3行まとめ
- 2022年5月26日、ベオグラードの青年会館ドム・オムラディネで、セルビア初の国内IGF「IGF Serbia 2022」がハイブリッド形式で開催されました。2ホール並行で全体討論2本とパネル討論4本が行われました。
- デジタル主権と「スプリンターネット」、サイバーセキュリティ人材、データ経済、デジタルリテラシーを議論し、成果メッセージは「インターネットは一部に分断の要素を含みつつも、一つのグローバルなインターネットであり続ける」とまとめました。
- 国連IGF事務局長が「インターネットガバナンスは自国から始まる」と語った、国内対話の立ち上げそのものが主役の大会です。国内IGFのつくり方という点で、日本の読者にも参考になる事例です。
こんにちは、中澤です。この記事は IGF Serbia 2022 を、公式発表・議事録・現地報道にあたって整理した詳報です。忙しい方は上の3行まとめと図解だけでも骨子がつかめます。
大会の基本情報(公式発表より)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | IGF Serbia 2022 |
| 回次 | 第1回(「IGF Serbia」としての初開催。国連IGFのNRIネットワークに初参加) |
| 会期 | 2022-05-26 |
| 会場 | ドム・オムラディネ(ベオグラード青年会館、ベオグラード) |
| テーマ | 地域の共通課題 |
| 開催形態 | ハイブリッド(Amerikana・Klubの2ホール並行+Zoom・YouTube配信) |
| 主催 | RNIDS(セルビア国家インターネットドメイン登録財団)がホスト。共催: 商業・観光・通信省、Diploファウンデーション、ISOCセルビア(ベオグラード支部)、Gransy |
| 成果文書 | Messages IGF Srbija 2022(成果メッセージ) |
(出典: 文末の出典一覧を参照)
ディスカッション・ダイジェスト(議事録より)
現地の議事録・セッション記録から、議論の核心部分を抜粋・翻訳してお届けします。
1. 国内IGFの船出 — 「インターネットガバナンスは自国から始まる」
取り上げたセッション: 開会セッション(10:00〜10:30。マサンゴ国連IGF事務局長、ジュキッチRNIDS理事、ドブリイェヴィッチ国務長官、キューネRIPEコミュニティ議長)
「インターネットガバナンスは自国から始まる(英語原文 "begins at home" からの翻訳)」
— チェンゲタイ・マサンゴ(国連IGF事務局長) [1][2][5]
- 「IGF Serbia」の名称で、国連IGFのNRI(国内・地域イニシアチブ)ネットワークの一員として開く初めての会合。2021年秋承認の「情報社会・情報セキュリティ発展戦略(〜2026年)」が掲げた目標の実現でもある [1][2][5]
- 前史として2009年のパネル討論「国際情報社会プロセスの中のセルビア」、2012〜2014年の年次対話「セルビア・インターネット対話」があり、その蓄積の上にマルチステークホルダー方式で設立された [1][2][5]
2. デジタル主権とスプリンターネット — インターネットは一つであり続けるか
取り上げたセッション: デジタル主権に関する討論
- 国家によるインターネット分割(スプリンターネット)のリスクとEUのデジタル政策を検討し、オープンで一体のインターネットを守る意義を確認 [1][3]
- 成果メッセージは「インターネットは『スプリンターネット』の要素を一部含みつつも、一つのグローバルなインターネットであり続ける」と総括した [1][3]
3. サイバーセキュリティと人的要因 — 意識・教育・コンピテンシー
取り上げたセッション: パネル討論「サイバーセキュリティと人的要因: 意識・教育・コンピテンシー」(モデレーター: ミラン・セクロスキ)
- 国家CERTのマルコ・クルスティッチ博士、RNIDSのデヤン・ジュキッチ理事、サイバーセキュリティ・ネットワークのネボイシャ・ヨキッチ氏が登壇 [4]
- 「人への投資が不可欠で、知識向上の余地は大きい。主導するのは国家だが、教育プログラムづくりには他の組織の支援も必要」というのが登壇者の共通評価だった(国家CERT報告の要約訳) [4]
4. データ経済とデジタルリテラシー — 市民の権利を守るデジタル化
取り上げたセッション: 並行パネル(データ経済と公共の利益/メディア・人権とデジタルリテラシー/IT起業)
- 個人データに対する利用者のコントロール、学校教育・生涯教育でのメディアスキル向上、行政のデジタル化とIT起業支援を議論 [1][3]
- 成果メッセージは、データ保護枠組みの改善、デジタルリテラシー施策の拡充、官民のサイバーセキュリティ連携、マルチステークホルダー参加の拡大を提言した [1][3]
3分ショートトーク — よくある疑問に答えます
Q. そもそも何が決まった会議なの?
A. 何かを「決める」場ではなく、セルビアで初めて政府・企業・市民社会・技術コミュニティが対等にインターネット政策を話し合った国連IGF公認の国内フォーラムです。議論は成果メッセージにまとめられ、国のデジタル政策への提言になりました。
Q. なぜ2022年が初開催なの?
A. 2021年秋に承認された国家戦略が国内IGFの設立を目標に掲げたためです。2012〜2014年の「セルビア・インターネット対話」などの前史はありますが、国連IGFのNRIネットワークに連なる「IGF Serbia」としてはこれが第1回です。
Q. 日本に関係ある?
A. あります。各国の国内IGFの「初回」の作り方は、日本の国内IGF運営にとって貴重な比較材料です。ドメイン登録管理組織(レジストリ)のRNIDSが事務局を担うセルビア方式は、レジストリと政策対話の関係を考えるうえでも興味深い構図です。
Serbia IGF ってどんな会議?(はじめての方へ)
Serbia IGFは、地域・国レベルでインターネットガバナンスを議論するIGFイニシアティブのひとつです。
日本の私たちへの影響
この大会の議論は、数年内に日本のデジタル政策・プラットフォームのルール・AI規制に反映 されていきます。2022年大会で確認された方針は、あなたが毎日使うスマホ・SNS・AIサービスの「次のルール」の土台です。
出典・参考資料
- Messages IGF Srbija 2022 — IGF Serbia(公式サイト igf.rs)(参照: 2026-07-11)
- About us — IGF Serbia — IGF Serbia(公式サイト igf.rs)(参照: 2026-07-11)
- IGF Srbija 2022(大会アーカイブサイト・プログラム) — IGF Serbia(公式)(参照: 2026-07-11)
- U Beogradu održan srpski forum o upravljanju internetom(ベオグラードでセルビアIGF開催) — セルビア国家CERT(Nacionalni CERT Republike Srbije)(参照: 2026-07-11)
- Eastern European Regional Group — NRI records(Serbia IGF: recognized in 2022) — 国連IGF事務局(参照: 2026-07-11)
※ 記事中の [数字] は出典番号を示します。
関連リンク
- IGF公式(リージョナル/ナショナル一覧): https://www.intgovforum.org/en/content/national-and-regional-igf-initiatives
- 日本IGF: https://japanigf.jp/
- 参考:中澤祐樹ブログ https://nkzw.jp/category/igf/
更新履歴
第1稿投稿 2022年6月1日 12:00(記事コンテンツアップ)
第2稿更新 2026年7月17日 12:32(詳報版へ全面改稿:3行まとめ・議事録ダイジェスト・3分ショートトーク・出典一覧・図解を追加(引用は出典実在のもののみ収録))
— 中澤祐樹

