3行まとめ
- 2018年4月6日、第9回ロシアIGF(RIGF 2018)がサンクトペテルブルクで開催されました。プログラムはほぼ全編がサイバーセキュリティに充てられ、政府・企業・技術コミュニティ・学界・市民社会が一堂に会しました。
- フェイクニュース、サイバーセキュリティの国際協力、緊急対応体制(CERT)、AIの光と影の4セッションが行われ、「サイバー脅威には国境を越えた共同対処が不可欠」という認識で締めくくられました。
- 「デジタル主権」と国際協調の両立という、その後のロシアのネット政策を先取りする論点が正面から議論された回です。偽情報対策やAIリスクは日本の読者にもそのまま当てはまるテーマです。
こんにちは、中澤です。この記事は RIGF 2018(ロシアIGF・第9回) を、公式発表・議事録・現地報道にあたって整理した詳報です。忙しい方は上の3行まとめと図解だけでも骨子がつかめます。
📍 モスクワ以外での開催は2017年イノポリスに続き2回目。本会合前日の4月5日には登壇者がサンクトペテルブルクの大学で学生向け講義を実施
大会の基本情報(公式発表より)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | RIGF 2018(ロシアIGF・第9回) |
| 回次 | 第9回 |
| 会期 | 2018-04-06 |
| 会場 | サンクトペテルブルク |
| テーマ | 地域の共通課題 |
| 開催形態 | 対面 |
| 表彰 | Virtuti Interneti賞はアレクセイ・プラトノフ氏(インターネット技術センター)に授与 |
| 主催 | ccTLD .RU/.РФ調整センター(Coordination Center for TLD .RU/.РФ) |
(出典: 文末の出典一覧を参照)
ディスカッション・ダイジェスト(議事録より)
現地の議事録・セッション記録から、議論の核心部分を抜粋・翻訳してお届けします。
1. フェイクニュース — 世論操作の道具になるメディアとSNS
取り上げたセッション: セッション「Fake News: Fake'n'Hype」(11:15–12:45、モデレーター: カレン・カザリャン、RAEC)
- マスメディアとソーシャルネットワークが発達するほど、それらが世論操作の道具になっていくという問題意識がセッションの出発点とされた [2]
- ICANN元理事のロベルト・ガエターノ、米イーストウエスト研究所のブルース・マコーネル、モスクワ大学のイワン・ザスールスキーらが登壇し、偽情報の拡散構造を議論した [2]
2. サイバーセキュリティ — 「共に」か「別々に」か
取り上げたセッション: セッション「Cybersecurity: together or apart」(13:45–15:15、モデレーター: レオニード・トドロフ、APTLD)
「世界は一つであり、インターネットも一つです。サイバーセキュリティは国家を超えた課題です」
— ヴォルフガング・クラインヴェヒター(オーフス大学名誉教授)※露語報道からの翻訳 [3][4]
- 「デジタル主権」の追求とサイバー犯罪対策の国際協調をどう両立させるかが議論の軸となり、RIPE NCC、フィンランド、中国などの専門家が意見を交わした [3][4]
- 政府・企業・市民社会・学界が水平・垂直の情報共有の仕組みで協力しなければサイバー脅威には対処できない、という結論が共有された(露語報道より) [3][4]
3. 緊急事態への備え — CERTの現在地
取り上げたセッション: セッション「In case of emergency」(15:30–17:00、モデレーター: ミハイル・アニシモフ、調整センター)
「サイバー脅威は日々巧妙化しており、利用者の安全を確保する仕事はますます難しくなっています」
— レオニード・レヴィン(下院情報政策委員長)※露語報道からの翻訳 [2][3]
- 各国のCERT(コンピュータ緊急対応チーム)の運用者と金融・セキュリティ企業の専門家(カスペルスキー、シスコ、ロシア中銀系機関、ベトナム・チェコの担当者ら)が対応体制の進化を報告した [2][3]
- 攻撃の高度化に対し、インシデント情報を国境を越えて共有する枠組みの重要性が確認された [2][3]
