3行まとめ
- 2023年5月25日、オパティヤのグランドホテル・アドリアティックで第6回CRO-IGFが開かれ、47人が参加しました。ICT国際会議MIPRO 2023(第46回)への併設で、2019年12月の第5回以来、約3年半ぶりの再開です。
- 議題は国連のグローバル・デジタル・コンパクト(GDC)とEUデジタルサービス法(DSA)の2本。DSAの国内実施法ではHAKOMが「デジタルサービス調整官」となる方針が示されました。
- AI団体CroAIや技術者団体NOG.hrが運営に加わり体制も一新。国連プロセスとEU規制という2つの潮流を同じテーブルで論じる、シリーズ再出発の回です。
こんにちは、中澤です。この記事は CRO-IGF 2023(クロアチアIGF) を、公式発表・議事録・現地報道にあたって整理した詳報です。忙しい方は上の3行まとめと図解だけでも骨子がつかめます。
大会の基本情報(公式発表より)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | CRO-IGF 2023(クロアチアIGF) |
| 回次 | 第6回 |
| 会期 | 2023-05-25 |
| 会場 | グランドホテル・アドリアティック(オパティヤ)。ICT国際会議MIPRO 2023(第46回)の独立イベントとして開催 |
| テーマ | 地域の共通課題 |
| 参加者 | 47(公式最終報告書による。政府・産業界・学界はほぼ均等、市民社会は少数) |
| 主催 | CRO-IGF組織委員会(この年のコーディネーターはズドラヴコ・ユキッチ=HAKOM、開会挨拶はHAKOM評議会議長トンコ・オブリェン) |
(出典: 文末の出典一覧を参照)
ディスカッション・ダイジェスト(議事録より)
現地の議事録・セッション記録から、議論の核心部分を抜粋・翻訳してお届けします。
1. グローバル・デジタル・コンパクト(GDC) — 国連プロセスへの期待と懐疑
取り上げたセッション: パネル「GDC, Global Digital Compact」(司会:デジレー・ミロシェヴィッチ=RIPE NCC協力グループ共同議長。導入報告:外務・欧州問題省、CroAI、NOG.hr)
- 国連事務総長が提案するGDCと2024年の未来サミットに向けて、「政策の実装方法を最もよく助言できるのは技術コミュニティであり、政策決定に関与させるべきだ」という原則が繰り返し確認されました [1]
- 一方で「これほど大きな問いを国連の枠組みだけで解決できるのか」という懐疑論も記録され、未来サミットのクロアチア代表団に産業界・学界・市民社会の席を設けるべきだという具体的提案が出ました [1]
- 「この30年のインターネットに相当するものが、次の30年はAIになる」という見立てのもと、AIの定義合意なき規制の難しさや、規制がスタートアップの足かせになる懸念も併せて論じられました [1]
2. デジタルサービス法(DSA) — HAKOMが「調整官」になる日
取り上げたセッション: パネル「DSA, Digital Services Act」(司会:ドマゴイ・マリチッチ=HAKOM法務部長。導入報告:経済・持続可能開発省。登壇:A1クロアチア、Vukmir&Partneri、AST法律事務所)
- 「違法コンテンツからデジタル空間を守り、特に未成年者を保護する」というDSAの狙いと、事業者の役割・規模・影響度で義務が変わる仕組みが解説され、クロアチアでは複数の監督機関で分担しつつHAKOMをデジタルサービス調整官とする実施法を年内に国会へ提出する方針が示されました [1][2][3]
- 通信事業者は「ネット仲介者への規制は伝統的通信事業者との規制バランスを取るもの」と歓迎しつつ、「大手コンテンツ事業者もインフラ投資に金銭的貢献をすべきだ」といわゆる「公正な負担」論を展開。EUのギガビット社会実現には1,700億ユーロが必要という数字も示されました [1][2][3]
- 国内の仲介事業者は約款の整備など実務対応を法律事務所に相談し始めている段階で、クロアチアの水平的なデジタル政策調整の強化が必要との指摘も出ました [1][2][3]
3. 3年半ぶりの再開 — 新しい顔ぶれと残る宿題
取り上げたセッション: 全体運営(公式最終報告書・CARNET/HAKOM開催告知の記録より)
- CARNET公式の報告書一覧に2020〜2022年の報告書はなく、2023年報告書は本回を「第6回」と明記。2019年12月の第5回から約3年半の空白を経た再開であることが公式記録から裏づけられます [1][2][3][4]
- 組織委員会にはAI協会CroAI、ネットワーク技術者団体NOG.hr、通信会社Telemachの代表が新たに加わり、会場もMIPRO会議内の独立イベントという2016年型のオパティヤ開催に戻りました [1][2][3][4]
- デジタル格差は「クロアチアで依然大きな課題」とされ、全国民に基本的なネット接続を保障するには規制と補助金の両輪が必要との認識が共有されました。参加47人のうち市民社会が少数という積年の課題も、報告書は変わらず記録しています [1][2][3][4]
3分ショートトーク — よくある疑問に答えます
Q. そもそも何が決まった会議なの?
A. 決定の場ではありませんが、国連のグローバル・デジタル・コンパクトへのクロアチアの向き合い方と、EUデジタルサービス法の国内実施体制(HAKOMを調整官に)という2つの進行中プロセスが公開の場で説明・討論されました。
Q. 一番モメた点は?
A. 「ネットの費用を誰が払うか」です。通信会社は大手コンテンツ事業者にもインフラ投資への金銭的貢献を求める「公正な負担」論を展開しました。国連プロセスだけで大問題を解決できるのかという懐疑論も率直に出ています。
Q. 自分に関係ある?
A. あります。DSAは日本企業を含むEU域内向けサービス全般に適用され、各国の「調整官」体制はその執行の要です。コロナ禍で止まった対話をどう再開するかという点でも、日本の各種会議体に通じる事例です。
Croatia IGF ってどんな会議?(はじめての方へ)
Croatia IGFは、地域・国レベルでインターネットガバナンスを議論するIGFイニシアティブのひとつです。
日本の私たちへの影響
この大会の議論は、数年内に日本のデジタル政策・プラットフォームのルール・AI規制に反映 されていきます。2023年大会で確認された方針は、あなたが毎日使うスマホ・SNS・AIサービスの「次のルール」の土台です。
出典・参考資料
- Croatian Internet Governance Forum CRO-IGF 2023 – Final Report (PDF) — CRO-IGF組織委員会(CARNET公式サイト掲載)(参照: 2026-07-11)
- Šesti hrvatski Forum o upravljanju internetom(第6回開催告知) — CARNET(参照: 2026-07-11)
- Šesti hrvatski Forum o upravljanju internetom(第6回開催告知) — HAKOM(クロアチア・ネットワーク産業規制庁)(参照: 2026-07-11)
- Forum o upravljanju internetom (CRO-IGF)(公式プロジェクトページ・歴代最終報告書一覧) — CARNET(参照: 2026-07-11)
※ 記事中の [数字] は出典番号を示します。
関連リンク
- IGF公式(リージョナル/ナショナル一覧): https://www.intgovforum.org/en/content/national-and-regional-igf-initiatives
- 日本IGF: https://japanigf.jp/
- 参考:中澤祐樹ブログ https://nkzw.jp/category/igf/
更新履歴
第1稿投稿 2023年6月8日 10:00(記事コンテンツアップ)
第2稿更新 2026年7月17日 12:32(詳報版へ全面改稿:3行まとめ・議事録ダイジェスト・3分ショートトーク・出典一覧・図解を追加(引用は出典実在のもののみ収録))
— 中澤祐樹

