3行まとめ
- 2025年7月3日、第14回韓国インターネットガバナンスフォーラム(KrIGF 2025)が6年ぶりに世宗大学校(ソウル)へ戻り、「インターネットガバナンスの未来、我々が進むべき道」を掲げてAI・ガバナンス・デジタル責任の3トラック9セッションをハイブリッドで行いました。
- ガザ空爆で使われたAI「Lavender」を入り口に軍事AIと人権を問うセッション、WSIS+20見直しへの韓国の対応、同年4月のSKテレコムUSIM情報大規模流出を「存在論的安保」から読み解くセッションなど、時事直結の議題が並びました。
- IGFのマンデート更新が懸かるWSIS+20への各国対応は日本にも共通の宿題です。通信会社の大規模情報流出を市民の「不安」の問題として議論する切り口も、日本の事故対応議論に示唆を与えます。
こんにちは、中澤です。この記事は 第14回 韓国インターネットガバナンスフォーラム(KrIGF 2025) を、公式発表・議事録・現地報道にあたって整理した詳報です。忙しい方は上の3行まとめと図解だけでも骨子がつかめます。
📍 世宗大学校での開催は2019年の第8回以来6年ぶり
大会の基本情報(公式発表より)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | 第14回 韓国インターネットガバナンスフォーラム(KrIGF 2025) |
| 回次 | 第14回 |
| 会期 | 2025-07-03 |
| 会場 | 世宗大学校 広開土館B1(ソウル)、オンライン参加併用(09:00〜18:00) |
| テーマ | インターネットガバナンスの未来、我々が進むべき道(인터넷거버넌스의 미래, 우리가 가야할 길) |
| セッション数 | 9 |
| 主催 | 韓国インターネット振興院(KISA)と多者間インターネットガバナンス協議会(KIGA)など20の機関・団体・企業が共同開催 |
(出典: 文末の出典一覧を参照)
ディスカッション・ダイジェスト(議事録より)
現地の議事録・セッション記録から、議論の核心部分を抜粋・翻訳してお届けします。
1. 軍事AIと人権 — ガザの「Lavender」から韓国の自律兵器まで
取り上げたセッション: セッション7「人権と平和を脅かす軍事人工知能、このままでよいのか」(AIトラック、司会:AI倫理レター)
- パランティアなど軍需企業による国防分野へのAI拡散と、イスラエルのガザ空爆で使われたAIシステム「Lavender(ラベンダー)」を例に、AIが人命に関わる決定に直接関与する段階に入った現実が提起されました [4]
- 韓国でも無人機・自律型兵器体系・AI基盤の指揮統制システムの導入が急速に進む一方、人権・社会への影響の議論が不足していると問題提起されました [4]
- KISAのセキュリティ技術部長から国際アムネスティ韓国支部、パレスチナ平和連帯、海外のテック労働者運動の当事者まで、極めて多様な顔ぶれが同席しました [4]
2. WSIS+20とIGFの存続 — 20年目の節目に韓国はどう動くか
取り上げたセッション: セッション8「WSIS+20と今後の国内外グローバル・インターネットガバナンス議論への対応方向」(ガバナンストラック、司会・基調:情報通信政策研究院)
- 世界情報社会サミット(WSIS)から20年の見直し(WSIS+20)を前に、WSISプロセスとIGFの役割強化、IGFの持続可能な財源確保と包摂性強化への韓国の立場が討論されました [5]
- 情報通信政策研究院(KISDI)が司会・基調を務め、KISA・カカオ・進歩ネットワークセンター・学界が官民市民の立場から対応方向を出し合いました [5]
- デジタル格差の解消と公平なアクセスの実現も、WSISの原点に立ち返る論点として扱われました [5]
3. SKテレコムUSIM流出と「存在論的安保」 — 不安の時代の情報保護
取り上げたセッション: セッション9「不安の時代、あなたの情報は安寧ですか?」(デジタル責任トラック)
- 2025年4月22日に発覚したSKテレコム加入者のUSIM情報大規模流出を受け、技術的被害にとどまらない利用者の「不安」——企業の不十分な対応と不確実な情報の拡散が増幅させた心理的影響——に焦点を当てました [6]
- 個人情報の流出を個人のアイデンティティの安定への脅威と捉える「存在論的安保」の概念を導入し、不安の責任の所在(個人か社会構造か)と現行法制度の対応の十分性を議論しました [6]
- 大学の研究者が発表し、KISA・業界・法曹・市民団体の討論者が応じる構成で、事故を制度論に接続しました [6]
4. AI時代の信頼 — ボイスフィッシングからデジタルツイン、ドメイン開放まで
取り上げたセッション: セッション6「AI基盤ボイスフィッシングの進化とデジタル信頼体系への脅威」、セッション3「デジタルツイン技術の二つの顔」、セッション4「韓国AI倫理の大衆的言説の現在と未来」、登録制限ドメイン開放政策セッションほか
「AIが社会全般に深く浸透し、予測できないイシューが連日発生している。(多様な利害関係者間の議論が)合理的なインターネット公共政策樹立の重要な基盤となる(韓国語発言の翻訳・抄録)」
— パク・ジョンソプ(KISA 韓国インターネット情報センター長) [2][3]
- AIを使ったボイスフィッシングの進化がデジタル信頼体系への脅威として独立セッション化され、AI倫理の大衆的言説やデジタルツイン技術の明暗もそれぞれ議題になりました [2][3]
- ガバナンストラックでは登録制限ドメイン名の開放政策も討議され、AI時代の信頼問題と伝統的な資源管理の議題が9セッションに同居しました [2][3]
