3行まとめ
- 2025年4月15〜16日、第5回モルドバIGF(MIGF 2025)がキシナウのBristol Central Park Hotelでハイブリッド開催され、15か国から約40人の専門家が集まりました。
- ICANN副社長が「未来サミットからWSIS+20へ」を基調講演し、EU規制との整合、偽情報とデジタル・インテグリティ、基本的権利を議論。2日目は多言語インターネットの「UAデー」研修に充てられました。
- WSIS+20見直しの年に国内対話を国連プロセスへ接続した回です。ドメイン名やメールの多言語対応(ユニバーサル・アクセプタンス)は、日本語インターネットの使い勝手に直結する話題でもあります。
こんにちは、中澤です。この記事は MIGF 2025(モルドバIGF・第5回) を、公式発表・議事録・現地報道にあたって整理した詳報です。忙しい方は上の3行まとめと図解だけでも骨子がつかめます。
大会の基本情報(公式発表より)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | MIGF 2025(モルドバIGF・第5回) |
| 会期 | 2025-04-15 〜 2025-04-16 |
| 会場 | Bristol Central Park Hotel コングレスホール(キシナウ、Alexander Pushkin通り32)+オンラインのハイブリッド開催 |
| テーマ | 国境なきデジタル対話(現地報道(Logos Press英語版)が掲げた標語。公式サイトはWSIS+20・信頼できるデジタルの未来・基本的権利を主要議題として提示) |
| 参加者 | 40(ベルギー・ドイツ・米国・ウクライナ・ジョージア・カナダ・フランス・オランダ・セルビア・シンガポール・インドなど15か国から約40人の第一線の専門家が参加(現地報道)) |
| 言語 | ルーマニア語・ロシア語・英語 |
| 主催 | Comunitatea Internet協会(会長・MIGFコーディネーター: アレクセイ・マルチュク)。通信規制庁(ANRCETI)と政府の情報技術・サイバーセキュリティ機関(STISC)が共催 |
(出典: 文末の出典一覧を参照)
ディスカッション・ダイジェスト(議事録より)
現地の議事録・セッション記録から、議論の核心部分を抜粋・翻訳してお届けします。
1. WSIS+20とIGFの将来 — ICANN副社長が基調講演
取り上げたセッション: 基調講演「From the Summit of the Future to WSIS+20」(4月15日 10:20〜10:50)
- ICANNのヴェニ・マルコフスキ副社長が「未来サミットからWSIS+20へ」と題して基調講演し、国連の未来サミット・グローバル・デジタル・コンパクトから2025年末のWSIS+20見直しに至る国際プロセスと国内対話の接続を示した [1][2]
- 国連IGF事務局のアニャ・ゲンゴ氏も開会に登壇し、WSIS+20とグローバル・デジタル・コンパクトをめぐる節目の年における国別IGFの役割が意識された [1][2]
2. 信頼できるデジタルの未来へ — EU規制との整合と持続可能な協力
取り上げたセッション: セッション1「Strategic Frameworks and Partnerships for a Trusted Digital Future」(4月15日 10:50〜12:10)
「デジタル発展に必要なのは技術的な解決策だけではない。持続可能な協力のモデルもまた必要だ」
— アレクセイ・マルチュク(MIGFコーディネーター・Comunitatea Internet会長)※現地報道(英語記事)からの翻訳 [1][2]
- セキュリティ標準・データ保護・欧州規制との整合をめぐる部門横断の協力が主題となり、ANRCETIのセルジウ・ガイブ長官、ヴィタリエ・タルレフ氏、RIPE NCCのオレクシー・セメニャカ氏、中央アジアIGF議長のタットゥ・マンベタリエワ氏らが登壇した [1][2]
- ヴィクトル・スピヌ議員は、デジタルエコシステムづくりをEU統合と結びついた政治的優先課題と位置づけた(現地報道) [1][2]
3. 偽情報とデジタル・インテグリティ — AI生成コンテンツと選挙の公正
取り上げたセッション: セッション2「Toward a Trustworthy Online Information Environment: Strengthening Digital Integrity in Moldova」(4月15日 12:10〜13:20)
- 偽情報・誤情報、AI生成コンテンツ、選挙の公正性、メディアリテラシー、子どもの保護が一括して議論され、Realitatea Media Groupのドゥミトル・ティラCEOが進行した [1]
- Access Nowのアナスタシヤ・ジルモント氏、ARTICLE 19のヨアンナ・シマンスカ氏ら国際的な権利擁護団体が参加し、情報環境の健全化と表現の自由の両立が論点となった [1]
