無料のサジェストで地域SEOを大規模に調べる:エゴサるAPIでGoogle・Bingの「苫小牧・白老・千歳+〇〇」を集めた手順

要点:Ahrefsのような有料ツールを使わなくても、地域の検索需要は「サジェスト」で大まかに、しかも大規模に把握できます。「苫小牧/白老/千歳+〇〇」をエゴサるAPIでGoogleとBingから集めたところ、Googleだけで5,194語が取れました。Googleの1,372語からは「売りたい人は『売却』では検索していない」という発見があり、Bingからは逆に、Googleでは拾えなかった売却・事業用地の語が見つかりました。

無料のサジェストAPI「エゴサる」で地域SEO(アイキャッチ)

地方の不動産会社がWebから問い合わせを取ろうとすると、まず「どんな言葉で検索されているのか」が分かりません。全国向けのキーワードツールでは、苫小牧や白老のような地域の言葉はボリューム不明で切り捨てられがちです。そこで今回は、私たちが運営しているサジェスト取得ツール「エゴサる」に新しく用意したAPIを使い、苫小牧市の不動産会社バナナハウス株式会社の地域記事づくりの下調べを、収集から分類まで一気に通してみました。その手順と、実際に出てきた数字をまとめます。

有料ツールと無料サジェストは「どちらか」ではなく「組み合わせ」

先にお断りしておくと、私はAhrefsも日常的に使っています。検索ボリュームや難易度、上位ページの被リンクを見るには欠かせないツールです。この記事は有料ツールを否定するものではありません。

ただ、地方の不動産会社のように「地域名+〇〇」の細かい言葉を数千語単位で洗い出したい場面では、すべてを有料ツールで調べるとコストがかさみます。地域の細かい語は、ボリュームが小さすぎて有料ツールのデータベースに載っていないこともあります。そこで、まず無料のサジェストで広く網を張り、残った上位の候補だけを有料ツールで深掘りする、という分担にしました。

役割 使うもの 分かること
① 広く拾う エゴサる(無料のサジェスト取得) 実際に入力されている言葉の網羅。地域の細かい語、Google以外の検索エンジンでの言い回し
② 深掘りする Ahrefs などの有料ツール 月間検索ボリューム、難易度、上位ページと被リンク(上位の候補だけに絞って使う)
③ 答え合わせ Google Search Console / Bing Webmaster Tools 公開後に実際に表示・クリックされた検索語

もう一つ、有料ツールには使い方の上限があります。Ahrefsで短時間に大量のレポートを開いていたところ、「不審なアクティビティが検出されました」という表示が出て、レポートへのアクセスが一時的に制限されたことがあります。有料ツールは、数千語を総当たりで調べるような使い方には向いていません。総当たりの部分は無料のサジェストに任せ、Ahrefsは本当に測りたい語に使う。こう分けるほうが、ツールの規約にも予算にも無理がありません。

Ahrefsで大量にレポートを開いた際に表示された利用制限(アカウント名などはマスク済み)
Ahrefsで大量にレポートを開いた際に表示された利用制限(アカウント名などはマスク済み)

サジェストからは検索回数そのものは分かりません。それでも「どんな言葉の組み合わせで探されているか」の地図は無料で描けます。地図を描いてから有料ツールで測る、という順番にするだけで、有料ツールに入れる語の数をかなり絞れます。

いちばん手間がかかるのは③ノイズ除去(使えたのは約4分の1)①種語を作る地名×軸語 75語②APIで取得エゴサる 5,194語③ノイズ除去ルール 1,372語④意図で分類6分類・スコア⑤記事の単位へクラスタ・要件
今回の5つの手順

なぜ「API」にしたのか

エゴサるはもともとブラウザで使うサジェスト調査ツールです。今回APIを用意したのは、別の案件(アフィリエイトベンチマークサイトで約500件分のサジェスト調査)でClaude Codeに相談したことがきっかけでした。Googleのサジェストを自前で直接大量に取得すると、すぐにIPアドレス単位でブロックされます。エゴサる側でキューと取得処理をまとめて持ち、利用者は1つのエンドポイントを呼ぶだけにすれば、大量の語でも日次でも安定して回せる、という結論になりました。

