3行まとめ
- 2025年4月7日、第15回ロシアIGF(RIGF 2025)がモスクワのSoglasieホールでハイブリッド開催され、現地300人超・オンライン2,000人超が参加しました。テーマは「主権とグローバルな挑戦のはざま」のデジタル安全保障です。
- フィッシング・ディープフェイク・オンライン詐欺への対策、子どもの安全、衛星インターネット、IT人材が主要議題となり、2026年稼働予定の国家詐欺対策システムなどの政策も発表されました。
- 主催者が「RIGFは世界のIGF系で最古級の国内フォーラム」と強調した節目の回で、国民保護を前面に出した治安型アジェンダへの傾斜は、各国のネット政策の潮流を映す鏡でもあります。
こんにちは、中澤です。この記事は RIGF 2025(ロシアIGF・第15回) を、公式発表・議事録・現地報道にあたって整理した詳報です。忙しい方は上の3行まとめと図解だけでも骨子がつかめます。
大会の基本情報(公式発表より)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | RIGF 2025(ロシアIGF・第15回) |
| 回次 | 第15回 |
| 会期 | 2025-04-07(本会合は4月7日。4月8〜9日には恒例の「教育デー」を実施) |
| 会場 | Soglasieホール(モスクワ) |
| テーマ | 地域の共通課題 |
| セッション数 | 6(全体会合「ルネットのデジタル安全保障 — 主権とグローバルな挑戦のはざまで」を含む6セクション) |
| 開催形態 | ハイブリッド(現地参加300人超、オンライン参加2,000人超) |
| 表彰 | Virtuti Interneti賞はパーヴェル・フラムツォフ氏(ルネット草創期の技術者・MSK-IX DNSプロジェクトディレクター)に授与 |
| 主催 | ccTLD .RU/.РФ調整センター、グローバルIT協力センター(CGITC)共催 |
| 成果文書 | 会合報告書を国連IGF(NRIsレポート)に提出 |
| 特記 | .RUドメイン31周年・.РФドメイン15周年(RIGFは例年.RU登録記念日=4月7日前後に開催) |
(出典: 文末の出典一覧を参照)
ディスカッション・ダイジェスト(議事録より)
現地の議事録・セッション記録から、議論の核心部分を抜粋・翻訳してお届けします。
1. ルネットのデジタル安全保障 — 主権とグローバルな挑戦のはざまで
取り上げたセッション: 全体会合「Digital Security of Runet: Between Sovereignty and Global Challenges」(4月7日)
- 大統領府のタチヤナ・マトヴェエワ局長は、制裁下にあってもルネットは「強靱性と積極的な成長」を示していると総括した(英語報道の引用の和訳) [1][2]
- サイバー脅威の新しい構図、AIの悪用防止、国産IT産業の育成とグローバル企業との関係のバランスが全体会合の論点とされた [1][2]
- 「主権」と「グローバル」の均衡というセッション名自体が、2022年以降のロシアのネット政策の立ち位置を要約している [1][2]
2. 詐欺・フィッシング・ディープフェイク — 数字で示された脅威と国家対策
取り上げたセッション: サイバーセキュリティ関連セクション(4月7日)
- デジタル発展省のアレクサンドル・ショイトフ次官が、2026年に稼働予定の国家詐欺対策(アンチフロード)システムの計画を明らかにした [1]
- 下院議員アントン・ネムキンは、直近1年で約7万件のフィッシングサイトへのアクセスが制限されたと報告した [1]
- ファクトチェック専門家の集計として、2025年の年初だけで61件のユニークなディープフェイクが確認され、これは2024年通年の67%に相当すると紹介された [1]
3. 子どもの安全と偽情報対策 — 保護型アジェンダの前面化
取り上げたセッション: 子どもの安全・偽情報対策セクション(4月7日)
- 「デジタル環境の子ども保護アライアンス」のエリザヴェータ・ベリャコワ代表が、14歳未満のSNS利用における保護者の責任を強調した [1][2]
- 偽情報対策のセクションでは、ディープフェイクを含むデジタル偽情報への対抗原則が議論され、教育・リテラシー施策と遮断・規制施策が並置された [1][2]
- 安全・保護を軸としたアジェンダ構成は、表現の自由よりも利用者保護を前面に出す近年のロシアの規制路線を反映している [1][2]
4. 衛星インターネットと「新しい条件下の」国際協力
取り上げたセッション: 衛星インターネット・国際協力セクション(4月7日)
- 国営衛星通信会社(GPKS)のアレクセイ・ヴォリン社長やSitronics Spaceのミラナ・エレルドワら、宇宙通信分野の登壇者が国産衛星インターネット網の開発状況を報告した [2][1]
