3行まとめ
- 2023年10月8〜12日、京都の国立京都国際会館で第18回IGFが日本初開催。178か国から現地6,279人・オンライン3,000人以上が参加する当時史上最多規模で、テーマは「The Internet We Want〜すべての人を後押しするもの」でした。
- ChatGPT登場後初の大規模IGFとして生成AIのガバナンスが最大の議題となり、岸田首相が広島AIプロセスによる国際指針づくりを表明。成果は「京都IGFメッセージ」と「The Internet We Want」ビジョンペーパーに結実しました。
- ホスト国日本はDFFT(信頼性のある自由なデータ流通)や偽情報対策の議論を主導。京都での議論は国連のグローバル・デジタル・コンパクトとWSIS+20見直しの土台となり、日本のネットガバナンス人材の裾野も広がりました。
こんにちは、中澤です。この記事は グローバルIGF 2023年 京都大会 を、公式発表・議事録・現地報道にあたって整理した詳報です。忙しい方は上の3行まとめと図解だけでも骨子がつかめます。
大会の基本情報(公式発表より)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 回次 | 第18回IGF・日本初開催 |
| 会期 | 2023-10-08 〜 2023-10-12 |
| 会場 | 国立京都国際会館(京都市左京区) |
| テーマ | The Internet We Want – Empowering All People(中澤の求めるインターネット~すべての人を後押しするもの) |
| 現地参加 | 6,279 |
| オンライン参加 | 3,000人以上(総務省発表。現地・オンライン合計9,279人以上) |
| 参加国・地域 | 178 |
| セッション数 | 300以上(dig.watch集計では300セッション・登壇者1,240人) |
| サブテーマ数 | 8 |
| 主催 | 日本政府(総務省)と国連 |
| 成果文書 | 京都IGFメッセージ、リーダーシップパネル「The Internet We Want」ビジョンペーパー |
| 特記 | 現地参加者数は当時のIGF史上最多 |
(出典: 文末の出典一覧を参照)
ディスカッション・ダイジェスト(議事録より)
現地の議事録・セッション記録から、議論の核心部分を抜粋・翻訳してお届けします。
1. 生成AIのガバナンス — 広島AIプロセスとIGFが交差した5日間
取り上げたセッション: 開会式・AI特別セッション(10月9日)ほかAI関連セッション多数
「(生成AIは)様々な分野でイノベーションを加速させ世界に劇的な変化をもたらすことが期待される」
— 岸田文雄(内閣総理大臣) [3][4][8]
- AIは大会全体で最も多く語られたテーマ。dig.watchが全発言320万語を分析した結果、最頻出語は「AI」でした [3][4][8]
- 岸田首相はG7広島AIプロセスの下で、年内に生成AI開発者向けの国際指針・行動規範をまとめる方針を表明。偽画像・偽情報のリスクには「幅広い関係者が役割を果たす必要がある」と提起 [3][4][8]
- 規制と技術標準のバランスが論点となり、「自主的基準と法的枠組みの適切な組み合わせ」やグローバルサウスを含む包摂的なAI統治が求められました [3][4][8]
2. インターネットの分断回避 — 「一つのインターネット」を守れるか
取り上げたセッション: サブテーマ「Avoiding Internet Fragmentation」関連セッション、開会式(10月9日)
「オープン、自由、グローバル、相互運用可能、安全かつ信頼できるインターネットを維持することが必要である」
— 岸田文雄(内閣総理大臣) [4][5][7]
- 地政学的緊張、デジタル保護主義、検閲がインターネットの開放性を脅かしているとの危機感が共有され、「分断リスクを減らすには国際規範が不可欠」と指摘されました [4][5][7]
- 「分断回避」は8つのサブテーマの一つに掲げられ、技術層の分断(国家によるネット遮断など)と規制の分断の両面が議論されました [4][5][7]
3. デジタル格差 — 残る26億人をどうつなぐか
取り上げたセッション: 開会式(グテーレス国連事務総長ビデオメッセージ)、包摂・接続性関連セッション
「接続格差を埋め、残り26億人をオンラインにするため、共に取り組まなければならない」
— アントニオ・グテーレス(国連事務総長、ビデオメッセージ) [4][5][6]
「インターネットガバナンスの議論から完全に排除され続けている20億人の存在を忘れてはならない」
— Terezinha Alves Brito(CGI.br ユースプログラムフェロー) [4][5][6]
- 回線をつなぐだけでなく、端末の入手しやすさやデジタルスキルまで含めた「意味のある接続」への転換が議論されました [4][5][6]
- デジタル技術は温室効果ガス排出の1〜5%を占めるとされ、AIの環境負荷を含む「持続可能性と環境」もサブテーマとして扱われました [4][5][6]
4. 「The Internet We Want」ビジョンペーパー — 望むインターネットの5条件
取り上げたセッション: IGFリーダーシップパネルによる発表・記者ブリーフィング(10月9日)
「『私たちが望むインターネット』をどうやって実現するのか、その方法を考えない限り、手に入れることはできない」
— ヴィント・サーフ(IGFリーダーシップパネル議長) [3][6][7]
- サーフ議長とマリア・レッサ副議長のリーダーシップパネルが、望ましいインターネットの5条件——「全体として一つでオープン」「普遍的で包摂的」「自由に流通し信頼できる」「安全・セキュア」「人権を尊重する」——を提示しました [3][6][7]