4. デジタル時代の基本的権利 — 憲法裁判所と市民社会の対話
取り上げたセッション: セッション3「Fundamental Rights and Freedoms in the Era of Digital Innovation」・セッション4「Integrated Digital Safety」(4月15日午後)
- 憲法裁判所のヴァレリウ・クチュク氏の進行で法律家パネルが行われ、憲法上の権利、デジタル格差と農村部のアクセス、AI規制、デジタル主権が議論された [1]
- 続くセッションではSecDev財団のマイケル・グレイ氏の進行で、市民社会組織へのサイバー脅威、デジタル衛生、組織的レジリエンスの文化づくりが扱われた [1]
5. ユニバーサル・アクセプタンス・デー — 多言語インターネットの実装研修
取り上げたセッション: サイドイベント「Universal Acceptance Day」(4月16日、ICANN・UNESCO・UASG共催)
- 2日目はユニバーサル・アクセプタンス(UA)デーに充てられ、ICANN理事会のトリプティ・シンハ議長、テリーザ・スワインハート上級副社長、UASGのアニル・クマール・ジェイン議長、電子政府庁のニコレタ・コロメーツ氏らが開会に参加した [1]
- 国際化ドメイン名(IDN)・国際化メールアドレス(EAI)の技術研修がICANNのUAプログラム担当アーント・グルブランセン氏の指導で行われ、Java・JavaScript・Pythonのプログラミング演習と修了証の授与まで実施された [1]
3分ショートトーク — よくある疑問に答えます
Q. 何が話し合われたの?
A. 2025年末の国連WSIS+20見直しを見据えて、EU規制との整合、偽情報対策、デジタル時代の基本的権利を議論しました。2日目はドメイン名やメールをあらゆる言語で使えるようにする「ユニバーサル・アクセプタンス」の技術研修です。
Q. 規模はどのくらい?
A. 15か国から約40人の専門家が参加するコンパクトな対話です。ただしICANN理事会議長や国連IGF事務局が参加するなど、規模の割に国際的な顔ぶれは重厚でした。
Q. 日本に関係ある?
A. あります。日本語ドメインや日本語メールアドレスが一部サービスで弾かれる問題は、まさにこの「ユニバーサル・アクセプタンス」の課題です。WSIS+20でIGF体制の行方が決まる年に、小国が国内対話を国連へつないだ手際も参考になります。
Moldova IGF ってどんな会議?(はじめての方へ)
Moldova IGFは、地域・国レベルでインターネットガバナンスを議論するIGFイニシアティブのひとつです。
日本の私たちへの影響
この大会の議論は、数年内に日本のデジタル政策・プラットフォームのルール・AI規制に反映 されていきます。2025年大会で確認された方針は、あなたが毎日使うスマホ・SNS・AIサービスの「次のルール」の土台です。
出典・参考資料
- Moldova Internet Governance Forum 2025(第5回公式サイト) — Comunitatea Internet協会(MIGF事務局)(参照: 2026-07-11)
- Moldova IGF 2025: digital dialogue without borders — Logos Press(モルドバ、英語版)(参照: 2026-07-11)
- Moldova Internet Governance Forum 2025 — IGF Events grant — Internet Society Foundation(参照: 2026-07-11)
- Moldova IGF — NRI record — 国連IGF事務局 (UN IGF Secretariat)(参照: 2026-07-11)
- Moldova Internet Governance Forum 2024(第4回公式サイト・2025年4月15〜16日開催予定の告知を掲載) — Comunitatea Internet協会(MIGF事務局)(参照: 2026-07-11)
※ 記事中の [数字] は出典番号を示します。
関連リンク
- IGF公式(リージョナル/ナショナル一覧): https://www.intgovforum.org/en/content/national-and-regional-igf-initiatives
- 日本IGF: https://japanigf.jp/
- 参考:中澤祐樹ブログ https://nkzw.jp/category/igf/
更新履歴
第1稿投稿 2025年6月5日 16:00(記事コンテンツアップ)
第2稿更新 2026年7月17日 12:32(詳報版へ全面改稿:3行まとめ・議事録ダイジェスト・3分ショートトーク・出典一覧・図解を追加(引用は出典実在のもののみ収録))
— 中澤祐樹

