3行まとめ
- 2023年5月15日、第6回IGF MKDがスコピエとオンラインのハイブリッドで開催されました。2022年の空白を挟み、若手IT技術者Marko Paloski新コーディネーターの下での再出発です。
- 生成AIブーム只中の「AIの社会的・法的側面(知財・著作権)」と、地域で実際に起きたサイバー攻撃の事例検証が2本柱。RIPE議長とICANN理事もオンラインで参加しました。
- 創設者から若手への世代交代と、休止を乗り越えた国内IGFの立て直しの記録です。ボランティア頼みの国内フォーラムをどう持続させるかという、日本にも共通する課題を映しています。
こんにちは、中澤です。この記事は IGF MKD 2023(北マケドニアIGF) を、公式発表・議事録・現地報道にあたって整理した詳報です。忙しい方は上の3行まとめと図解だけでも骨子がつかめます。
大会の基本情報(公式発表より)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | IGF MKD 2023(北マケドニアIGF) |
| 回次 | 第6回(2022年は単独開催がなく、初代コーディネーターの声明では「2022/23年の年次イベント」として本会合に統合された(公式アーカイブにも2022年のページは存在しない)) |
| 会期 | 2023-05-15(IGF事務局のNRI記録に「2023年5月15日にスコピエとオンラインで開催」と記載。公式配信映像の公開日も2023年5月15日) |
| 会場 | スコピエ+オンラインのハイブリッド(公式アジェンダ冒頭に「FINKIからの歓迎挨拶」とあり、FINKI(情報科学・計算機工学部)が会場を提供したと示唆されるが、会場名の明記はない。カタログが一時記載していた「オフリド開催」は誤りで、スコピエ開催が正(系列検証で修正済み)) |
| テーマ | 地域の共通課題 |
| 主催 | IGF MKD(新コーディネーター Marko Paloski体制での初開催) |
(出典: 文末の出典一覧を参照)
ディスカッション・ダイジェスト(議事録より)
現地の議事録・セッション記録から、議論の核心部分を抜粋・翻訳してお届けします。
1. 世代交代と再出発 — 2022/23を1回にまとめた立て直し
取り上げたセッション: オープニングセッション(12:00〜12:30)「開会挨拶」「IGとIGFとは何か」
「どんな組織にも新しい血と新しいエネルギーが必要だという考えを大切にしており、2023年、IGF MKDは若いITエンジニアのMarko Paloskiを新コーディネーターに選出しました。私は監督委員会の委員に就きました(英語声明より翻訳)」
— Aleksandar Icokaev(初代コーディネーター、IGFSA提出声明・2023年) [4][3][5]
- 2018年にYouth IGF MKDを立ち上げた学生だったPaloski氏が本体のコーディネーターに就任。開会に続き「IGとIGFとは何か」という入門講義を自ら行い、新規参加者の裾野を広げる構成にしました [4][3][5]
- 初代コーディネーターの声明は2022年について「地元支援者の助けで2022/23年の年次イベントを開催できた」と記しており、単年の空白を1回の合同開催で埋めた形です [4][3][5]
2. AIと知財・著作権 — 生成AIブーム只中の法律論
取り上げたセッション: パネル「人工知能 — 社会的・法的側面(知財と著作権)」(13:00〜14:00、司会: Aleksandar Icokaev)
- ChatGPT公開から半年、法学部のNeda Zdraveva教授、市民団体KonektのNikica Kusinikova氏、知財保護企業ReactのXavier Koehoorn氏が、AI生成物と著作権・知財の関係を議論しました [1][2]
- 2018年から毎回AIを扱ってきた同フォーラムにとって、生成AIの著作権問題は積み上げの延長線上にある議題で、弁護士の初代コーディネーターが司会を務めました [1][2]
3. 地域を襲ったサイバー攻撃 — 実例から学ぶ防御
取り上げたセッション: パネル「サイバーセキュリティ — 地域で実際に起きたサイバー攻撃の経験と課題」(14:00〜15:00、司会: Marko Paloski)
- エストニアのe-Governance AcademyのMilan Sekuloski氏、FINKIのBoro Jakimovski教授、セキュリティ企業CPPのFilip Simeonovski氏が、西バルカン地域で実際に発生したサイバー攻撃の経験と課題を検証しました [1][2]
- 前年に近隣諸国の政府機関へ大規模攻撃が相次いだ直後の時期で、「実例」に基づく防御論は地域の当事者意識を強く反映した議題でした [1][2]
4. 国際コミュニティとの回線 — RIPE議長・ICANN理事・ICANNフェロー
取り上げたセッション: 国際IGコミュニティからのアドレス(12:30〜13:00)
- RIPE議長のMirjam Kühne氏とICANN理事のLeon Sanchez氏がオンラインで挨拶し、小国の国内フォーラムと技術コミュニティ国際機関の距離の近さを示しました [1][2]
- 内務省職員でICANNフェローのOliver Risteski氏がフェローシップ体験を報告し、国際会議への人材送り出しの回路が紹介されました [1][2]