- Starlinkなど西側の衛星ブロードバンドが利用できない環境での接続性確保という、制裁下ならではの技術課題が背景にある [2][1]
- 「新しい条件下の国際協力」セクションには地域通信共同体(RCC)の代表も参加し、旧ソ連圏を軸にした協力枠組みが語られた [2][1]
5. 15回目の節目 — 「最古級の国内IGF」とルネット草創期の記憶
取り上げたセッション: 開会あいさつ・Virtuti Interneti授賞式と受賞者講演(4月7日)
「RIGFは、世界のIGFシステムの中で最も歴史ある国内フォーラムの一つです」
— アンドレイ・ヴォロビヨフ(ccTLD .RU/.РФ調整センター所長)※英語報道からの和訳 [1][3]
「1980年代末から90年代初頭のインターネットには、プライバシー崇拝も、あらゆる場所での暗号化もありませんでした」
— パーヴェル・フラムツォフ(Virtuti Interneti受賞者講演)※露語原文からの翻訳 [1][3]
- RIGFは.RUドメインの登録記念日(4月7日)に合わせて開かれる伝統があり、この回は.РФドメイン15周年とも重なった。第1回は2010年で、今回が15回目にあたる [1][3]
- Virtuti Interneti賞は、1996年にロシア語圏初期のTCP/IP解説書を著し、チェルノブイリ対応の情報システム開発にも関わったルネット草創期の技術者パーヴェル・フラムツォフ氏に贈られた [1][3]
- 受賞講演は、専門家の交流空間だった初期インターネットが商業空間化し安全脅威を抱え込んだ歴史を振り返り、「疑心」を越えて新しい機会へ進むべきだと結んだ [1][3]
3分ショートトーク — よくある疑問に答えます
Q. どんな回だった?
A. 15回目の節目の大会です。現地300人超・オンライン2,000人超が参加し、議題はフィッシング・ディープフェイク・子どもの安全など「守り」の話題が中心でした。国家詐欺対策システム(2026年稼働予定)の発表もありました。
Q. 国際的にはどういう位置づけ?
A. 主催者は「世界のIGF系で最古級の国内フォーラム」と国際的正統性を強調し、会合報告書を国連IGFに提出しています。一方で登壇者はほぼ国内勢で、国際協力のセクションも旧ソ連圏中心でした。
Q. 日本に関係ある?
A. ディープフェイク激増(年初だけで前年比67%)や詐欺対策の国家システム化は、日本でも進む議論の先行例・比較例です。制裁下のロシアが衛星インターネットの国産化を急ぐ様子も、通信安全保障の教材になります。
Russia IGF ってどんな会議?(はじめての方へ)
Russia IGFは、地域・国レベルでインターネットガバナンスを議論するIGFイニシアティブのひとつです。
日本の私たちへの影響
この大会の議論は、数年内に日本のデジタル政策・プラットフォームのルール・AI規制に反映 されていきます。2025年大会で確認された方針は、あなたが毎日使うスマホ・SNS・AIサービスの「次のルール」の土台です。
出典・参考資料
- 15th Russian Internet Governance Forum was held in Moscow — Izvestia(イズベスチヤ英語版)(参照: 2026-07-11)
- Опубликована программа Российского форума по управлению интернетом(RIGF 2025プログラム公表・露語) — Lenta.ru(参照: 2026-07-11)
- Награда Virtuti Interneti вручена Павлу Храмцову(フラムツォフ氏にVirtuti Interneti授与・露語) — ccTLD .RU/.РФ調整センター (Coordination Center for TLD .RU/.РФ)(参照: 2026-07-11)
- RIGF 2025: Russian Internet Governance Forum — Meeting Report — 国連IGF事務局 (UN IGF Secretariat, NRIs filedepot)(参照: 2026-07-11)
※ 記事中の [数字] は出典番号を示します。
関連リンク
- IGF公式(リージョナル/ナショナル一覧): https://www.intgovforum.org/en/content/national-and-regional-igf-initiatives
- 日本IGF: https://japanigf.jp/
- 参考:中澤祐樹ブログ https://nkzw.jp/category/igf/
更新履歴
第1稿投稿 2025年6月11日 12:00(記事コンテンツアップ)
第2稿更新 2026年7月17日 12:32(詳報版へ全面改稿:3行まとめ・議事録ダイジェスト・3分ショートトーク・出典一覧・図解を追加(引用は出典実在のもののみ収録))
— 中澤祐樹

