CRO-IGF 2019(クロアチアIGF) 詳報 — 議事録ダイジェストと3行まとめ

Croatia IGF 2019 ザグレブ — サムネイル

3行まとめ

Croatia IGF 2019 ザグレブ — 3行まとめ

  1. 2019年12月13日、ザグレブ大学電気工学・計算機学部(FER)で第5回CRO-IGFが開かれ、70人が参加しました。議題は5Gネットワークのセキュリティと、人工知能の戦略・法・倫理・言語の2本です。
  2. 5GパネルにはエリクソンとファーウェイのCyberセキュリティ担当が同席し、EUの協調リスク評価と対策「ツールボックス」を議論。AIパネルではクロアチア語をAI時代に残すための言語技術投資が訴えられました。
  3. 「絶対的な安全は幻想」「自律型兵器へのAI利用の規制は急務」という結論は、5G安全保障とAI規制が同時に走り出した2019年欧州の空気をそのまま伝えます。この後コロナ禍で中断し、次回開催は2023年になりました。

こんにちは、中澤です。この記事は CRO-IGF 2019(クロアチアIGF) を、公式発表・議事録・現地報道にあたって整理した詳報です。忙しい方は上の3行まとめと図解だけでも骨子がつかめます。

大会の基本情報(公式発表より)

Croatia IGF 2019 ザグレブ — 大会 基本情報

項目 内容
正式名称 CRO-IGF 2019(クロアチアIGF)
回次 第5回
会期 2019-12-13
会場 ザグレブ大学電気工学・計算機学部(FER)
テーマ 地域の共通課題
参加者 70(公式最終報告書による。政府・産業界・学界はほぼ均等、市民社会は少数)
主催 CRO-IGF組織委員会(この年の議長はナターシャ・グラヴォル=CARNET、開会挨拶はHAKOM評議会議長トンコ・オブリェン)

(出典: 文末の出典一覧を参照)

ディスカッション・ダイジェスト(議事録より)

Croatia IGF 2019 ザグレブ — 議論の見取り図

現地の議事録・セッション記録から、議論の核心部分を抜粋・翻訳してお届けします。

1. 5Gセキュリティ — エリクソンとファーウェイが同席した欧州リスク評価の縮図

取り上げたセッション: パネル「5Gネットワークのセキュリティ」(司会:タマラ・タフラ=クロアチアEU常駐代表部サイバー外交担当。登壇:中央国家デジタル社会開発庁、FER、エリクソン・ニコラ・テスラ、ファーウェイ、HAKOM)

  • EU全域で実施された5Gの協調リスク評価と、2020年初頭に公表予定の対策集「ツールボックス」(機器ベンダーやネットワークの認証制度を含む)が議論の軸となりました。「ベンダーは通信網の中核に特権的にアクセスでき、機器は設置後10〜15年使われ続ける」という構造的リスクが率直に語られています [1][2][3]
  • ファーウェイ側は「事業者の要請時のみ発行されるワンタイムパスワードでアクセス管理する手順を既に導入済み」と説明。一方で「ソースコードの寄託ではセキュリティは高まらない。安全の基盤は検査できない『信頼』であり、標準化(3GPP)とセキュリティ・バイ・デザインの積み重ねしかない」という冷静な整理も示されました [1][2][3]
  • EU議長国就任(2020年前半)を控えたクロアチアにとって5Gセキュリティは外交課題でもあり、国内では周波数割当てとテレビ放送の周波数移行、光ファイバー敷設の法的制約が普及の前提条件として挙げられました [1][2][3]

2. AI戦略・規制・言語 — クロアチア語をAI時代に残せるか

取り上げたセッション: パネル「人工知能の戦略・法制・倫理・言語的側面」(司会:ターニャ・イヴァンチッチ=ヴェチェルニ・リスト紙。登壇:経済省国務長官、PWNザグレブ、ザグレブ大学法学部・哲学部・FER)