4. AI「スカイネット前夜」 — 人工知能の便益とリスク
取り上げたセッション: セッション「On the eve of Skynet」(17:15–18:45、モデレーター: アレクセイ・ルカツキー、シスコ)
- 映画の「スカイネット」を掲げたセッション名のもと、AIの実応用と将来リスクの両面が議論された [2][4]
- 生成技術やAIによる攻撃自動化への懸念など、後年に主流化する論点が2018年時点で提示された [2][4]
5. 若者の参画 — 前日の学生講義とIP&IT法コンテスト
取り上げたセッション: 4月5日の大学講義、および会期中の表彰式
「若者がインターネットガバナンスに積極的に関わることは、とても重要で責任ある仕事です」
— アンドレイ・ヴォロビヨフ(ccTLD .RU/.РФ調整センター所長)※露語報道からの翻訳 [3][4]
- 登壇者が前日にサンクトペテルブルクの大学で学生講義を行い、若手向けコンテスト「IP&IT Law」の表彰も実施された。若者のガバナンス参画組織の設立構想も示された [3][4]
- インターネット技術センターのアレクセイ・プラトノフ氏に、ルネット発展への貢献をたたえるVirtuti Interneti賞が授与された [3][4]
3分ショートトーク — よくある疑問に答えます
Q. この年の一番のテーマは?
A. サイバーセキュリティ一色でした。フェイクニュース、国際協力、緊急対応、AIリスクと、4つのセッションのすべてが安全とリスクの話につながる構成でした。
Q. 一番モメた点は?
A. 「デジタル主権」を強めたいロシアの立場と、サイバー犯罪対策には国際協調が不可欠だという専門家の立場のせめぎ合いです。「世界は一つ、インターネットも一つ」という独の研究者の言葉が対置されました。
Q. 日本に関係ある?
A. 偽情報対策・CERT間連携・AIリスクは日本でもそのまま課題です。この翌年にロシアは「主権インターネット法」へ進むので、その直前の議論の記録としても読む価値があります。
Russia IGF ってどんな会議?(はじめての方へ)
Russia IGFは、地域・国レベルでインターネットガバナンスを議論するIGFイニシアティブのひとつです。
日本の私たちへの影響
この大会の議論は、数年内に日本のデジタル政策・プラットフォームのルール・AI規制に反映 されていきます。2018年大会で確認された方針は、あなたが毎日使うスマホ・SNS・AIサービスの「次のルール」の土台です。
出典・参考資料
- RIGF 2018 公式サイト — ccTLD .RU/.РФ調整センター (Coordination Center for TLD .RU/.РФ)(参照: 2026-07-11)
- RIGF 2018 Agenda(プログラム・登壇者一覧) — ccTLD .RU/.РФ調整センター(参照: 2026-07-11)
- На RIGF 2018 обсудили кибербезопасность, искусственный интеллект и вовлечение молодежи(RIGF 2018でサイバーセキュリティ・AI・若者参画を議論・露語) — Rambler News(参照: 2026-07-11)
- RIGF 2018: кибербезопасность, искусственный интеллект и молодежная тематика(RIGF 2018報告・露語) — ICT2GO.ru(参照: 2026-07-11)
※ 記事中の [数字] は出典番号を示します。
関連リンク
- IGF公式(リージョナル/ナショナル一覧): https://www.intgovforum.org/en/content/national-and-regional-igf-initiatives
- 日本IGF: https://japanigf.jp/
- 参考:中澤祐樹ブログ https://nkzw.jp/category/igf/
更新履歴
第1稿投稿 2018年6月15日 10:00(記事コンテンツアップ)
第2稿更新 2026年7月17日 12:32(詳報版へ全面改稿:3行まとめ・議事録ダイジェスト・3分ショートトーク・出典一覧・図解を追加(引用は出典実在のもののみ収録))
— 中澤祐樹

