CRO-IGF 2024(クロアチアIGF) 詳報 — 議事録ダイジェストと3行まとめ

Croatia IGF 2024 オパティヤ — サムネイル

3行まとめ

Croatia IGF 2024 オパティヤ — 3行まとめ

  1. 2024年5月22日、オパティヤのグランドホテル・アドリアティックで第7回CRO-IGFがMIPRO 2024会議の独立イベントとして開かれ、約40人が参加しました。議題は市民が4案から選んだサイバーセキュリティ(NIS2指令)とAIの2本です。
  2. NIS2を国内移植したサイバーセキュリティ法(2024年2月15日施行)が中小企業に課す負担と支援策、施行を控えたEU・AI法の実務対応、GPU確保による「AI主権」までが論じられました。
  3. 歴代報告書で常に課題とされた市民社会の参加が、初めて他セクターと均等になったと記録された回。EU規制が現場に着地する瞬間を等身大で観察できる事例です。

こんにちは、中澤です。この記事は CRO-IGF 2024(クロアチアIGF) を、公式発表・議事録・現地報道にあたって整理した詳報です。忙しい方は上の3行まとめと図解だけでも骨子がつかめます。

大会の基本情報(公式発表より)

Croatia IGF 2024 オパティヤ — 大会 基本情報

項目 内容
正式名称 CRO-IGF 2024(クロアチアIGF)
回次 第7回
会期 2024-05-22
会場 グランドホテル・アドリアティック(オパティヤ)。ICT国際会議MIPRO 2024の独立イベントとして開催
テーマ 地域の共通課題
参加者 40(約40人(公式最終報告書は「round 40 participants」と記載)。政府・公共部門、産業界、学界、市民社会の参加が均等だったと報告)
主催 CRO-IGF組織委員会(この年のコーディネーターはイヴァナ・イェラチッチ=CARNET、開会挨拶はHAKOM評議会副議長ミスラヴ・ヘベル)

(出典: 文末の出典一覧を参照)

ディスカッション・ダイジェスト(議事録より)

Croatia IGF 2024 オパティヤ — 議論の見取り図

現地の議事録・セッション記録から、議論の核心部分を抜粋・翻訳してお届けします。

1. NIS2とサイバーセキュリティ法 — 2024年2月施行の新法を現場が読む

取り上げたセッション: パネル「サイバーセキュリティ — NIS2指令」(司会:ティホミル・カトゥリッチ准教授=ザグレブ大学法学部。登壇:A1クロアチア、CARNET/国家CERT、HAKOM、Gama Global、Atos Convergence Creators)

  • NIS2指令を国内移植したサイバーセキュリティ法は2024年2月15日に施行済み。大手通信事業者には大きな変化がない一方、「本当の難所は中小企業。事業規模に見合った合理的な対策セットを決められるよう支援する仕組みが要る」との認識が共有されました [1][2]
  • 新法は経営層の責任を前面に出しており、「被害は事業者自身に生じるため、経営層にはサイバー耐性へ投資する動機がある」と整理。対策の柱は教育・ガバナンス・技術的措置の3本とされ、「教育は大事だが、教育だけでは限界がある。制裁も必要だ」という率直な発言も記録されています [1][2]
  • EU資金を配分する国家調整センター(NKS)の設立が紹介され、高校・大学レベルのセキュリティ競技会で人材を発掘・育成する提案や、専門人材不足をサービス購入で補う現実解も示されました [1][2]

2. AI法 — 世界初の包括的AI規制をクロアチアから見る

取り上げたセッション: パネル「人工知能」(司会:アナ・スモリョ=CARNET広報・CroAI理事。登壇:CARNET AI部門、Parser compliance、より安全なインターネットセンター、ザグレブ大学法学部)

