RIGF 2013(ロシアIGF・第4回) 詳報 — 議事録ダイジェストと3行まとめ

Russia IGF 2013 モスクワ — サムネイル

3行まとめ

Russia IGF 2013 モスクワ — 3行まとめ

  1. 2013年4月25日、モスクワのマリオット・グランドホテルで第4回ロシアIGF(RIGF 2013)が開かれました。ニキフォロフ通信相、ICANN理事会のクロッカー議長、欧州委員会のクルスEU副委員長(ビデオ)ら国際色の濃い顔ぶれです。
  2. インターネットの父の一人クロッカー氏が多者間モデルを論じる特別講演を行い、越境ネットと法、子どもの安全、サイバーセキュリティ、電子政府、ドメイン産業経済の6円卓を並走させました。
  3. 前年末のWCIT(国際電気通信世界会議)でネット統治をめぐり世界が二分された直後の回で、ロシア国内から多者間モデル擁護論が語られた点に歴史的な面白さがあります。日本のガバナンス議論にも通じる構図です。

こんにちは、中澤です。この記事は RIGF 2013(ロシアIGF・第4回) を、公式発表・議事録・現地報道にあたって整理した詳報です。忙しい方は上の3行まとめと図解だけでも骨子がつかめます。

大会の基本情報(公式発表より)

Russia IGF 2013 モスクワ — 大会 基本情報

項目 内容
正式名称 RIGF 2013(ロシアIGF・第4回)
会期 2013-04-25
会場 マリオット・グランドホテル(モスクワ)
テーマ 地域の共通課題
表彰 ICANN理事会のスティーブ・クロッカー議長にインターネット功労賞(Virtuti Interneti)を授与
主催 ロシア国別ドメイン調整センター(Coordination Center for TLD RU/РФ)、後援: RAEC・ICANN、ゼネラルスポンサー: インターネット技術センター(TCI)

(出典: 文末の出典一覧を参照)

ディスカッション・ダイジェスト(議事録より)

Russia IGF 2013 モスクワ — 議論の見取り図

現地の議事録・セッション記録から、議論の核心部分を抜粋・翻訳してお届けします。

1. クロッカー特別講演 — 「少ないことは豊かなこと」

取り上げたセッション: 特別報告「When Less is More: The Past and Future of the Multi-Stakeholder Model of Internet Governance」(11:00〜12:00)

「導入以来、.РФは今なお世界のIDN(国際化ドメイン名)をリードする存在です(公式プレスリリースより、英語からの翻訳)」
スティーブ・クロッカー(ICANN理事会議長) [3][2]

「今日私たちが当たり前と思っている多くのものは、スティーブ・クロッカーのような人々の粘り強さと知性と技術力から生まれたのです(公式プレスリリースより、英語からの翻訳)」
アンドレイ・コレスニコフ(調整センター所長) [3][2]

  • RFC制度を生んだ「インターネットの伝説」クロッカー氏に、調整センターがインターネット功労賞を授与しました(公式プレスリリース) [3][2]
  • 講演は、政府間統制ではなく関係者の自発的協調という「軽い統治」がインターネットを成長させてきたと論じ、多者間モデルの将来像を示しました [3][2]

2. WCIT後の世界 — ガバナンスの行方をどう立て直すか

取り上げたセッション: ラウンドテーブル5「インターネットガバナンス体制の展望」(16:30〜18:00)

「ドバイ(WCIT-12)で意見が分かれたこと自体が、すべてのステークホルダーがインターネット発展のために最善を尽くそうとしていることの表れです(公式プレスリリースより、英語からの翻訳・要旨)」
ヴェニ・マルコフスキー(ICANN渉外担当副社長) [2][4]

  • 2012年12月のWCIT-12(ドバイ)では、新しい国際電気通信規則への署名をめぐり各国が二分され、ロシアは署名側でした。その4か月後に、ロシアの会場でWCITの総括が行われた形です [2][4]
  • アーフス大学のクラインヴェヒター教授、仏IFRIのノチェッティ氏、PIRセンターのデミドフ氏らが、政府間機関方式と多者間方式の関係修復を論じました(公式プログラム) [2][4]

3. 国境を越えるネットと法 — 「法律は技術に追いつけない」

取り上げたセッション: ラウンドテーブル1「国境を越えるか、国境がないのか: インターネットの法的側面」(13:00〜14:30)

「法律の制定は非常に遅いペースで進む一方、技術は猛スピードで先へ進んでいきます(公式プレスリリースより、英語からの翻訳)」
リー・ヒバード(欧州評議会) [2][3][4]

