AIで利尻・礼文の旅行記を圧縮——IGF・ICANN出張で「持ち帰り3か月仕事」を旅中に終える実践演習

利尻富士のシルエットを中央に、左にカメラ、右にAIアイコンを配置し、実働1/8圧縮のバッジを添えたアイキャッチ画像

2026年5月の利尻島・礼文島の旅から戻ってきた直後、私は意図的にひとつの実験を仕掛けました。撮ってきた写真の選定、リネーム、そして記事化という一連の作業を、可能な限りAIに任せきってどこまで圧縮できるかを測る、という実験です。これは単なる旅行記の効率化ではなく、IGF(Internet Governance Forum)やICANNといった国際会議に出席したときに、本来3か月かかるはずの「持ち帰り仕事」を旅の道中、もしくは帰国後1週間程度で終えるための、私自身に課した実践演習でもありました。本稿はそのレポートです。

0.アイキャッチ

0.アイキャッチ:AIで利尻礼文の旅行記を圧縮

1.なぜこの演習をやる必要があったのか

 私はドメイン事業の関係でIGFやICANNといった国際会議に出席する機会があります。会期は4日から7日程度、現地での議論や交流の合間に撮影した写真は数百枚から千枚規模に膨れ上がります。これらを帰国後にまとめようとすると、いつも同じ壁にぶつかります。一枚一枚の写真を見直し、ボツを切り、リネームし、章立てを考え、本文を書く。気づくと3か月が経過し、レポートとしての鮮度を失ったまま塩漬けになる、ということを何度も繰り返してきました。

 この問題を、IGF・ICANN本番の前に小さなフィールドで一度通しでやってみておく。これが今回の利尻・礼文を素材にした演習の目的です。利尻・礼文は2週間で約11,000枚、453GBを撮影したので、規模感としても国際会議の出張と近く、ちょうど良い練習台になりました。

1-1.撮影データ規模の根拠(北海道フォルダ 10,945ファイル・30フォルダ・453GB)

 規模の根拠はWindowsのフォルダプロパティから取りました。新千歳空港着から帰着までの北海道フィールド全体を T:\北海道 配下に集約しており、ファイル数 10,945、フォルダ数 30、合計 453 GB(487,110,030,043 バイト)という規模感です。RAW・JPEG・動画・GPSログがすべて含まれた数字で、IGF・ICANN本番で1週間ほど現地に滞在した場合の素材量とおおむね同等になります。

2.AI活用ワークフロー全体図

2.AI活用ワークフロー全体図

 今回のワークフローを整理すると、撮影→吸い上げ→AI選定→AIリネーム→AI記事化→WordPress投稿、という6段階に分かれます。これまで私が手作業でやっていたのは「選定」「リネーム」「記事化」の中盤3工程で、ここがそのままボトルネックになっていました。逆に言えば、この3工程をAIに通せれば、撮影と投稿の両端は単なる物理作業として処理できます。AIに任せる範囲を「中盤3工程」と明確に区切れた点が、今回の演習の最大の収穫だったと感じています。

3.工程1——写真選定をAIに任せる

 まず、撮影した1日当たりの約500枚のRAW+JPEGをそのままAIに放り込み、似た構図の連写は1枚に絞り、ブレ・露出ミス・水平が大きく傾いているもの・人物の目線が外れているものを候補から落とす、というふるい分けをAIに依頼しました。

 ここで重要だったのは、私が「残す側」ではなく「落とす側」の基準を細かく指示したことでした。残す基準を言語化するとどうしても主観に寄って迷走しますが、落とす基準(ブレ、白飛び、構図ミス、連写の重複)はファクトベースで判定できるため、AIの判定が安定します。落とした写真は無印フォルダに退避し、最終確認だけ私が目視で行う、という二段階の構えにしました。

 結果として、利尻・礼文の500枚は採用候補300枚ほどに絞り込めました。従来なら丸2日かかっていた作業が、半日で終わったのは率直に手応えがありました。

4.工程2——写真リネームをAIに任せる

4.工程2——リネーム規則の構造分解

 次がリネームです。私のブログの命名規則は決まっていて、YYYYMMDD_記事タイトル_連番.キャプション_カメラ元ファイル番号.拡張子 という形式に揃えています。たとえば実際に今回採用した一枚は、次のような名前になっています。

20260501_サフィールホテル稚内、稚内~利尻島(鴛泊)、ボレアース宗谷、ペシ岬展望台、ペンション群林風_233._夕方の利尻島鴛泊港と利尻富士の俯瞰・木立越しの利尻富士_A7C02777.jpg

 この命名規則は、日付プレフィックスでアーカイブ管理ができ、記事タイトルとキャプションでファイル単体から内容が読み取れ、A7C02777 のようなカメラ元ファイル番号でオリジナルRAWとの紐付けが保たれる、という三拍子をそろえる目的で設計しています。問題は、これを300枚分手作業でやると確実に1週間溶けるという点でした。

 AIには「写真の中身を見てキャプションを日本語で生成しつつ、元ファイル名末尾のカメラ番号は必ず保持する」というルールを与え、連番を章の流れに沿ってインクリメントしてもらいました。撮影機材ごとにキャプション末尾の機材プレフィックス(Canon EOS R6 Mark IIは ER6_、ソニーα7CIIは A7C0 から始まる連番)が異なるため、そこの取り違えだけはあらかじめ釘を刺しています。