  • 「AI法は技術中立でEU域内にのみ適用。例外が多く、多数の実施法令が必要で、実務での有用性はこれから試される」と冷静に評価される一方、「EUは経済面で自らの首を絞めかねず、他地域の先行を許す」という懸念も記録されました [1][2]
  • 「高リスク用途を規制する一方で、利用者の多くが子どもであるビデオゲームは規制されていない」という保護の空白や、「AIは原作コンテンツを『読む』だけとされるが現行著作権の枠組みは不十分」という創作者側の論点が提起されました [1][2]
  • 「AIアルゴリズムはGPU上で動く。GPUを製造する者が各国のAI普及を左右しかねない以上、国内に十分な計算資源を持ちデータを国内に留める国家主権の視点が要る」という「AI主権」論と、ラップトップやスマホでオフライン動作する小型言語モデルの近未来像が示されました [1][2]

3. 市民が議題を選ぶ — 4案からの公開投票と「均等参加」の初記録

取り上げたセッション: 全体運営(公式最終報告書・HAKOM開催報告の記録より)

  • この年は組織委員会が提示した4つの候補テーマから、一般公開の投票で2テーマ(サイバーセキュリティとAI)を市民が直接選ぶ方式を採用しました [1][2][3]
  • 参加者は約40人と小規模ながら、「政府・公共部門、産業界、学界、市民社会の参加が均等だった」と公式報告書に明記。市民社会の過少参加を毎回書き続けてきた同シリーズの報告書として、初めての記録です [1][2][3]
  • 夕方開催(15:30〜19:10)の新しい時間割、LinkedIn公式ページの開設、RIPE NCCの協賛と、小さな国内IGFを続けるための運営の工夫が随所に見られます [1][2][3]

3分ショートトーク — よくある疑問に答えます

Q. そもそも何が決まった会議なの?

A. 決定機関ではありませんが、施行3か月のサイバーセキュリティ法(NIS2の国内法)と施行間近のEU・AI法という「規制の着地」を、規制当局・企業・大学・市民団体が一緒に読み解いた実務色の濃い回です。

Q. 一番モメた点は?

A. 規制の負担と実効性です。NIS2対応では「難所は中小企業」との見方で一致しつつ、「教育だけでは足りない、制裁も必要」という強硬論も。AI法には「例外だらけで実用性は未知数」「EUの自縄自縛では」と手厳しい評価が並びました。

Q. 自分に関係ある?

A. あります。日本でも重要インフラのセキュリティ義務やAI規制の制度設計が進んでおり、EUの先行事例は必ず参照されます。「GPUを持つ者がAI普及を左右する」というAI主権論は、日本の半導体・計算資源政策ともつながる話です。

Croatia IGF ってどんな会議?(はじめての方へ)

Croatia IGF 2024 オパティヤ — Croatia IGFの位置づけ

Croatia IGFは、地域・国レベルでインターネットガバナンスを議論するIGFイニシアティブのひとつです。

日本の私たちへの影響

この大会の議論は、数年内に日本のデジタル政策・プラットフォームのルール・AI規制に反映 されていきます。2024年大会で確認された方針は、あなたが毎日使うスマホ・SNS・AIサービスの「次のルール」の土台です。

出典・参考資料

  1. Croatian Internet Governance Forum CRO-IGF 2024 – Final Report (PDF) — CRO-IGF組織委員会(CARNET公式サイト掲載)(参照: 2026-07-11)
  2. Održan 7. hrvatski Forum o upravljanju internetom(第7回開催報告) — HAKOM(クロアチア・ネットワーク産業規制庁)(参照: 2026-07-11)
  3. Forum o upravljanju internetom (CRO-IGF)(公式プロジェクトページ・歴代最終報告書一覧) — CARNET(参照: 2026-07-11)

※ 記事中の [数字] は出典番号を示します。


関連リンク

更新履歴

第1稿投稿 2024年6月6日 10:00(記事コンテンツアップ)

第2稿更新 2026年7月17日 12:32(詳報版へ全面改稿:3行まとめ・議事録ダイジェスト・3分ショートトーク・出典一覧・図解を追加(引用は出典実在のもののみ収録))

— 中澤祐樹