  • 「管轄権」問題の第一人者ド・ラ・シャペル氏(Internet & Jurisdiction Project)、ISOC、マイクロソフト、ロシア通信省の担当者が、国境なきネットに国別法をどう適用するかを議論しました(公式プログラム) [2][3][4]
  • 欧州評議会のボワイヤ人権・法務総局長は「安全なくして自由なし」と述べ、児童保護・サイバー犯罪対策・個人データ保護を優先課題に挙げました(公式プレスリリース、英語からの翻訳) [2][3][4]

4. 子どもの安全とオンライン遊び場 — 規制以外の道

取り上げたセッション: ラウンドテーブル2「インターネットに遊び場をつくる」(13:00〜14:30)

  • モスクワ市の子どもの権利オンブズマン、英国子どもネット安全評議会(UKCCIS)のジョン・カー氏、人気アニメ「スメシャリキ」のプロホロフ氏、心理学者・教育者が一堂に会し、遮断一辺倒でない「子ども向けの良質な空間づくり」を議論しました(公式プログラム) [2][4]
  • ロシアでは2012年11月に児童保護を名目とするサイトブラックリスト法が施行されたばかりで、規制と育成のバランスが現実の政策課題でした [2][4]

5. サイバーセキュリティと電子政府 — 「政府に新しい文化を」

取り上げたセッション: ラウンドテーブル3「サイバーセキュリティ: つかみどころのない仮想性」・ラウンドテーブル4「電子政府」(14:30〜16:00)

「政府部門には新しい文化を創り出す必要があります(公式プレスリリースより、英語からの翻訳)」
バルバラ・ウバルディ(OECD電子政府プロジェクトリーダー) [2][4]

  • サイバーセキュリティ円卓には英国防関係シンクタンクのカイル・ジャイルズ氏と中国現代国際関係研究院の李艶氏が並び、ICANNのモス氏、Cisco、カスペルスキーが実務側から加わりました(公式プログラム) [2][4]
  • 電子政府円卓ではエストニアのe-Governanceアカデミー、モルドバ副大臣、OECDが行政デジタル化の先行例を共有し、「安全と利便の両立には官民の協働が不可欠」との認識で一致しました(公式プレスリリース) [2][4]

3分ショートトーク — よくある疑問に答えます

Q. そもそも何が決まった会議なの?

A. 決定はありませんが、「誰がインターネットを統治すべきか」で世界が割れたWCIT会議の直後に、ロシアの官民とICANN・欧州の当事者が同じ部屋で総括した、というのがこの回の値打ちです。

Q. 一番モメた点は?

A. 政府間機関でネットを統治するか、いまの多者間モデルを続けるか、です。ロシア政府はWCITで政府間路線に署名した側でしたが、この会場ではICANN議長が多者間モデルの意義を正面から説きました。

Q. 自分に関係ある?

A. あります。ここで争われた「国家管理か多者間か」の対立軸は、今もサイバー犯罪条約やAIガバナンスの国連交渉で繰り返されており、日本のネットの自由度にも直結する論点です。

Russia IGF ってどんな会議?(はじめての方へ)

Russia IGF 2013 モスクワ — Russia IGFの位置づけ

Russia IGFは、地域・国レベルでインターネットガバナンスを議論するIGFイニシアティブのひとつです。

日本の私たちへの影響

この大会の議論は、数年内に日本のデジタル政策・プラットフォームのルール・AI規制に反映 されていきます。2013年大会で確認された方針は、あなたが毎日使うスマホ・SNS・AIサービスの「次のルール」の土台です。

出典・参考資料

  1. Russian Internet Governance Forum – 2013(公式サイト) — ロシア国別ドメイン調整センター(Coordination Center for TLD RU/РФ)(参照: 2026-07-11)
  2. Program of Russian Internet Governance Forum 2013(公式プログラム) — ロシア国別ドメイン調整センター(Coordination Center for TLD RU/РФ)(参照: 2026-07-11)
  3. Steve Crocker: 'Since its introduction, the .РФ TLD is still a leading IDN in the entire world'(公式プレスリリース・開会報告) — ロシア国別ドメイン調整センター(Coordination Center for TLD RU/РФ)(参照: 2026-07-11)
  4. RIGF-2013 ends in Moscow, Russia(公式プレスリリース・閉会報告) — ロシア国別ドメイン調整センター(Coordination Center for TLD RU/РФ)(参照: 2026-07-11)

※ 記事中の [数字] は出典番号を示します。


関連リンク

更新履歴

第1稿投稿 2013年6月8日 15:00(記事コンテンツアップ)

第2稿更新 2026年7月17日 12:32(詳報版へ全面改稿:3行まとめ・議事録ダイジェスト・3分ショートトーク・出典一覧・図解を追加(引用は出典実在のもののみ収録))

— 中澤祐樹