3分ショートトーク — よくある疑問に答えます
Q. 2025年の一番の論点は?
A. 「インターネットガバナンスそのものの将来」です。国連でIGFの存続・強化が問われるWSIS+20見直しの年にあたり、韓国としてどう動くかを官民市民が同じテーブルで議論しました。
Q. 一番生々しい議題は?
A. SKテレコムのUSIM情報流出です。数千万人規模の加入者に関わる事故を、技術問題ではなく「人々の不安」と「アイデンティティの安全」の問題として議論した切り口が印象的でした。
Q. 日本に関係ある?
A. あります。WSIS+20への対応は日本政府・日本のIGFコミュニティも同じ宿題を抱えていましたし、通信会社の大規模流出事故への社会的対応は日本でも他人事ではありません。軍事AIの議論も安全保障環境を共有する日本に直結します。
Korea IGF ってどんな会議?(はじめての方へ)
Korea IGFは、地域・国レベルでインターネットガバナンスを議論するIGFイニシアティブのひとつです。
日本の私たちへの影響
この大会の議論は、数年内に日本のデジタル政策・プラットフォームのルール・AI規制に反映 されていきます。2025年大会で確認された方針は、あなたが毎日使うスマホ・SNS・AIサービスの「次のルール」の土台です。
出典・参考資料
- 2025년 제14회 한국인터넷거버넌스포럼(KrIGF) 개최(KISAプレスリリース) — 韓国インターネット振興院(KISA)(参照: 2026-07-11)
- '한국인터넷거버넌스포럼' 개최…AI·거버넌스·디지털책임 논의(韓国IGF開催、AI・ガバナンス・デジタル責任を議論) — 디지털데일리(Digital Daily)(参照: 2026-07-11)
- 2025년 제14회 한국 인터넷거버넌스포럼(KrIGF) セミナー情報 — 大韓民国国会図書館(NANET)(参照: 2026-07-11)
- [세션7] 인권과 평화를 위협하는 군사 인공지능(人権と平和を脅かす軍事人工知能) — KrIGF事務局(韓国インターネットガバナンスフォーラム公式サイト)(参照: 2026-07-11)
- [세션8] WSIS+20와 향후 국내외 글로벌 인터넷거버넌스 논의 대응 방향 — KrIGF事務局(韓国インターネットガバナンスフォーラム公式サイト)(参照: 2026-07-11)
- [세션9] 불안의 시대, 당신의 정보는 안녕하십니까?(不安の時代、あなたの情報は安寧ですか) — KrIGF事務局(韓国インターネットガバナンスフォーラム公式サイト)(参照: 2026-07-11)
- 2025 한국인터넷거버넌스포럼(KrIGF) 국문보고서/영문보고서(公式報告書・韓国語/英語) — KrIGF事務局(韓国インターネットガバナンスフォーラム公式サイト)(参照: 2026-07-11)
※ 記事中の [数字] は出典番号を示します。
関連リンク
- IGF公式(リージョナル/ナショナル一覧): https://www.intgovforum.org/en/content/national-and-regional-igf-initiatives
- 日本IGF: https://japanigf.jp/
- 参考:中澤祐樹ブログ https://nkzw.jp/category/igf/
更新履歴
第1稿投稿 2025年7月1日 11:00(記事コンテンツアップ)
第2稿更新 2026年7月16日 20:09(詳報版へ全面改稿:3行まとめ・議事録ダイジェスト・3分ショートトーク・出典一覧・図解を追加(引用は出典実在のもののみ収録))
— 中澤祐樹

