CRO-IGF 2018(クロアチアIGF) 詳報 — 議事録ダイジェストと3行まとめ

Croatia IGF 2018 ザグレブ — サムネイル

3行まとめ

Croatia IGF 2018 ザグレブ — 3行まとめ

  1. 2018年10月25日、ザグレブの海事・運輸・インフラ省庁舎で第4回CRO-IGFが開かれ、約80人が参加しました。議題は「民主主義のサイバー攻撃への耐性」とEU著作権改革の2本です。
  2. 「クロアチアはサイバー脅威に備えができているか」の色カード投票では「準備不足」が優勢。著作権パネルでは「EUは過剰規制か」との問いに会場の多数が「Yes」と答えました。
  3. 選挙インフラ防衛とアップロードフィルター論争という、当時の欧州の2大テーマを小国の視点から縦断した回。緑・黄・赤のカードで全員が意思表示する運営実験も見どころです。

こんにちは、中澤です。この記事は CRO-IGF 2018(クロアチアIGF) を、公式発表・議事録・現地報道にあたって整理した詳報です。忙しい方は上の3行まとめと図解だけでも骨子がつかめます。

大会の基本情報(公式発表より)

Croatia IGF 2018 ザグレブ — 大会 基本情報

項目 内容
正式名称 CRO-IGF 2018(クロアチアIGF)
回次 第4回
会期 2018-10-25
会場 海事・運輸・インフラ省庁舎(ザグレブ)
テーマ 地域の共通課題
参加者 80(約80人(公式最終報告書は「about 80 participants」と記載))
主催 CRO-IGF組織委員会(この年のコーディネーターはクリスティヤン・ジンメル=HrOpen、会場ホストは海事・運輸・インフラ省)

(出典: 文末の出典一覧を参照)

ディスカッション・ダイジェスト(議事録より)

Croatia IGF 2018 ザグレブ — 議論の見取り図

現地の議事録・セッション記録から、議論の核心部分を抜粋・翻訳してお届けします。

1. 選挙インフラとサイバー攻撃 — 「クロアチアは備えができているか」

取り上げたセッション: パネル「民主主義のサイバー攻撃への耐性」(導入報告・司会:トニミル・キシャソンディ=Oru。登壇:FER、国家CERT、DefenseCode、HAKOM、市民団体GONG)

  • 2016年の米大統領選を例に、サイバー攻撃の標的がエネルギーや金融から選挙インフラへ広がった現状が示され、冒頭の色カード投票では「クロアチアは準備不足」との見方が優勢でした [1][2]
  • パネルは「クロアチアは『ローテク国家』で、技術経由で選挙過程に影響を及ぼされにくいのはある種の強みだが、選挙システムの一部は情報システムに依存しており油断はできない」と分析。ウイルスならぬ偽情報への対抗策として、ファクトチェックサービスFaktografや政治広告の透明性を求めるEU行動規範が紹介されました [1][2]
  • 「規制は多いのに執行されない過剰規制国家」という自己批判に対し、会場からは「銀行界へのISO 27000義務付けが12年で堅牢な金融システムを生んだ」と、規制が安全を高めた実例で反論がありました [1][2]

2. EU著作権改革 — 「アップロードフィルター」前夜の激論

取り上げたセッション: パネル「EU著作権改革」(導入報告・司会:ティホミル・カトゥリッチ=ザグレブ大学法学部。登壇:同法学部、Digital DemoCroatia、Vukmir法律事務所、ブロックチェーン・暗号通貨協会)

