3行まとめ
- 2012年5月14日、モスクワのエクスポセンターで第3回ロシアIGF(RIGF 2012)が通信展示会と併催で開かれました。テーマは「インターネットとサイバーセキュリティ」に一本化されました。
- INTERPOLとロシア内務省がサイバー犯罪対策を、OECDが国際機関の役割を論じ、ICANNのセキュリティ責任者ジェフ・モスが「なぜ私は誰も信用しないのか」と題して講演。午後はDDoS・金融犯罪・スパム対策の実践講座が並びました。
- プーチン再登板直後のロシアで、ネットの「安全」を軸に国家・企業・技術者の役割分担を問うた回です。セキュリティ論がその後の規制強化(ブラックリスト法など)へ転じる直前の記録として読めます。
こんにちは、中澤です。この記事は RIGF 2012(ロシアIGF・第3回) を、公式発表・議事録・現地報道にあたって整理した詳報です。忙しい方は上の3行まとめと図解だけでも骨子がつかめます。
📍 通信機器展示会「スヴャジ・エクスポコム2012」の会期内併催。参加無料(要登録)
大会の基本情報(公式発表より)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | RIGF 2012(ロシアIGF・第3回) |
| 会期 | 2012-05-14 |
| 会場 | エクスポセンター(クラスナヤ・プレスニャ)(モスクワ) |
| テーマ | インターネットとサイバーセキュリティ |
| 主催 | ロシア国別ドメイン調整センター(Coordination Center for TLD RU/РФ)、後援: ロシア通信・マスメディア省 |
(出典: 文末の出典一覧を参照)
ディスカッション・ダイジェスト(議事録より)
現地の議事録・セッション記録から、議論の核心部分を抜粋・翻訳してお届けします。
1. 情報セキュリティ全体会合 — 世界的挑戦に普遍的解決を
取り上げたセッション: 全体会合「情報セキュリティ: グローバルな挑戦、普遍的な解決」(10:30〜12:30)
「今日のロシアのインターネットは、私たちが心から誇れるものです(公式プレスリリースより、ロシア語からの翻訳)」
— イーゴリ・シチョゴレフ(ロシア通信・マスメディア相) [2][3]
- INTERPOLのモラン氏とロシア内務省特殊技術措置局のモシコフ局長が国際的なサイバー犯罪捜査協力を、OECDのウィコフ科学技術産業局長が国際機関の役割を論じました(公式プログラム) [2][3]
- シチョゴレフ通信相は、二国間の安全保障合意の乱立が国際協力を複雑にしていると指摘しました(公式プレスリリース・ロシア語) [2][3]
- 閉会あいさつで調整センターのコレスニコフ所長は「ロシアは欧州最大のインターネットビジネスを擁する主要ネット大国になった」と総括しました(ロシア語からの翻訳) [2][3]
2. ジェフ・モス講演 — 「なぜ私は誰も信用しないのか」
取り上げたセッション: サイバーセキュリティ・アップデート(13:00〜14:00)
- ハッカー会議DEF CONの創設者でICANNのセキュリティ最高責任者を務めるジェフ・モス氏が、「サイバーセキュリティの技術的側面: なぜ私は誰も信用しないのか」と題した単独講演を行いました(公式プレスリリース・ロシア語) [3][2]
- モス氏は規制よりも技術開発こそがサイバーセキュリティの主戦力だと説き、「信頼を前提にしない」設計思想を紹介しました。のちに業界標準となるゼロトラストの考え方に通じる内容です [3][2]
3. 法整備と多者間の役割 — 「法を作らずして犯罪とは戦えない」
取り上げたセッション: 全体会合セグメント4「マルチステークホルダー・イニシアティブ」ほか
「国際的な基盤を持つ法を作らずして、サイバー犯罪と戦うことはできません(公式プレスリリースより、ロシア語からの翻訳)」
— ナタリヤ・カスペルスカヤ(InfoWatch CEO) [3][2]
- ISOCのロバチェフスキー氏は、接続性・完全性・協働の可能性というインターネット固有の価値を損なわないセキュリティ対策を訴えました(公式プレスリリース・ロシア語) [3][2]
- 上院(連邦院)のガッタロフ議員、下院のシュレーゲル議員ら立法府の若手が登壇し、規制論と業界自主対策の距離を測る場になりました [3][2]