3分ショートトーク — よくある疑問に答えます
Q. そもそも何が決まった会議なの?
A. 決定の場ではなく、1年の休止を経て再開した国内対話フォーラムの第6回です。生成AIと著作権、地域のサイバー攻撃事例という2023年らしい2本柱を、新旧コーディネーターが分担して議論しました。
Q. なぜ2022年は開催されなかったの?
A. ボランティア運営の資金と人手の限界です。創設者の声明は「地元支援者の助けで2022/23年のイベントを開催できた」と率直に記しており、2023年5月の開催が実質的に2022年分を兼ねました。
Q. 自分に関係ある?
A. あります。AI生成物と著作権の議論は日本の文化審議会でも進む論点ですし、小規模フォーラムの世代交代と持続可能性は、日本のIGF活動にとっても他人事ではありません。
North Macedonia IGF ってどんな会議?(はじめての方へ)
North Macedonia IGFは、地域・国レベルでインターネットガバナンスを議論するIGFイニシアティブのひとつです。
日本の私たちへの影響
この大会の議論は、数年内に日本のデジタル政策・プラットフォームのルール・AI規制に反映 されていきます。2023年大会で確認された方針は、あなたが毎日使うスマホ・SNS・AIサービスの「次のルール」の土台です。
出典・参考資料
- Agenda 2023(IGF MKD 2023 プログラム) — IGF MKD(公式サイト)(参照: 2026-07-11)
- IGF MKD 2023(公式配信映像・2023年5月15日公開) — IGF MKD(YouTubeチャンネル)(参照: 2026-07-11)
- North Macedonia IGF(NRI公式ページ。「2023年5月15日にスコピエとオンラインで開催」。直接アクセスは403のため検索スニペット経由で確認) — 国連IGF事務局 (UN IGF Secretariat)(参照: 2026-07-11)
- Aleksandar Icokaev – Statement of Interest(初代コーディネーターのIGFSA提出声明。2022/23合同開催・新体制の経緯) — IGFSA (Internet Governance Forum Support Association)(参照: 2026-07-11)
- IGF MKD 公式サイト(年次アーカイブ一覧。2022年のページは存在しない) — IGF MKD(参照: 2026-07-11)
※ 記事中の [数字] は出典番号を示します。
関連リンク
- IGF公式(リージョナル/ナショナル一覧): https://www.intgovforum.org/en/content/national-and-regional-igf-initiatives
- 日本IGF: https://japanigf.jp/
- 参考:中澤祐樹ブログ https://nkzw.jp/category/igf/
更新履歴
第1稿投稿 2023年6月20日 14:00(記事コンテンツアップ)
第2稿更新 2026年7月17日 12:32(詳報版へ全面改稿:3行まとめ・議事録ダイジェスト・3分ショートトーク・出典一覧・図解を追加(引用は出典実在のもののみ収録))
— 中澤祐樹