Claude Codeとの相談。APIにすべき理由と最小仕様の提案
Claude Codeとの相談。APIにすべき理由と最小仕様の提案
完成したAPIの仕様を読み込ませたところ。非同期(202→再送)と無料枠の上限を把握して運用を設計しています
完成したAPIの仕様を読み込ませたところ。非同期(202→再送)と無料枠の上限を把握して運用を設計しています
実際に約500件分のサジェスト取得をバックグラウンドで実行している様子
実際に約500件分のサジェスト取得をバックグラウンドで実行している様子

手順1:地名だけでサジェストを取っても不動産の言葉は出てこない

最初に「苫小牧」「白老」「千歳」だけでGoogleサジェストを見ると、出てくるのはフェリー・観光・天気・ホテル・ウポポイばかりです。不動産の言葉は上位に一つも入りません。地名だけを種にすると、集めた語の大半を捨てることになります。

そこで種語は「地名+不動産の軸語」の組み合わせにしました。軸語は売却・土地・中古住宅・平屋・マンション・賃貸・倉庫・店舗など25語で、3市町を掛けて75種語です。

グループ 軸語
売却 不動産 売却 / 家 売却 / 土地 売却 / マンション 売却 / 買取 / 空き家
相場 土地 価格 / 坪単価 / 地価
購入 土地 / 中古住宅 / 中古 一戸建て / 平屋 / マンション / 新築 / 建売
賃貸 賃貸 / アパート / 貸家
事業用 工業用地 / 倉庫 / 店舗 / 収益物件
その他 (軸語なし)/ 不動産

手順2:エゴサるAPIで75種語を一括取得する

エゴサるのAPIは、1つのキーワードに対して「あ〜ん・A〜Z・0〜9」を後ろに付けた展開まで含めてサジェストを返します。1種語あたり数十回分の問い合わせを、API側でまとめて処理してくれるわけです。対応しているのは Google・Bing・Yahoo!・YouTube・Amazon・楽天市場です。今回はGoogleに加えて、Bingも同じ75種語で取得しました。CopilotやEdgeの検索窓からBingを使う人が増えていて、Googleとは違う言い回しが拾えるためです。

エゴサるの画面(Google・「千歳 地価」)。東京の「千歳烏山」「千歳船橋」が混ざっているのが分かります
エゴサるの画面(Google・「千歳 地価」)。東京の「千歳烏山」「千歳船橋」が混ざっているのが分かります
APIのレスポンス。キーワードごとにサジェストの配列がJSONで返ります
APIのレスポンス。キーワードごとにサジェストの配列がJSONで返ります
curl -H "Authorization: Bearer $KEY" \
  "https://gstudio1.com/api/v1/google/suggest?q=苫小牧%20不動産&flat=1"

まだ誰も取得していない言葉は、すぐには返ってきません。202 でキューに入り、retry_after_seconds 秒後に同じリクエストを送り直すと 200 で結果が返ります。取得した結果は7日間キャッシュされます。75種語を投げたところ、サーバーのキューを順に処理して約40分で全部揃いました。スクリプト側は「202ならretry_after後に再送、200なら保存」を繰り返すだけです。仕様は Suggest API v1 のドキュメント にあります。

結果は種語ごとにかなり差がありました。

種語 取得件数
苫小牧 賃貸 268
千歳 マンション 230
苫小牧 土地 155
千歳 地価 42
白老 不動産 16
苫小牧 不動産 売却 2
苫小牧 土地 売却 0

手順3:5,194語から1,372語へ、ノイズを落とす

取れた語をそのまま記事にすることはできません。重複を除いた5,194語の中には、地域の不動産とは関係のない語が大量に混ざっていました。主なノイズは次の4種類です。