- DDoS対策セグメントには世界サイバーセキュリティセンターのリゴーニ氏とICANNのモス氏が並び、攻撃対処の国際実務を披露しました(公式プログラム) [3][2]
4. 実践マスタークラス — DDoS・金融犯罪・スパムの現場対応
取り上げたセッション: インタラクティブ・マスタークラス4分科(14:00〜17:30)
- 「著作権とインターネットの健全性」「ネット上の金融犯罪」「DDoS攻撃とハッキング」「スパムとウイルス」の4分科で、専門家が実践的な対処法を指南しました。賞品付きのコンテスト形式も取り入れられています(公式プログラム・公式プレスリリース) [2][4]
- 通信展示会スヴャジ・エクスポコム2012との併催・入場無料により、政策関係者だけでなく一般の技術者・事業者にも門戸を開いた回でした [2][4]
3分ショートトーク — よくある疑問に答えます
Q. そもそも何が決まった会議なの?
A. 決定の場ではなく、サイバーセキュリティに絞った討論と実践講座の場です。INTERPOL・OECD・ICANNの専門家とロシアの官民が、犯罪対策の国際協力をどう組み立てるかを一日かけて議論しました。
Q. 一番モメた点は?
A. 安全を法規制で守るのか、技術で守るのか、です。「国際的な法整備なしに犯罪と戦えない」という主張と、ジェフ・モスの「技術開発こそ主戦力」という立場が対照をなしました。
Q. 自分に関係ある?
A. あります。DDoS・フィッシング・スパムはこの直後に世界中で激化し、日本の企業・個人も標的になりました。またこの「セキュリティ優先」の論理は、各国でネット規制を正当化する言葉としても使われていきます。
Russia IGF ってどんな会議?(はじめての方へ)
Russia IGFは、地域・国レベルでインターネットガバナンスを議論するIGFイニシアティブのひとつです。
日本の私たちへの影響
この大会の議論は、数年内に日本のデジタル政策・プラットフォームのルール・AI規制に反映 されていきます。2012年大会で確認された方針は、あなたが毎日使うスマホ・SNS・AIサービスの「次のルール」の土台です。
出典・参考資料
- Russian Internet Governance Forum – 2012(公式サイト) — ロシア国別ドメイン調整センター(Coordination Center for TLD RU/РФ)(参照: 2026-07-11)
- Program of Russian Internet Governance Forum 2012(公式プログラム) — ロシア国別ドメイン調整センター(Coordination Center for TLD RU/РФ)(参照: 2026-07-11)
- Вице-президент ICANN Джефф Мосс на RIGF-2012: «Почему я никому не доверяю?»(開催報告・ロシア語) — ロシア国別ドメイン調整センター(Coordination Center for TLD RU/РФ)(参照: 2026-07-11)
- Третий Российский форум по управлению интернетом(開催告知・ロシア語) — ロシア国別ドメイン調整センター(Coordination Center for TLD RU/РФ)(参照: 2026-07-11)
※ 記事中の [数字] は出典番号を示します。
関連リンク
- IGF公式(リージョナル/ナショナル一覧): https://www.intgovforum.org/en/content/national-and-regional-igf-initiatives
- 日本IGF: https://japanigf.jp/
- 参考:中澤祐樹ブログ https://nkzw.jp/category/igf/
更新履歴
第1稿投稿 2012年6月16日 12:00(記事コンテンツアップ)
第2稿更新 2026年7月17日 12:32(詳報版へ全面改稿:3行まとめ・議事録ダイジェスト・3分ショートトーク・出典一覧・図解を追加(引用は出典実在のもののみ収録))
— 中澤祐樹

