3行まとめ
- 2015年5月6日、首都ザグレブのザグレブ大学電気工学・計算機学部(FER)で第1回クロアチアIGF(CRO-IGF 2015)が開かれました。規制庁HAKOMの主導で政官学民の組織委員会が発足し、41人が参加しました。
- 議題は.hrドメイン管理とインターネットガバナンス総論の2本。IANA監督権限移管やICANNの説明責任、EU司法裁判所によるデータ保全指令の無効判決が論じられ、マルチステークホルダーモデル支持で一致しました。
- 直前にネット中立性が議題から外れ、市民社会の参加も薄いなど、初回ならではの課題も率直に記録された回。国別IGFの「立ち上げの実像」を知る恰好の事例です。
こんにちは、中澤です。この記事は CRO-IGF 2015(クロアチアIGF) を、公式発表・議事録・現地報道にあたって整理した詳報です。忙しい方は上の3行まとめと図解だけでも骨子がつかめます。
大会の基本情報(公式発表より)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | CRO-IGF 2015(クロアチアIGF) |
| 回次 | 第1回(初開催) |
| 会期 | 2015-05-06 |
| 会場 | ザグレブ大学電気工学・計算機学部(FER) |
| テーマ | 地域の共通課題 |
| 参加者 | 41(公式最終報告書による。政府・産業界・学界はほぼ均等、市民社会の参加は少数と報告書自身が記載) |
| 主催 | 規制庁HAKOMの主導で発足した政府・学界・産業界・市民社会の4者構成の組織委員会 |
(出典: 文末の出典一覧を参照)
ディスカッション・ダイジェスト(議事録より)
現地の議事録・セッション記録から、議論の核心部分を抜粋・翻訳してお届けします。
1. 「.hr」ドメイン管理 — 国別ドメインの運営を公開の場へ
取り上げたセッション: セッション「インターネットドメイン管理」(報告:ナターシャ・グラヴォル、共同司会:グラヴォル&ゴルダン・グレデツ)
- CARNet副CEOのナターシャ・グラヴォル氏が、.hrドメインの運営体制と、周辺国・同規模国との比較や今後の発展計画を報告しました [1][3]
- 続く全体討論では、DNSセキュリティ拡張(DNSSEC)の.hr運用への導入から、ドメイン名の濫用的登録への救済策まで、幅広い論点が出されました [1][3]
2. インターネットガバナンス総論 — IANA移管の年に国内対話を開く
取り上げたセッション: 導入報告(ミスラヴ・ヘベル=HAKOM、アンドレア・ベッカリ=ICANN)とパネル討論(司会:アナ・カタリニッチ・ムツァロ=HAKOM)
- HAKOMのヘベル氏が世界のIG生態系とIANA監督権限移管・ICANN説明責任強化・IGFマンデート延長の現状を、ICANNブリュッセル事務所のベッカリ氏がICANN側の見方を解説しました [1][2]
- パネルでは政府代表が「開かれた自由なインターネット」を保ちつつ政府が公的責務を果たせる制度設計を、産業界代表が「許可のいらないイノベーション基盤」の維持を訴え、法学者マルコ・ユリッチ氏はEU司法裁判所によるデータ保全指令無効判決の影響を指摘しました [1][2]
- 参加者全員がマルチステークホルダーモデルへの支持を表明し、次回以降はテーマと並行セッションを増やし、市民社会の参加を広げるべきだとの声が相次ぎました [1][2]
3. 41人の「最初の一歩」 — 消えたネット中立性と市民社会の空白
取り上げたセッション: 全体運営・参加者フィードバック(公式最終報告書の記録より)
「第1回クロアチア・インターネットガバナンスフォーラムは、国内の多様なステークホルダーを同じテーブルに着かせ、インターネットの未来を議論させることに成功した(公式報告書のフィードバック欄より、英語からの翻訳)」
— ティホミル・カトゥリッチ(ザグレブ大学法学部) [1]
「より多くの人々、とりわけ起業家が参加しなかったのは残念だ。時間も短すぎ、多くの論点が手つかずのまま残った(公式報告書のフィードバック欄より、英語からの翻訳)」
— フルヴォイェ・ハジッチ(エリクソン・ニコラ・テスラ) [1]
- 当初は3議題の予定でしたが、主催者の一角であるHAKOMの判断でネット中立性が直前に議題から外され、初回は2議題での開催となりました [1]
- 参加41人の内訳は政府・産業界・学界がほぼ均等だった一方、市民社会はごく僅かで、報告書自身が「今後の課題」と率直に認めています [1]
3分ショートトーク — よくある疑問に答えます
Q. そもそも何が決まった会議なの?
A. 何も決めない非公式の対話フォーラムです。ただ、規制庁・省庁・大学・企業・市民団体が初めて同じテーブルでインターネットの運営を議論する場がクロアチアに生まれ、以後毎年続く系列の出発点になりました。
Q. 一番モメた点は?
A. 対立よりも「欠けたもの」が目立った回です。主催者側のHAKOMが直前にネット中立性を議題から外し、市民社会の参加者もごく僅か。公式報告書自身がこれらを課題として率直に記録しています。
Q. 自分に関係ある?
A. 国別ドメイン(.hr)の管理やDNSSEC導入の議論は、日本の.jpにもそのまま通じるテーマです。人口400万の国が国内対話をどう立ち上げたかは、国内・地域IGFづくりの参考例にもなります。
Croatia IGF ってどんな会議?(はじめての方へ)
Croatia IGFは、地域・国レベルでインターネットガバナンスを議論するIGFイニシアティブのひとつです。
日本の私たちへの影響
この大会の議論は、数年内に日本のデジタル政策・プラットフォームのルール・AI規制に反映 されていきます。2015年大会で確認された方針は、あなたが毎日使うスマホ・SNS・AIサービスの「次のルール」の土台です。
出典・参考資料
- Croatian IGF 2015 – Final report (PDF) — CRO-IGF組織委員会(CARNET公式サイト掲載)(参照: 2026-07-11)
- The First Croatian Internet Governance Forum announced (Croatian IGF) — HAKOM(クロアチア・ネットワーク産業規制庁)(参照: 2026-07-11)
- Prvi Hrvatski IGF(第1回クロアチアIGF開催ニュース) — domene.hr(CARNET運営の.hrドメインポータル)(参照: 2026-07-11)
- Forum o upravljanju internetom (CRO-IGF)(公式プロジェクトページ・歴代最終報告書一覧) — CARNET(参照: 2026-07-11)
※ 記事中の [数字] は出典番号を示します。
関連リンク
- IGF公式(リージョナル/ナショナル一覧): https://www.intgovforum.org/en/content/national-and-regional-igf-initiatives
- 日本IGF: https://japanigf.jp/
- 参考:中澤祐樹ブログ https://nkzw.jp/category/igf/
更新履歴
第1稿投稿 2015年6月7日 10:00(記事コンテンツアップ)
第2稿更新 2026年7月17日 12:32(詳報版へ全面改稿:3行まとめ・議事録ダイジェスト・3分ショートトーク・出典一覧・図解を追加(引用は出典実在のもののみ収録))
— 中澤祐樹

