AI 時代の記事に残せる、たった一つの「書き換えられない日付」

AI 時代の記事に残せる、たった一つの「書き換えられない日付」

記事を公開した翌日に、よく似た記事を見つける。段落の順番が変わり、言い回しが変わり、固有名詞が一つ二つ差し替わっている。けれど骨格は同じで、こちらの記事の後に出ている。

もしそうなったとき、「先に書いたのは自分だ」と、何で示せるでしょうか。

もし翌日に、よく似た記事が並んでいたら

文章を言い換える、構成を変える、別の言語に訳す。これらは以前なら人の時間がかかる作業でした。今は、生成 AI に元の記事を渡して「同じ趣旨で別の記事を書いて」と頼めば、短い時間で出てきます。

AI が書いた文章がどれだけ増えているかは、調査から見えます。

  • Graphite が Common Crawl の記事 5.54 万本を調べた分析(2026 年 5 月)では、2026 年第 1 四半期に公開された記事の 49.9% が「主に AI が書いた」と判定されました。1
  • Ahrefs が 2025 年 4 月に公開された新規ページ 90 万件を調べたところ、74.2% に AI が生成した部分が含まれていました。純粋に AI だけのページは 2.5% です。2
  • 人の監督なしに AI が記事を量産するニュースサイトは、NewsGuard の追跡で 2023 年 5 月の 49 サイトから、2026 年 6 月には 3,749 サイトになっています。3

どれも、「あなたの記事が複製される確率」を示す数字ではありません。AI 判定の検出器も完璧ではなく、Ahrefs 自身がそう書いています。それでも、言い換えが機械的にできることと、AI の文章が検出されにくいことは、研究でも示されています。言い換え用のモデルを通すと、AI 文章の検出精度が 70.3% から 4.6% に下がったという報告があります。4

やられた側にできることは、相手に連絡する、検索エンジンに申し立てる、法的な手段を考える、などに限られます。どの道でも、最初に聞かれることは同じです。「あなたの記事の方が先だと、どうやって示しますか」。

公開日は、自己申告でしかない

ブログの公開日は、自分で決められます。WordPress の公式文書にも、公開日を過去にして記事の日付を遡らせる方法が載っています。5 相手の記事の日付も、同じように自己申告です。つまり、互いに「こちらが先だ」と言い合うだけでは決着しません。

Internet Archive のような第三者の保存は役に立ちますが、公開直後に保存されているとは限りません。

必要なのは、公開したその場で、自分以外の誰かに日付を書いてもらい、その記録を後から誰にも書き換えられない場所に置くことです。

日付だけは、第三者に書いてもらえる

そのために作ったのが DateSealed です。運営はライトセンド株式会社。無料で、登録はいりません。

仕組みの詳しい説明は、記事「先に作ったのは自分だ」と言える準備を、無料で残す方法に書きました。要点は 3 つです。

  • 送るのは記事そのものではなく、記事のハッシュ値(SHA-256)だけです。計算はブラウザの中で行うので、本文は送られず、保存もされません。
  • ハッシュに、時刻署名(RFC 3161)とビットコインの記録の 2 つの日付が付きます。
  • ビットコインに刻まれた後は、DateSealed が無くなっても、台帳だけで日付を確かめられます。刻まれた時刻を、後から過去に作ることはできません。

記録ページからは、.tsr(時刻署名)と .ots(ビットコインの証明)をダウンロードできます。検証のコマンドも載せているので、DateSealed を信用しなくても、自分の環境で確かめられます。

「人間が書いた」ことの証明ではない

ここは、はっきり書いておきます。

DateSealed の記録が示すのは、「このハッシュに対応するデータが、記録の時刻には存在していた」ことだけです。

  • その記事を人間が書いたのか、AI が書いたのかは示しません。
  • 内容が正しいこと、独創的であることも示しません。
  • 誰が記録を取ったかも、記録には含まれません。
  • 記録は法的効力を保証するものではありません。日本で制度上の位置づけがあるのは、総務大臣が認定した時刻認証業務のタイムスタンプです。6 それが必要な場面では、認定事業者をご利用ください。

それでも「先に存在していた」という一点は、話し合いの出発点として意味があります。ただし、それだけで決着がつくとは限りません。DateSealed は、そのための「証拠の一つ」です。