  • 「買取」の誤爆:車・本・切手・家電・ポケカの買取。「買取」を含む304語のうち、不動産の買取だったのは2語だけでした。
  • 道外の同名地名:東京の千歳烏山・千歳船橋、大分市千歳など。「千歳」を含む2,184語のうち462語(約2割)がこれでした。
  • 店舗の新規開店:「苫小牧 〇〇 新店舗」のような小売店の話題。物件としての店舗ではありません。
  • 他社名・ポータル名:同業他社や物件ポータルの名前を含む語。自社記事で狙うべきではないので外します。

判定は単純なルールで行いました。①不動産の物件・取引を表す語(土地・住宅・マンション・賃貸・空き家など)を含むこと、②店舗・倉庫は「物件・賃貸・売・空き」と一緒のときだけ残すこと、③道外地名と除外語リストに当たらないこと、の3つです。これで1,372語が残りました。ルールだけでは取りこぼしも出るので、最後は人の目で一覧を確認します。

5,194語のうち、不動産の記事に使えたのは1,372語取得した語(重複除去後)5,194語うち「千歳」の道外地名(千歳烏山など)462語うち「買取」の不動産以外(車・本など)302語採用(不動産の語)1,372語
ノイズ除去の内訳

手順4:検索意図で6つに分けて、記事の単位にまとめる

残った語は、検索している人が次に何をしたいかで6つに分けました。売却・事業用地・相場・購入・賃貸・会社選びです。収益になりやすい売却と事業用地には大きめの係数を掛け、「何個の種語に出てきたか」と「展開内での順位」を掛け合わせて優先度スコアにしています。サジェストからは月間の検索ボリュームが分からないので、そのボリュームの代わりに使う指標です。

市町 売却 事業用地 相場・価格 購入 賃貸 会社選び 計
苫小牧 19 36 44 335 283 4 721
千歳 16 25 72 252 200 5 570
白老 7 2 5 31 35 1 81
千歳は「相場・価格」が苫小牧の1.6倍苫小牧千歳白老19167売却36252事業用地44725相場・価格33525231購入28320035賃貸
市町×検索意図の語数

同じ市町・同じ意図・同じ先頭語の語は「クラスタ」として1記事にまとめます。たとえば「苫小牧 平屋 中古/苫小牧 平屋 新築/苫小牧 平屋 800万円」は1本の記事です。似た記事を何本も作ると、自分の記事どうしで順位を奪い合うことになるためです。

Bingのサジェストは「別の顔」を見せる

同じ「苫小牧 空き家」をBingで調べると、Googleには出てこなかった「ソフトバンク 苫小牧 データセンター」に関する語や、宿泊施設・家具付き賃貸の語が並びました。大型データセンターの建設が進む苫小牧らしい結果で、Googleだけ見ていると気づけない需要です。

エゴサるの画面(Bing・「苫小牧 空き家」)。Googleとは違う語が並びます
エゴサるの画面(Bing・「苫小牧 空き家」)。Googleとは違う語が並びます

同じ75種語で、GoogleとBingの結果を並べるとこうなりました。

項目 Google Bing
取得した語(重複除去後) 5,194 7,588
不動産の語として採用 1,372(約26%) 399(約5%)
表記ゆれ(空白の有無など)をまとめた語数 1,271 346
うち両方に出た語 217 217
うちBingにしか出なかった語 ― 129

Bingは取れる語の数こそ多いものの、「どうして」「zozo」のように元の言葉と関係の薄い候補が大量に混ざります。不動産の語として残ったのは約5%でした。量を集めるならGoogle、Googleで拾えない語を補うならBing、という使い分けになります。

