省(スコピエ) |
| テーマ | 地域の共通課題 |
| 主催 | IGF MKD(機関パートナー: 外務省・情報社会行政省)。IGFSAの資金援助を受けて開催 |
| 成果文書 | IGF MKD 2017 Messages(成果文書) |
(出典: 文末の出典一覧を参照)
ディスカッション・ダイジェスト(議事録より)
現地の議事録・セッション記録から、議論の核心部分を抜粋・翻訳してお届けします。
1. 初の国内IGF誕生 — 外務省がホストを務めた立ち上げ
取り上げたセッション: 開会セッション「機関パートナーによる歓迎挨拶」(11:00〜11:45)
「マケドニア初のIGFに心からお祝いを申し上げます。95か国以上が自国のIGFを持っており、マケドニアの設立は関係するすべての国内ステークホルダーが結集した優れた模範です。ジュネーブでの第12回グローバルフォーラムに参加し、デジタルの未来をともに形作りましょう(英語版成果文書より翻訳・抜粋)」
— Chengetai Masango(国連IGF事務局 プログラム・技術マネージャー) [2][3][5]
「外務省はフォーラムの機関パートナーであり、今日この催しのホストを務められることをうれしく思います。第4次産業革命としてのデジタル化は、世界・欧州・地域のあらゆるアジェンダの最前線にあります(英語版成果文書より翻訳)」
— Hilda Kolevska(外務省) [2][3][5]
- SEEDIG執行委員長のSorina Teleanu氏は「半年前にオフリドでの第3回SEEDIG会合で設立が表明され、いまや現実になった」と祝辞を寄せました(成果文書より) [2][3][5]
- 初代コーディネーターAleksandar Icokaev氏によれば、構想はICANN会合でのIGFSA(IGF支援協会)のセッションで生まれ、2017年・2018年の開催にIGFSAの資金援助を受けました [2][3][5]
2. キリル文字ドメイン「.мкд」 — 言語とアイデンティティのインフラ
取り上げたセッション: セッション1「デジタルガバナンスとアイデンティティ」(11:45〜12:30)
「キリル文字トップレベルドメインは、中澤の言語、文字、そして共和国の領土を表す非常に重要な国家資源です。マケドニア語とマケドニア文字を使って、インターネットをもっと豊かにしましょう(英語版成果文書より翻訳・抜粋)」
— Sanja Simonova(MARnet=マケドニア学術研究ネットワーク) [2][1]
- 国別ドメイン.mkを管理するMARnetは、2014年に導入したキリル文字ドメイン「.мкд」の活用を「Internet learns Cyrillic(インターネットがキリル文字を学ぶ)」と題して呼びかけました [2][1]
- FINKI(情報科学・計算機工学部)のBoro Jakimovski教授は学術認証フェデレーションeduGAINを例に、デジタルIDの重要性を提示。英国大使Charles Garrett氏は英外務省が世界で最初にソーシャルメディア外交へ踏み出した経験を語りました [2][1]
3. サイバーセキュリティ — 稼働2年目のMKD-CIRTと国家戦略の不在
取り上げたセッション: セッション2「サイバーセキュリティ」(12:45〜13:30)
「私たちが目指す水準の安全を実現するには、サイバーセキュリティを規律する国家戦略が不可欠です(英語版成果文書より翻訳)」
— Tatjana Tapandzieva(マケドニア・テレコム) [2][1]
- 電子通信庁(AEC)のAleksandar Acev氏が、2016年に稼働したばかりの国家CSIRT「MKD-CIRT」の役割(安全侵害への対応・政府と官民への脅威情報提供)を紹介しました [2][1]
- 規制は技術の進歩に追いついているのか、という問いが通信事業者側から投げかけられ、企業・機関でのセキュリティ成熟度評価の必要性が指摘されました [2][1]
4. フェイクニュースとメディアリテラシー — オンライン報道の窮状
取り上げたセッション: セッション3「オンライン執行・メディア」(13:45〜14:45)
「その結果、マケドニアのオンラインジャーナリズムは資金不足、他人のコンテンツの盗用、そして浅薄さを特徴とするようになっています。ジャーナリストがいつも悪いわけではありません(英語版成果文書より翻訳)」
— Goran Mihajlovski(ニュースサイトSDK「Sakam da Kazam」編集長) [2][1]
- 2016年米大統領選の「マケドニア発フェイクニュース工場」報道で国名が世界に知られた直後の開催で、偽ニュースは同国「ならでは」の切実なテーマでした。プロの報道基準すら知られていないオンライン媒体の実態が語られました [2][1]
- 法学部のNeda Zdraveva教授が著作権とメディアを、React社のEli Mufisovski氏が模倣品対策などのオンライン執行を扱い、知的財産保護の国際協力を訴えました [2][1]
3分ショートトーク — よくある疑問に答えます
Q. そもそも何が決まった会議なの?
A. 何かを決める場ではなく、政府・企業・市民が対等に話す国連IGF方式の国内対話フォーラムの「第1回」です。外務省が会場を提供し、議論の要点は成果文書「IGF MKD 2017 Messages」にまとめられました。
Q. なぜ外務省が会場なの?
A. 小国にとってインターネットガバナンスは外交課題でもあるからです。国連IGFやICANNなど国際的な場との橋渡し役として外務省が機関パートナーになり、立ち上げを後押ししました。
Q. 日本に関係ある?
A. あります。フェイクニュース対策やキリル文字ドメインのような「自国語のインターネット」の議論は、日本語ドメインや偽情報対策と同型の課題です。人口200万の国でも多者間フォーラムを持てることを示した例でもあります。
North Macedonia IGF ってどんな会議?(はじめての方へ)
North Macedonia IGFは、地域・国レベルでインターネットガバナンスを議論するIGFイニシアティブのひとつです。
日本の私たちへの影響
この大会の議論は、数年内に日本のデジタル政策・プラットフォームのルール・AI規制に反映 されていきます。2017年大会で確認された方針は、あなたが毎日使うスマホ・SNS・AIサービスの「次のルール」の土台です。
出典・参考資料
- Agenda 2017(IGF MKD 2017 プログラム) — IGF MKD(公式サイト)(参照: 2026-07-11)
- IGF MKD 2017 Messages(成果文書PDF) — IGF MKD(公式サイト)(参照: 2026-07-11)
- Aleksandar Icokaev – Statement of Interest(初代コーディネーターのIGFSA提出声明) — IGFSA (Internet Governance Forum Support Association)(参照: 2026-07-11)
- IGF MKD(全編収録映像・約6時間・2017年11月28日公開) — A1 ONmkd(通信事業者one系YouTubeチャンネル)(参照: 2026-07-11)
- North Macedonia IGF(NRI公式ページ。直接アクセスは403のため検索スニペット経由で確認) — 国連IGF事務局 (UN IGF Secretariat)(参照: 2026-07-11)
※ 記事中の [数字] は出典番号を示します。
関連リンク
- IGF公式(リージョナル/ナショナル一覧): https://www.intgovforum.org/en/content/national-and-regional-igf-initiatives
- 日本IGF: https://japanigf.jp/
- 参考:中澤祐樹ブログ https://nkzw.jp/category/igf/
更新履歴
第1稿投稿 2017年6月7日 10:00(記事コンテンツアップ)
第2稿更新 2026年7月17日 12:32(詳報版へ全面改稿:3行まとめ・議事録ダイジェスト・3分ショートトーク・出典一覧・図解を追加(引用は出典実在のもののみ収録))
— 中澤祐樹