WordPress なら、公開のたびに自動で記録する

記録を取る習慣は、手で続けると途切れます。だから DateSealed には WordPress プラグインを用意しました。

  • 記事を公開・更新するたびに、あなたのサーバーの中で本文のハッシュを計算し、ハッシュだけを DateSealed に送ります。本文は送られません。
  • 内容が変わるとハッシュも変わるので、更新のたびに新しい記録を追加します。最初の公開の記録が上書きされることはなく、改訂の履歴が残ります。
  • 記事の末尾に、記録ページへのバッジを表示できます(表示するかどうかは設定で選べます)。
  • 必要なのは WordPress 5.8 以上と PHP 8.2 以上です。

入手は datesealed.com/api からのダウンロードです。WordPress の管理画面で「プラグイン → 新規追加 → プラグインのアップロード」を開き、zip を選んで有効化し、「設定 → DateSealed」で使い方を選びます。wordpress.org への掲載は審査中で、掲載されたらそちらからも入れられるようになります。

記事は公開後も何度も直すものです。どの版がいつ存在したかの履歴が、自分の手の届かない場所に積み上がっていきます。

記事以外にも

同じ仕組みは、記事以外にも使えます。

  • 写真。 トップ画面でファイルを選ぶか、写真にスタンプの画面で、記録日のバッジを焼き込んだ公開用の複製を作れます。写真そのものは送られません。元の写真は手元に残してください。
  • 公開済みのページの URL。 DateSealed のサーバーがそのページを 1 回取得し、本文のハッシュと生 HTML のハッシュの 2 つを記録します。取得した内容は、ハッシュにしたら捨てます。URL は保存しますが、公開ページには出しません。
  • API。 POST /api/v1/proofs にハッシュを送るだけです。説明は datesealed.com/ja/api にあります。

制限は、1 つの IP アドレスあたり 1 時間に 10 件、1 日に 50 件です(URL は 2 件ぶん)。

記録を取るときの作法

  1. 元のデータを残す。 DateSealed が持っているのはハッシュだけです。元の記事や写真がないと、ハッシュと結びつけられません。
  2. 証明ファイルを保管する。 .tsr と .ots をダウンロードして、元のデータと一緒に置いてください。DateSealed に頼らず検証できるようになります。
  3. 公開と同時に記録する。 記録の時刻は、記録を取った時刻です。公開してから日が空くと、その日数ぶん証拠が弱くなります。プラグインを使う理由は、これです。
  4. 過度に期待しない。 記録は「存在した日付」を示す証拠の一つで、権利や正しさを示すものではありません。本気で争う案件では、文化庁の登録や認定タイムスタンプなど、ほかの手段と組み合わせてください。

まとめ

AI は、文章を複製し言い換える手間を小さくしました。けれど、ビットコインに刻まれた時刻を、あとから過去に作ることはできません。だから日付は、自分以外の誰かに、書き換えられない形で書いてもらう価値があります。

datesealed.com/ja/ を開いて、手元の文章を 1 つ貼ってみてください。ブラウザの中で計算するだけなので、すぐに終わり、何もアップロードされません。公開ページでは Cookie も使わず、英語を既定として 20 言語で使えます。作った経緯は、公開時の記事「「いつ公開したか」を第三者の台帳に残す無料ツール DateSealed を公開しました」に書きました。

筆者について

中澤祐樹(nkzw.jp)


2026.11.03 / written by 中澤祐樹

更新履歴

  • 第1稿投稿 2026年11月3日 9時23分(記事コンテンツアップ)

  1. Graphite「AI Now Writes as Many Online Articles as Humans Do」(2026 年 5 月 15 日)。自社の研究で、3 種類の検出器の平均による推計です。 ↩

  2. Ahrefs「What Percentage of New Content Is AI-Generated?」(2025 年 5 月 19 日)。自社の検出器による推計で、記事内で検出器は完璧でないと断っています。 ↩

  3. NewsGuard「AI Tracking Center」(2023 年 6 月の発足時は 49 サイト、2026 年 6 月 23 日の更新で 3,749 サイト)。同社の基準で数えた件数です。 ↩

  4. Krishna ほか「Paraphrasing evades detectors of AI-generated text」(NeurIPS 2023)。DetectGPT の検出精度が、11B の言い換えモデルを通すと 70.3% から 4.6% に下がったという報告です。 ↩

  5. WordPress.org 公式文書「Write Posts (Classic Editor)」。 ↩

  6. 総務省「タイムスタンプ(時刻認証業務)の認定制度」。 ↩