  • 当時まだEU議会・欧州委員会・閣僚理事会の三者協議中だった著作権指令をめぐり、「ネットを壊すのではなく収益を創作側へ再分配する試みだ」という擁護論と、「プラットフォームは処罰を恐れて予防的削除=検閲に走る」「EUは中国のようになる」という批判が正面から衝突しました [1]
  • 「フェイスブックやグーグルは巨額を投じたフィルターを既に持つが、中小企業には対応体力がない」「AIにミーム(引用に滑稽な改変を加えた二次創作)の判定はできない」と、技術頼みの制度設計への疑義が相次ぎました [1]
  • 討論の前日にイタリアが指令への支持を撤回したという時事も紹介され、「EU空間は北米やアジアに比べ過剰規制か」という色カード投票では多数が「Yes」と回答。ブロックチェーンによる権利管理という代替案も披露されました [1]

3. 省庁舎で開かれた第4回 — 色カードが変えた「聴衆」の役割

取り上げたセッション: 全体運営・参加者フィードバック(公式最終報告書の記録より)

「開かれた包摂的な議論から得られるものは非常に大きい。時にまったく異なる意見や対立する立場も聞かれたが、それこそがこのフォーラムの本質だ。政府が真の国家的立場を形成するには、あらゆるステークホルダーの声を聞く必要がある(公式報告書のフィードバック欄より、英語からの翻訳)」
ズドラヴコ・ユキッチ(HAKOM、クロアチアGAC代表) [1][2]

  • 会場は海事・運輸・インフラ省の庁舎。省のクレショ・アントノヴィッチ氏とこの年のコーディネーターであるHrOpenのジンメル氏が開会し、参加者は約80人と過去最多になりました [1][2]
  • 全参加者に緑(賛成)・黄(中立)・赤(反対)のカードを配り、各パネルで「問い」を投じて全員の意思を可視化する運営を初導入。議題は前年に続き公開の意見募集で選ばれました [1][2]

3分ショートトーク — よくある疑問に答えます

Q. そもそも何が決まった会議なの?

A. 何も決めない非公式フォーラムです。ただ、EUで審議中だった著作権指令と、選挙をサイバー攻撃から守る備えについて、政府・企業・市民団体・法律家が公開で立場を戦わせ、その記録が公式報告書として残りました。

Q. 一番モメた点は?

A. のちに「アップロードフィルター」論争として知られるEU著作権改革です。「創作者への収益再分配」と擁護する側と、「事前検閲でEUが中国のようになる」と批判する側が真っ向から対立。会場投票では「EUは過剰規制」が多数でした。

Q. 自分に関係ある?

A. あります。この著作権指令は翌2019年に成立し、世界のプラットフォーム運営とコンテンツ投稿の実務を変えました。選挙への偽情報とサイバー攻撃対策も、選挙のデジタル化を進めるあらゆる国の課題です。

Croatia IGF ってどんな会議?(はじめての方へ)

Croatia IGF 2018 ザグレブ — Croatia IGFの位置づけ

Croatia IGFは、地域・国レベルでインターネットガバナンスを議論するIGFイニシアティブのひとつです。

日本の私たちへの影響

この大会の議論は、数年内に日本のデジタル政策・プラットフォームのルール・AI規制に反映 されていきます。2018年大会で確認された方針は、あなたが毎日使うスマホ・SNS・AIサービスの「次のルール」の土台です。

出典・参考資料

  1. Croatian IGF 2018 – Final report (PDF) — CRO-IGF組織委員会(CARNET公式サイト掲載)(参照: 2026-07-11)
  2. Forum o upravljanju Internetom(第4回CRO-IGF パネル構成の紹介記事) — Pokreni posao(クロアチアのビジネス情報サイト)(参照: 2026-07-11)
  3. Forum o upravljanju internetom (CRO-IGF)(公式プロジェクトページ・歴代最終報告書一覧) — CARNET(参照: 2026-07-11)

※ 記事中の [数字] は出典番号を示します。


関連リンク

更新履歴

第1稿投稿 2018年6月10日 12:00(記事コンテンツアップ)

第2稿更新 2026年7月17日 12:32(詳報版へ全面改稿:3行まとめ・議事録ダイジェスト・3分ショートトーク・出典一覧・図解を追加(引用は出典実在のもののみ収録))

— 中澤祐樹