  • クロアチア政府のAI戦略文書が2019年末の完成を目標に作成中であることが政府側から報告され、EUのAI倫理指針については「52人のハイレベル専門家グループの大半がIT産業関係者で、市民社会と学界はごく僅か。産業界に議題を握られるのは良くない」という手厳しい批判が出ました [1][2]
  • 「倫理原則の議論はもう十分で、いまや規制の時。優先すべきは自律走行車と軍事用自律型兵器だ」との主張と、「過剰規制は投資を遠ざける」という警戒論が交錯しました [1][2]
  • クロアチア語はEUの24番目の公用語であり、「消費者の50%は母語のサイトでしか買い物をしない」「言語技術に投資しなければデジタル単一市場の分断線の向こう側に取り残される」と、AI国家戦略への言語技術の組み込みが強く提言されました。会場のFERには折しもAIセンターが開設されたばかりでした [1][2]

3. 「100%の安全は存在しない」 — 規制者・企業・利用者の役割分担

取り上げたセッション: 両パネルの結論・全体討論(公式最終報告書の記録より)

  • 「絶対的な安全は存在せず、それは幻想だ。システムの背後には人がいて、人は間違える」「5Gの安全確保で最大の役割を担うのは国家と規制当局であり、個々の利用者にできることは限られる」という整理が両パネルを貫きました [1][2][3][4]
  • フォーラムの結論として「自律型兵器など人権を直接脅かすAI利用の規制が急務」と明記されたのは、この回の特徴です [1][2][3][4]
  • 参加70人のうち市民社会が少数という構図は続いたものの、開会挨拶には2017年に運営から離れたHAKOMの評議会議長オブリェン氏が立ち、RIPE NCCの資金支援も得て、コロナ禍前の最後の回を締めくくりました [1][2][3][4]

3分ショートトーク — よくある疑問に答えます

Q. そもそも何が決まった会議なの?

A. 決定はしない非公式フォーラムですが、EUが5Gセキュリティ対策「ツールボックス」を出す直前に、規制庁・エリクソン・ファーウェイ・大学・政府が同じ壇上でリスクと対策を語った、当時としては珍しい顔合わせの場でした。

Q. 一番モメた点は?

A. 5G機器ベンダーをどこまで信頼できるか、です。「ベンダーは網の中核に特権アクセスを持つ」という構造的リスクの指摘に、ファーウェイはワンタイムパスワード方式の管理を説明。「ソースコード開示では安全は買えない、信頼は検査できない」という本質論も出ました。

Q. 自分に関係ある?

A. あります。5Gベンダーの信頼性問題は日本の政府調達方針にも直結した論点ですし、「小さな言語をAI時代にどう残すか」という言語技術への投資論は、日本語のAI対応を考えるうえでも示唆的です。

Croatia IGF ってどんな会議?(はじめての方へ)

Croatia IGF 2019 ザグレブ — Croatia IGFの位置づけ

Croatia IGFは、地域・国レベルでインターネットガバナンスを議論するIGFイニシアティブのひとつです。

日本の私たちへの影響

この大会の議論は、数年内に日本のデジタル政策・プラットフォームのルール・AI規制に反映 されていきます。2019年大会で確認された方針は、あなたが毎日使うスマホ・SNS・AIサービスの「次のルール」の土台です。

出典・参考資料

  1. Croatian IGF 2019 – Final report (PDF) — CRO-IGF組織委員会(CARNET公式サイト掲載)(参照: 2026-07-11)
  2. Održan 5. Hrvatski forum o upravljanju internetom (CRO-IGF)(第5回開催報告) — CARNET(参照: 2026-07-11)
  3. Održan 5. Hrvatski forum o upravljanju internetom(第5回開催報告) — HAKOM(クロアチア・ネットワーク産業規制庁)(参照: 2026-07-11)
  4. IGF Croatia — Digital Watch Observatory (DiploFoundation)(参照: 2026-07-11)
  5. Prijavite teme za peti Hrvatski forum o upravljanju internetom (CRO-IGF)(議題公募の告知) — CARNET(参照: 2026-07-11)
  6. Forum o upravljanju internetom (CRO-IGF)(公式プロジェクトページ・歴代最終報告書一覧) — CARNET(参照: 2026-07-11)

※ 記事中の [数字] は出典番号を示します。


関連リンク

更新履歴

第1稿投稿 2019年6月2日 15:00(記事コンテンツアップ)

第2稿更新 2026年7月17日 12:32(詳報版へ全面改稿:3行まとめ・議事録ダイジェスト・3分ショートトーク・出典一覧・図解を追加(引用は出典実在のもののみ収録))

— 中澤祐樹