5.写真選定の判定フロー

5.写真選定の判定フロー

 工程1と2の橋渡しで効いたのが、写真選定の判定フローを明文化したことでした。AIに「いい感じに選んで」と頼んでも結果が安定しないのは経験上わかっていたので、判定を三段に分けてフローチャート化しました。

 第一段は技術的欠陥のふるい分けです。ブレ、露出のミス、白飛び・黒つぶれ、ピントの大外し。ここで落ちるカットはAIが機械的に判定できます。第二段は構図と被写体の整合性で、水平が傾きすぎていないか、主題が画面の端に追いやられていないかを見ます。第三段が連写の集約で、同じ被写体を秒間連写したものから代表1枚を選びます。この三段を順に通したものだけを採用候補としました。

6.工程3——記事化をAIに任せる

 最後が記事化です。命名されたファイル群を読み込ませると、ファイル名のキャプションが既に章立てとして使える状態になっているため、AIは「ファイル名の N.キャプション 部分をH3見出しにして、その下に画像Markdownを差し込み、本文は撮影地点ごとにまとめる」という構造変換を、ほぼ自動でこなしてくれました。

 実際に出来上がった記事の一例が、ペシ岬展望台の章です。### 233.夕方の利尻島鴛泊港と利尻富士の俯瞰・木立越しの利尻富士 のように、ファイル名と完全一致する見出しが画像の真上に並んでおり、章の冒頭にはその日の動きを描写した本文段落が入っています。本文の文体は、私が普段書いている一人称「私」のですます調をベースに、風景描写部分だけは「鹿がたたずんでいる」「シャッターを切った」のような、だ体・常体を混ぜる、という個別ルールも引き継がせました。

 この工程で意外に効いたのは、章の順番をファイル名の連番(例:233、234、235……)でロックできたことです。撮影順=記事の時系列なので、AIに勝手に並び替えさせる余地を残さない方針が、結果として記事の一貫性を担保しました。

7.工程別の時間圧縮(従来 vs 今回)

7.工程別の時間圧縮ビフォーアフター

 従来の手作業ベースだと、私のペースでは写真選定2日、リネーム5日、記事化2週間、図解1週間、合計で実働約30日かかっていました。これが旅行記1本のコストです。それが今回の演習では、写真選定半日、リネーム半日、記事化2日、図解半日、合計で実働3.5日程度に圧縮できました。約8分の1です。「3か月かかっていた」というのは、塩漬け期間や他の仕事に押されて中断していた時間も含めての体感値ですが、実働ベースで8分の1という数字が出れば、十分IGF・ICANN本番に持ち込めると判断しました。

8.IGF・ICANN出張への適用配分図

8.IGF・ICANN出張への適用配分図

 今回の演習で得た数字をそのままIGF・ICANNの出張に当てはめて、配分を作りました。

 往路の機内(10時間前後)は、撮影前のため写真関連の作業は発生しません。ここはセッション資料の予習と、現地で撮るべきカットの構成出しに充てます。現地(4〜7日)では、毎晩ホテルで当日分の写真をAIに流して、選定・リネーム・章立て下書きまでを終わらせます。これを毎日積み上げることで、最終日には記事の骨格が8割完成している状態を目指します。復路の機内(10時間前後)で本文の手直しと図解の指示出しを行い、帰国当日にはWordPressへの投稿まで終わらせる。これが今回の演習から導き出した、現実的な目標値です。

 もしこの配分で回せるなら、IGF・ICANNのレポートが鮮度を保ったまま公開できることになります。私にとってこれは、単なる作業時短ではなく、業界内での発信タイミングの優位性そのものです。

9.演習からの反省と次の改善点

 もちろん、課題も残っています。第一に、AIによるキャプションは時として被写体の固有名詞(地名、建物名、機材名)を取り違えるため、最終工程で私自身が目視で校正する時間は引き続き必要でした。第二に、似た構図の連写は機械的に1枚を残しますが、私の感性で「敢えてこっち」と選びたい一枚を残せないことが何度かありました。第三に、図解(本記事の各SVG)は、現状では私が方向性を文章で指示する必要があり、ここがゼロタッチにはまだなっていません。

 次の演習までに改善したいのは、固有名詞の事前辞書を渡す仕組みと、私の感性側の選択を後から差し込めるレイヤを作ることです。IGF・ICANNの会場名・スピーカー名・組織名はあらかじめ辞書化できるはずなので、ここは仕組み化の余地があります。

10.おわりに

 利尻・礼文の旅行記を演習素材にした、というと一見「ついで仕事」のように見えますが、私にとっては国際会議に持ち込む業務プロセスの本番前テストでした。3か月かかっていた作業が実働3.5日に圧縮できた、という数字は、ドメイン業界の人間が国際会議の現場感を新鮮なうちに発信し続けるための、地味だが大きな前進だと感じています。次回のIGF・ICANN参加時には、この演習で組んだ配分図のとおりに動いてみて、また結果を本ブログに記録するつもりです。

使用機材

  • カメラ:Canon EOS R6 Mark II(メイン)、SONY α7C II(サブ)、SONY Xperia 1 II(スナップ)
  • レンズ:RF24-105mm F4 L IS USM、RF100-400mm F4.5-7.1 L IS USM
  • AI環境:Claude Code(ローカルファイル操作、Markdown生成、SVG生成)、ChatGPT(補助的に文体校正)

更新履歴

第1稿投稿 2026年5月19日 21時00分(記事コンテンツアップ・図解5点掲載)<br />
第2稿更新 2026年5月19日 22時00分(撮影規模の根拠図解1-1を追加・図解4のレイアウト修正)