そのBingにしかなかった129語には、見逃せない語が含まれていました。

  • 売却:「苫小牧 土地売却」「白老町土地売却」「苫小牧市マンション売却」。Googleでは「土地 売却」の組み合わせがほぼ0件だったのに、Bingでは出てきます。
  • 事業用:「苫小牧東部産業用地」「千歳市工業用地」「苫小牧市収益物件」「千歳市貸倉庫」など。仲介1件あたりの金額が大きい分野の語が、Bingに比較的多く出ました。

Bingは、Windowsの標準ブラウザEdgeや、Copilotからの検索で使われます。仕事中にパソコンで調べる人が多いことが、事業用の語が多い理由かもしれません(これは推測です)。いずれにしても、売却と事業用地という、仲介会社にとって大事な語をGoogleだけでは取りこぼしていた、というのが今回いちばんの収穫でした。

データから分かったこと

Googleでは、売りたい人は「売却」で検索していません。「苫小牧 土地 売却」は0件、「苫小牧 不動産 売却」は2件でした。その代わりに「苫小牧 空き家」「空き家 無料」「空き家バンク」「不動産 査定」に語が集まっています。仲介会社がいちばん欲しい売却の相談は、空き家の話題から入ってくることになります。売却記事の入口は空き家にするべきです。ただし前の節のとおり、Bingでは「土地売却」「マンション売却」が出ているので、売却を正面から扱う記事も1本は用意しておきます。

千歳は相場への関心が強い。千歳の「相場・価格」の語は72語で、苫小牧の1.6倍ありました。「地価 上昇」「地価 高騰」「土地 値上がり」「ラピダス 千歳 土地」など、半導体工場の進出を受けた語が並んでいます。地価公示や取引価格の公的データで書けるテーマなので、根拠のある記事が作りやすい分野です。

白老は小さく、1本にまとめる。白老の語は3市町の合計の約6%でした。ただし「土地 0円」「温泉付き」「空き家バンク」など、他の2市町にはない特徴的な語があります。地区ごとの記事に分けず、白老町のハブ記事1本に集めるのが妥当です。

地区名がそのまま検索されている。沼ノ端・東開町・ウトナイ・植苗、千歳の向陽台・みどり台・駒里、白老の竹浦などが語に含まれていました。「市の記事」の下に「地区の記事」を置く2層構造の根拠になります。

手順5:記事にする前に決めておいたこと

「地名×〇〇」は、組み合わせれば何百ページでも機械的に作れてしまいます。ですが、地名を入れ替えただけの薄いページを量産すると、Googleからはドアウェイページ(検索エンジン向けの入口ページ)や大量生成コンテンツとして扱われます。そうなると、同じサイトの他の記事まで評価を落としかねません。そこで、記事化の前に次のルールを決めました。

  1. 1記事に、その地域にしかない一次情報を最低1つ入れる(公的な取引価格・地価、自社の取引実績、現地写真など)。
  2. 数字には出典と取得日を付け、自社で推計した相場や架空の物件例は載せない。
  3. AIが書いた文章は下書きにとどめ、宅地建物取引士が確認してから公開する。宅建業法の誇大広告の禁止と、不動産の表示に関する公正競争規約に沿っているかもここで見る。
  4. 公開はまず10本程度のパイロットに限り、Search Consoleと問い合わせ件数を2〜3か月見てから量産するかを決める。

まとめ

サジェスト調査は、言葉を集めるところより、捨てるところと束ねるところに手間がかかります。今回の流れは「軸語で種を作る → APIで一括取得 → ルールでノイズ除去 → 意図で分類 → クラスタを記事の単位にする」の5段階でした。集めた語のうち実際に使えたのは約4分の1です。ただ、その中から「売却の入口は空き家」「千歳は地価」「売却と事業用地はBingで補う」という、記事の方針を変える発見がありました。

有料ツールは「測る」道具、無料のサジェストは「探す」道具です。探すところまでを無料で広く済ませ、測るべき語だけを有料ツールに渡す。この組み合わせが、地域ビジネスのキーワード調査ではいちばん費用対効果が高いと感じています。エゴサるのAPIは現在無料で公開していますので、ぜひ試してみてください。