- ペーパーは「デジタルガバナンスは経済・社会・環境の発展に不可欠であり、持続可能な開発の重要な実現手段」と位置づけ、グローバル・デジタル・コンパクト(GDC)交渉への主要インプットとなりました [3][6][7]
- GDCの協議段階には7,000を超える主体がインプットを提供したと報告され、2025年のWSIS+20見直しとIGFの将来も併せて議論されました [3][6][7]
5. 日本初開催の意義 — 史上最多の現地参加とDFFT
取り上げたセッション: ハイレベルセッション(DFFT・偽情報・WSIS+20・SDGs)、展示会場「IGF Village」
「インターネットは、生活や社会経済活動にとって不可欠であるだけでなく、民主主義社会の基盤として極めて重要だ」
— 岸田文雄(内閣総理大臣) [1][2][5][7]
- 現地6,279人・オンライン3,000人以上、計9,279人以上が178か国から参加し、現地参加者数は当時のIGF史上最多を記録しました [1][2][5][7]
- 日本提唱のDFFT(信頼性のある自由なデータ流通)や偽情報対策がハイレベルセッションの主要議題に。総務省は10セッションを主催し、展示会場「IGF Village」には世界から72の企業・団体が出展しました [1][2][5][7]
- 慶應義塾大学の村井純氏は1995年の阪神・淡路大震災でインターネットと国際協力の重要性を実感した経験に触れ、日本がインターネットの倫理的利用の出発点になることへの期待を語りました [1][2][5][7]
3分ショートトーク — よくある疑問に答えます
Q. そもそも何が決まった会議なの?
A. IGFは何かを「決める」場ではなく、政府・企業・市民が対等に話し合う国連のフォーラムです。ただし京都での議論は「京都IGFメッセージ」にまとめられ、国連のグローバル・デジタル・コンパクト交渉やWSIS+20見直しに直接届けられました。
Q. 一番の話題は何だった?
A. 生成AIです。ChatGPT登場後初の大規模IGFで、AIは最も多く語られた言葉になりました。岸田首相はG7広島AIプロセスで生成AI開発者向けの国際指針をまとめると表明し、AIルールづくりの機運を世界に示しました。
Q. 日本で開かれたことに意味はあった?
A. 大いにありました。現地参加は当時史上最多の6,279人。日本提唱のDFFT(信頼性のある自由なデータ流通)が主要議題になり、日本の学生や若手エンジニアが世界のインターネットガバナンス議論に直接触れる貴重な機会にもなりました。
グローバルIGF ってどんな会議?(はじめての方へ)
グローバルIGFは、国連の下で2006年から毎年開かれている、インターネットに関わる世界中の人が立場を超えて話し合う国際会議です(マルチステークホルダー方式)。
日本の私たちへの影響
この大会の議論は、数年内に日本のデジタル政策・プラットフォームのルール・AI規制に反映 されていきます。2023年大会で確認された方針は、あなたが毎日使うスマホ・SNS・AIサービスの「次のルール」の土台です。
出典・参考資料
- IGF(インターネット・ガバナンス・フォーラム)— IGF京都2023の開催結果 — 総務省(参照: 2026-07-10)
- Results of the Internet Governance Forum Kyoto 2023 (Press Release) — 総務省 (Ministry of Internal Affairs and Communications)(参照: 2026-07-10)
- UN calls for urgent action to enable opportunities, mitigate risks for information and digital technology — United Nations (closing press release)(参照: 2026-07-10)
- IGF 2023 – Final Report — Digital Watch Observatory (DiploFoundation)(参照: 2026-07-10)
- Opening Ceremony | IGF 2023 (session report) — Digital Watch Observatory (DiploFoundation)(参照: 2026-07-10)
- JPNIC News & Views vol.2037【臨時号】IGF 2023(第18回インターネットガバナンスフォーラム)報告 [後編] — JPNIC(日本ネットワークインフォメーションセンター)(参照: 2026-07-10)
- 【IGF 2023レポート1】中澤の望むインターネットを実現するために——開会式ハイライト — D for Good! by Impress Sustainable Lab.(参照: 2026-07-10)
- 岸田文雄首相「経済対策でAIの開発・導入促進」国連会議で — 日本経済新聞(参照: 2026-07-10)
※ 記事中の [数字] は出典番号を示します。
関連リンク
- IGF公式(リージョナル/ナショナル一覧): https://www.intgovforum.org/en/content/national-and-regional-igf-initiatives
- 日本IGF: https://japanigf.jp/
- 参考:中澤祐樹ブログ https://nkzw.jp/category/igf/
更新履歴
第1稿投稿 2023年10月8日 09:00(記事コンテンツアップ)
第2稿更新 2026年7月10日 14:28(詳報版へ全面改稿:3行まとめ・議事録ダイジェスト・3分ショートトーク・出典一覧・図解を追加(引用は出典実在のもののみ収録))
— 中澤祐樹

